第26回

勤続22年の“女将”が奮闘する
レジャーホテルのクリスマス

　地域別にレジャーホテル業界をみた場合、九州は躍動感というワードがマッチする印象がある。福岡を中心とした大都市部にある施設への取材経験もあるが、郊外のロードサイドホテルの実情を知るべく、今回は福岡のベッドタウンである宗像市の「ホテル 宗像パル」へ出向いた。同ホテルを運営する「ホテルパルグループ」は、福岡県や大分県を中心に17店舗を展開する。経年のハードという条件下の運営もあるなかで、リニューアル、リファインも積極的に行ない、ホテル宗像パルに関していえば20代～60代まで幅広い客層に支持されている。

　郊外のロードサイドホテルと前述したが、最寄りのJR赤間駅からはタクシーでワンメーターという立地。駅の周辺は北口を中心に飲み屋も多く、ホテルへ流れてくるケースも目立ち休憩と宿泊は４：６という。エントランスには手作り感溢れるタクシー待合のコーナーが用意されている。手作り感といえば、取材に訪れたのは12月上旬ということでクリスマスの飾り付けがかなり印象的だ。各所にディスプレイされている飾りについて聞いてみると、女性支配人を中心としたスタッフの手作りによるものだという。

　一方、そんなクリスマスの“洋風”なイメージとは相反する和をテーマにしたこたつのある客室やチャイニーズがテーマの部屋まで。全客室タイプが異なるのは“一般ホテルでは見られない”ある種レジャーホテルの十八番という向きもあるが、お気に入りの客室ができればリピートするのもゲストの心理だ。クリスマスディスプレイの他にも客室案内や表示なども手作り感に溢れている。このホテルに限らず、経年ハードにおいてある種の冷たさは特有のものだが、この温かさの演出はホテルのイメージを変えるくらいのインパクトがある。

　支配人の西藤さんは勤続22年のベテラン、しかも宗像パル一筋だという。まさに“女将”の風情だ。手作りディスプレイにスタッフとのチームワークも感じるが、スタッフとの関係で大切にしていることを聞くと「プライベートには立ち入らないこと」だという。パートには主婦も多いが、家族をはじめプライベートなことは一切聞かず食事などに行くこともないという。

　筆者のホテル評論カテゴリーは、ラグジュアリーからビジネス、リゾートなどさまざまであるが、レジャーホテルの評論が他のカテゴリーと少し異なるのが、ハードに目が向きがちになるという点だ。一般のホテルではソフトやヒューマンウェアにフォーカスした執筆をすることも多いが、接客がなくスタッフの匿名性も尊ばれるレジャーホテルにおいて、特にヒューマンウェアに着目する機会はほとんどない。今回、ホテル 宗像パルへ取材に訪れたのは、前述の通り地方大都市の郊外にあるホテルの実情という点をみることであったが、出向いて出合ったレジャーホテルのヒューマンウェアであった。


ホテル 宗像パル
福岡県宗像市三郎丸6-1-5
TEL 0940-33-1919

ホテル評論家　瀧澤 信秋氏
日本で数少ない宿泊者・利用者目線のホテル評論家として、テレビやラジオへの出演、雑誌・新聞連載など、多方面で活躍。著書に「365日365ホテル 上」（マガジンハウス）、「ホテルに騙されるな！ プロが教える絶対失敗しない選び方」（光文社新書）など
http://www.takizawa-nobuaki.net/hotel/