高級シティホテルからビジネスホテル、カプセルホテル、そしてレジャーホテルと縦横無尽にホテルサービスを斬りまくる! 日本を代表する ホテル評論家 瀧澤信秋 が、いまイケてるレジャーホテルを自ら選び訪問。徹底リサーチし、ゲストに支持されるこれからのレジャーホテルを浮き彫りにしていきます。
第33回
ウォーターホテルK(札幌市中央区)
時代を感じさせないハードと
ホテル愛溢れるオーナーが
レジャーホテル文化を創る
ホテルは街の文化的成熟度を計る尺度などと時々発信しているが、レジャーホテルの文化的成熟とは何を指しそして何をもたらすのか。このクエスチョンは業界の本質が問われている気がする。
無論、レジャーホテルもひとつの装置産業であり、ビジネスである以上はハードにもソフトにも効率は求められるであろう。一方で一見効率性とは無縁に見えるようなある種の“無駄”はホテルという装置を文化として昇華させる。
北の都・札幌で目下進化著しいレジャーホテルがあると聞き訪ねてみた。全国各地にあるウォーターホテルブランドのひとつである「ウォーターホテルK」だ。市民の憩いの場、中島公園の北側の豊平川に面した立地で、窓からは雄大な川の流れが望める客室も人気だ。2005年の開業と経年感も目立つはずであるが、いぶし銀のような質感の高さが際立つ。メンテナンスもさることながら、往時一見無駄に見えたであろうあらゆる造りがいま存在感を放っている。
2019年に現オーナーによる運営となった。既に2軒のレジャーホテルを運営していたが 札幌の地で自らがウォーターホテルのオーナーとなり、運営を手がけることはレジャーホテルに携わってきた者としての夢だったという。時代を感じさせないホテルだと思っていた――でもまだやってないことはたくさんある、このホテルならより輝きを放つはずだとも思い抱いていた。
運良く自身が運営を手がけるようになった時にも、既にエリアのレジャーホテルでは高単価・高稼動を実現していたが、さらなる改革をすすめた。北国のホテルは足下の暖かさが重要と浴室の床暖房を新設、窓のサッシのゴムパッキンを交換し気密性を高めた。気密性と切っても切れない窓の結露防止の窓下暖房も新設した。パブリックエリアも同様だ。エレベーターの停止階や客室を選ぶタッチパネルの位置など次々と変えていった。
結果、ゲストの動線に加えスタッフの移動も考慮し見事に刷新された。ゲストのサービスを手厚くするためには、スタッフの負担をどう考えるか――従業員満足度の向上と秀逸なハードは実は不可分なのだ。快適性が高まった客室で外せないのがやはりグルメ。ルームサービスメニューのクオティーアップにいま取り組んでいる。これもやはり、セントラルキッチンをはじめとした充実の設備が備わっているからであり、喫食率を現在の倍にするというのが目標という。
東京の郊外には、全国的な知名度を誇る同ブランドのホテルがあり、同じ建築家の手によるものということで参考にできる先達があったというのも幸運だった。同業者間の交流、親密さという点も時にレジャーホテル業界で感じる一コマであるが、クローズドとされてきた業態だけにそれもまた伝統だろうか。「折角の良い箱-これもできる、あれもできる、磨けばもっと良くなる」「レジャーホテルは日本の一文化」とオーナーは熱く語る。
ホテル評論家としてボーダレスな批評を続けてきた者として、この5年間でレジャーホテルを取り巻く環境の変化をひしひしと感じている。北国のレジャーホテルを知り尽くしたオーナーの快適性向上へのゲスト目線は常にレジャーホテル愛に溢れている。レジャーホテルが街の文化的成熟度の指標になるような時代の到来は、ホテル愛あふれるハードとオーナーにかかっているのかもしれない。
ウォーターホテルK
北海道札幌市中央区南14条西1丁目1-2
TEL.011-521-3331
ホテル評論家 瀧澤 信秋氏
日本で数少ない宿泊者・利用者目線のホテル評論家として、テレビやラジオへの出演、雑誌・新聞連載など、多方面で活躍。著書に「365日365ホテル 上」(マガジンハウス)、「ホテルに騙されるな! プロが教える絶対失敗しない選び方」(光文社新書)など
http://www.takizawa-nobuaki.net/hotel/
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