第7回
HOTEL SARA 錦糸町
（東京都墨田区）

ゲストの多彩な要望を実現する本物志向

サービス業にとって“お客さまの声” は貴重だ。サービス改善のきっかけになることもある。とはいえ利用者の趣味嗜好は様々。もちろん全てにおいてピンポイントで実現できればいいのだが、個別に対応することが難しい場合も多い。レジャーホテルは、スタッフとゲストの直接的な接触が少ない業態にして、プライベート感の高い密室空間を提供しているだけに、ゲストの趣味嗜好が突出しやすいサービス業ともいえる。

そんな利用者の声を追求するホテルがある。「HOTEL SARA 錦糸町」。同ホテル以外にも多様なレジャーホテルを手がける運営会社が、既存ホテルから利用者の声を徹底的に吸い上げ、グループのフラッグシップホテルとして誕生させた。様々な面で先端を行くレジャーホテルといえる。感動的なロビーのプロジェクションマッピングにも驚くが、客室のバラエティ豊かさは驚愕だ。デザイン性の高さは共通しているが、それぞれの客室に想像力をかきたてる、イメージというには足りない“テーマ性”ともいえるコンセプトをもたせていることも特筆すべきポイント。

質感の高さも感動的。たとえば、「社長室」と名付けられた客室は、重厚感あるデスクやチェア、書棚を備えた書斎スペースを有し、「セレブキッチン」という客室には、料理教室も開けそうな本格的なアイランド型キッチンを備える。かようなイメージで利用するゲストはもちろんいるが、実際、書斎で仕事をこなしたり、食材を持ち込み、プライベート感の高い中で手料理を楽しむゲストもいるという。このような本格的な設備を見るに、見た目先行の中途半端な設備では、ゲストの満足度を充足させることはできないであろうことを改めて感じる。

このような設備には質の高いソフトも必要だ。運営会社によると、客室が「常に衛生的であること」は最優先事項。その前提に立ち、「メンテナンスに気遣い」「決して“壊れっぱなし”にしない」ことを重要視しているという。　

突出するイメージやコンセプトの下では、“見た目の本物志向”は容易いかも知れない。ゲストの安心感をも追求する、「本物志向のレジャーホテル」は多様な嗜好のファンを獲得、コアなリピーターに支えられている。


HOTEL SARA 錦糸町
東京都墨田区江東橋3-1-8
http://sara-kinshicyo.jp/

ホテル評論家　瀧澤 信秋氏
日本で数少ない宿泊者・利用者目線のホテル評論家として、テレビやラジオへの出演、雑誌・新聞連載など、多方面で活躍。著書に「365日365ホテル 上」（マガジンハウス）、「ホテルに騙されるな！ プロが教える絶対失敗しない選び方」（光文社新書）など
http://www.takizawa-nobuaki.net/hotel/