第22回

（東京都豊島区）

大都会で“ひとり”になりたい人々へ個室を提供する新たな発想

おひとりさまというワードが敷衍して久しい。ビジネスとしても注目されるワードらしく、温泉旅館でもおひとり様プランを見かけるし、おひとりさまを対象とした焼肉店まで登場するなどおひとりさまビジネスは花盛りだ。なかでも大都会の真ん中でひとりになれる空間は貴重といえるだろう。

日中、カラオケボックスや個室ビデオ店でリラックスするといったサラリーマンの声を耳にするが、最近、街中のコインパーキングを利用したカーシェアリングも注目だという。カーシェアリングは15分単位など短時間で車が借りられるということで人気だが、走行距離ゼロというリースもあるというのだ。すなわち車を走行させることなく個室代わりに借りる人がいるということだ。

大都会のタイムシェア的個室といえばまさにレジャーホテルの十八番である。レジャーホテルにおいてデイユースが盛んであることは言わずもがな。ショートで2時間、3時間といった単位が基本だろう。ところが、JR大塚駅前で“15分500円”という印象的な看板を見つけ取材へ出向いた。

“スーパーショートタイム”を掲げるのは「ホテルフロンティア」。稼働が鈍る時間帯に実験的に導入したところ人気になったという。気になる利用率であるが全体の5%を占めるといい、繁華街をバックボーンにする駅前好立地のレジャーホテルならではの斬新な発想だろう。

近隣のジムで汗をかいた人が浴槽でくつろいだり、朝まで飲んだサラリーマンが出社前にシャワーを浴びるといったケース、気兼ねなくタバコを吸いたい人にも人気だという。中には女性がデート前にメイク直しに利用するといった例も。すでに“デートの前にレジャーホテル”である。

かように多様な利用がなされているスーパーショートタイムであるが、確かに、マンガ喫茶やカラオケボックスは完全な個室というよりも、人目を気にしつつ利用するプライベートスペースという側面がある。

一方、レジャーホテルであれば完全な個室、それも15分～というショートステイのルームの提供。1時間未満という短時間のサービス提供はカプセルホテルではみられるが個室ではない。ビジネスホテルでは難しいだろう。ゲストの潜在的な要望へのフレキシブルな対応はレジャーホテルが長年歩んできた懐の深さを物語る。


ホテルフロンティア
東京都豊島区北大塚2丁目15-6
TEL.03-3576-5191

ホテル評論家　瀧澤 信秋氏
日本で数少ない宿泊者・利用者目線のホテル評論家として、テレビやラジオへの出演、雑誌・新聞連載など、多方面で活躍。著書に「365日365ホテル 上」（マガジンハウス）、「ホテルに騙されるな！ プロが教える絶対失敗しない選び方」（光文社新書）など
http://www.takizawa-nobuaki.net/hotel/