第17回

（札幌市 白石区）

北の都で愛されるご当地レジャーホテル

昨今、インバウンド需要の隆盛もあり、一般ホテルのグローバル化が進んでいる。外資系ホテルは言うまでもないが、内資系のバジェットホテルすら国際色豊かだ。一方、レジャーホテルはどうだろうか。インバウンドに対応するホテル、一般ユースの取り込みに工夫するホテルも散見するが、現実にはブームというほどではない。

とはいえレジャーホテルが従来のカップルユースの取り込みとは異なるターゲティングで需要を喚起することは、ある種レジャーホテルの新たなフェーズなのかもしれない。他方、一般ホテルのグローバル化が進むほどに、地元のファンやリピーターを重視するレジャーホテルの姿勢は際立つ。一定の商圏で顧客を掴むスタンスは、レジャーホテルが秀でている。

本連載初となる北海道札幌市のレジャーホテル取材が叶った。札幌市といえば、札幌駅からすすきのへ至る駅前通りを中心とした繁華街で知られるところ。ジャーホテルでいえばすすきのとその周辺は注目エリアであるが、今回は中心部から離れた白石区の「ホテルシエロ」へ向かった。

レジャーホテル街というエリアではないだけに、スタイリッシュな外観が目を引く。車で通過する際にも、看板にはわかりやすいアイコンが大きく記され、一目でサービスが認識できる。派手できらびやかという意味で目を引く看板は多いが、シンプルだからこそのわかりやすさは嬉しい。余裕のあるワンガレージタイプは郊外ホテルならでは。

客室も動線の配慮がなされており使いやすい。何より感心したのがベッドメイクの丁寧さだ。チェックインして客室に入った瞬間、パリッと張ったデュベカバーが目に入るとホテルへの信頼度がグッと増す。デュベスタイルはゲストに人気のいまや定番ベッドメイクであるが、シワが目立ちやすい。ハウスキーパーの技量が露わになる部分でもある。

ホテルシエロで重視するのが「持ち込み品」だという。清掃の際、どのようなものをゲストが持ち込んだのかをハウスキーパーは確認、報告を上げるという。ゲストが持ち込んだもの＝ホテルに足りないものという解釈だ。蟹の殻が残っていたということもあり、さすがに蟹までは準備できないというが、北海道のご当地で愛されるレジャーホテルらしい微笑ましいエピソードだ。

実はこの取材の翌々日に大きな地震があった。筆者は函館へ移動していたが、札幌市も甚大な被害に見舞われたという。これまでさまざまな媒体でインバウンド需要に踊る危うさを指摘してきた。インバウンド需要は、経済、国際紛争、自然災害といった外的要因で一気に失速する要素をはらむ。地元のリピーターに愛されるホテルシエロは対極のホテルだと感じた。

ホテルシエロ
北海道札幌市白石区平和通12丁目北6-50
TEL.011-863-1001

ホテル評論家　瀧澤 信秋氏
日本で数少ない宿泊者・利用者目線のホテル評論家として、テレビやラジオへの出演、雑誌・新聞連載など、多方面で活躍。著書に「365日365ホテル 上」（マガジンハウス）、「ホテルに騙されるな！ プロが教える絶対失敗しない選び方」（光文社新書）など
http://www.takizawa-nobuaki.net/hotel/