第8回
HOTEL LaLa TSUKASA
（福岡市博多区）

“見せる”エントランスからのホテル動線物語

他人に会わないことが重んじられるレジャーホテルにおいて、パブリックスペースという概念は相容れない。クローズドなエントランスからクローズドなフロントロビー、クローズドなはめ殺し窓の客室。「レジャーホテル＝クローズドな施設」というイメージが社会に敷衍しているのは当然だ。レジャーホテルの成り立ちを振り返れば当然のことではあるが、今後数十年を見据えれば、現在の若年層が主要顧客となっていくだろう利用者層の変化からも、今後クローズドな施設が大きな支持を得ていくとは言い難い。

レジャーホテル業界も世代交代の波があり、若き感性が表現された施設が増えている。福岡市の「HOTEL LaLa TSUKASA(ホテル ララ ツカサ)」はまさにそんなホテルだ。明るいガラス張りのエントランスを外から見ると、大きな窓にはセンスの良いシャンデリアが望め、まるで高級ブランドのブティックのようだ。陽の射し込むロビーへ進むと熱帯魚の水槽が。つくられた演出も多いレジャーホテルだが、生き物から与えられる癒しには何だかホッとする。そして驚くのが人気雑誌の並ぶマガジンラック。ブックセンターやラウンジで見るような演出。明るいロビーからゲストルームへ至る廊下も期待を裏切らない。日光がロールスクリーンを明るく照らす。日中はもちろん、夜でも開放的な雰囲気であることは容易に推測できる。秀逸な動線を演出する過程にクローズドな発想は皆無だ。

「HOTEL LaLa TSUKASA」で人気の客室は、リビングルームに加え、ベッドルームが2室ある301号室。ヨーロピアンスタイルの客室はもはやリゾートホテルの雰囲気だ。露天ジャグジー、岩盤浴も併設、女子会利用も多いというが、カップルでも自宅にいるような寛ぎ時間になることだろう。そんなHOTEL LaLa TSUKASAは、大規模なリノベーションを経ていないことは経年を感じる外観を見ればわかる。もちろん随所にリニューアルは施されているが、固定概念にとらわれない若き経営者の発想でハイセンスなホテルが誕生、若年層のリピーターを獲得している。

オシャレでハイセンスなホテルを生み出すためには、大がかりなことではなくとも、意外ともいえるアイディアと感性がポイントであることを教えてくれる。この客室へ来ることが目的となるようなホテルを目指すという若き経営者のエッセンスは、既にエントランス・ロビーから注入、客室動線へ至る物語のプロローグなのだ。


HOTEL LaLa TSUKASA（ホテル ララ ツカサ）
福岡市博多区東平尾１丁目16-25
TEL 092-623-6383

ホテル評論家　瀧澤 信秋氏
日本で数少ない宿泊者・利用者目線のホテル評論家として、テレビやラジオへの出演、雑誌・新聞連載など、多方面で活躍。著書に「365日365ホテル 上」（マガジンハウス）、「ホテルに騙されるな！ プロが教える絶対失敗しない選び方」（光文社新書）など
http://www.takizawa-nobuaki.net/hotel/