高級シティホテルからビジネスホテル、カプセルホテル、そしてレジャーホテルと縦横無尽にホテルサービスを斬りまくる! 日本を代表する ホテル評論家 瀧澤信秋 が、いまイケてるレジャーホテルを自ら選び訪問。徹底リサーチし、ゲストに支持されるこれからのレジャーホテルを浮き彫りにしていきます。

第36回

Y-HOTEL(広島市中区)

一般ホテルとレジャーホテルの
融通性とその模索


のっけから自らのことで恐縮であるが、ホテル評論家として活動をはじめたのが201310月でちょうど10年目となる。レジャーホテルについては、翌2014年から評論の範疇となったが、一般ホテルとは異なるリアルなゲスト目線に溢れる業態を目の当たりにした。以来、一般ホテル/レジャーホテルというカテゴライズを意識しつつも、レジャーホテルが一般ホテルを意識する動きや、反面一般ホテルがレジャーの業態やサービスを意識する動向を注視してきた。

特に前者については、コロナ禍前のインバウンド活況下で際だった試みであり、後者はコロナ禍において革新的な動きを見せた。そしていま、コロナ禍を経て一般ホテル/レジャーホテルのボーダレスはクオリティーホテルの域に昇華しており、この連載でも前号では宿泊特化型ホテルを全国展開する新規開業ホテルのレジャーホテル目線をレポートした。レジャーホテル運営に大いに参考になるだろう一般ホテルの紹介というスタンスである。

前置きが長くなったが前号に続き今号もレジャーホテルのエッセンスが溢れる広島の一般ホテルをレボートする。広島随一の繁華街である薬研堀に位置する「Y-HOTEL」、開業は20227月。ハイセンスな隠れ家といった外観かつ空間であるが、実際に出向いてまず感じるレジャーホテル感はそのロケーションだ。繁華街の中心部からは少し奥まった場所にホテルはあるが、周囲は風俗店やそれこそレジャーホテルが集まる場所だ。Y-HOTELのあった場所も以前はストリップ店が営業していたという。

余談であるが、取材の夜、薬研堀にある行きつけのバーで筆者の仕事を知っているマスターが「あの辺りに新しく高級でオシャレがラブホテルできたの知ってますか?」と話を振られた。「いやいや、今日そこを取材してきたのですがラブホテルじゃないですよ」と切り返すと、マスターはしばし驚きを隠せなかったようだ。かようにご当地では大分話題になっているが、確かに周辺ホテルと比較しても料金設定は高めでまさに高級なイメージだ。

オーナーはY-HOTELのほかに岡山や福山などでレジャーホテルを運営しているが、一般ホテルを手がけるのは今回が初めてという。「この場所はある種カオス感があり一般ホテルの運営が難しいことは理解しているが、レジャーホテルの高きクオリティーも徹底追求した一般ホテルを作りたかった」と語る。客室は6タイプ全29部屋あるがいずれもシックかつ大人の雰囲気に溢れている。無論、このエリアのレジャーホテルにはないムードやコンセプトであり、一般ホテルとしての利用に加えて、広島の中心にもこんなレジャーホテルがあったらいいというニーズも掴んでいるようだ。

ホテルのご自慢が「ミラージュスイート」「クラウンスイート」だ。ミラージュスイートは、繁華街を俯瞰するテラスを備え、露天風呂、オーバーヘッドシャワー、水中照明、ブロア機能が付いたストーンバスの内風呂を完備。クラウンスイートは、セルフローリュウが愉しめる本格的なドライサウナを設置、ととのいスペースもしっかり確保されたサウナー垂涎の客室だ。そんな洗練されたホテルの各所に息づくのがオーナーのゲスト目線。ウエイティングスペースにはビールから各種リキュールの並んだセルフBAR、チェックイン機の横にはひと目で客室の設備がわかる掲示もある。

これまでのレジャーホテルに足りなかった目線もふんだんに盛り込んだホテルという。これまでのレジャーホテルに足りなかったものをふんだんにもりこんだレジャーホテルではない。ふんだんに盛り込んだ一般ホテルである。飛び越えたホテルとも表せる。レジャーホテルと一般ホテルのボーダレス化の傾向については、かねがね指摘してきたが、間違いではなかったと確信するホテルであった。


Y-HOTEL 
広島市中区薬研堀9-6 
TEL.082-240-5570

ホテル評論家 瀧澤 信秋
日本で数少ない宿泊者・利用者目線のホテル評論家として、テレビやラジオへの出演、雑誌・新聞連載など、多方面で活躍。著書に「365日365ホテル 上」(マガジンハウス)、「ホテルに騙されるな! プロが教える絶対失敗しない選び方」(光文社新書)など
http://www.takizawa-nobuaki.net/hotel/

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