第21回

（群馬県高崎市）

人気雑誌広告にみた“写真映え”の重要性

誰もが知る人気女性誌のページをパラパラ捲っていたら、1ページを使ったレジャーホテルの大きな広告へ目が釘付けになった。全国区のメジャーな人気女性誌にレジャーホテルの広告とは、時代も変わったものだと妙に感心しつつ、衝撃的なビジュアルが忘れられず取材へ出向くことにした。

そのホテルは、群馬県高崎市の「HOTEL Marrakech」。調べてみると、同市内で何軒か運営している会社が手がけるホテルで、そのなかには以前取材で訪れたホテルも含まれていた。そのような前提から取材の段取りもスムーズに進めることができた。グループホテルはそれぞれターゲットに差異があり、HOTEL Marrakechはラグジュアリーな位置づけだ。

出向いてみると、ワンガレージタイプのホテルで、雑誌に掲載されていた衝撃的な写真の客室は最上級の1室。下階にプールとジャグジー、岩盤浴、上階にリビング・ベッドルームという構成で、ワンガレージの特色を活かした構造といえる。その他も客室も内装、調度品、備品なども含め概して質感が高い。良い意味での均一感がゲストに刺さるようで、リニューアル間もない施設であるが、既に人気沸騰ホテルになっている。

取材のなかで、高額な広告料を支払っての広告効果について担当者に聞いてみた。読者からの問合せはちらほらあったものの、ゲストが激増するといったような直接的な効果は感じられないとしつつも「ホテルの存在を知ってもらうことが重要」という。忘れられることの怖さ。これはまさしく、近年活況呈する一般ホテルがことさら意識するところでもある。

この取材風景（プールの写真）を筆者のSNSへ友達限定で投稿したところ通常の数倍の反応があり、なかには高級ホテルの総支配人といった方、ホテル業界で相当な地位の方からも「これは驚愕！」といったコメントがあった。投稿には敢えてレジャーホテルとは書かなかったが、それだけに大変興味深い反応であった。

インスタ映えというワードがすっかり定着したが、レジャーホテルにとってイメージを抱かせるビジュアル創出は、一般ホテル以上に肝要なテーマかもしれない。レジャーホテルは社会的に“影”という社会認識が変わりつつあることを人気雑誌の1枚の写真は教えてくれた。何より筆者を取材に出向かせるきっかけの広告と写真であった。


HOTEL Marrakech
群馬県高崎市上並榎町348-1
TEL.027-361-0363

ホテル評論家　瀧澤 信秋氏
日本で数少ない宿泊者・利用者目線のホテル評論家として、テレビやラジオへの出演、雑誌・新聞連載など、多方面で活躍。著書に「365日365ホテル 上」（マガジンハウス）、「ホテルに騙されるな！ プロが教える絶対失敗しない選び方」（光文社新書）など
http://www.takizawa-nobuaki.net/hotel/