連載⑩
SDGs時代に注目される日本特有のセクシュアリティ
あらゆるカップルを歓迎する
レジャーホテルのアイキャッチを
作家・コラムニスト 神田つばき
LGBT利用可を表明する
レジャーホテル
ゲイカップルが入店できるレジャーホテルのエントランスにレインボーフラッグを掲示して、同性愛の人々に「ここなら大丈夫ですよ」と情報を発信するとともに、LGBTに対する一般の人の理解が得られれば……という話を書いたのは昨年の夏、「季刊レジャーホテル133号」でした。
記事を書くにあたってご意見をいただいた社会学博士の石田仁先生から、「埼玉県の蕨市にあるホテルMINTさんにレインボーフラッグが掲示されているそうです」と情報をいただきました。私が記事を書くより前から、エントランスの立て看板にコロナ対策やお部屋情報と並べて「LGBT friendly」のフラッグが貼ってあったようです。
レジャーホテルに入店できるのは男女のカップルだけ、ストレートな性嗜好をもつ人だけ、という認識は過去の偏見になりつつあることを感じます。私自身は異性愛者ですが、人間の性の目的は生殖だけではなく、文化的で多彩なコミュニケーションだと考えるので、LGBTを歓迎するレジャーホテルの取り組みはとても良いことだと思います。
こういった取り組みは首都圏だけではありません。関西を中心に多店舗展開する男塾グループさんでは、レインボーフラッグの幟旗を作製してエントランスに設置しています。
男性同士のカップルは「ホテルに入りたいけれど、男二人だというだけで入店を断られるのではないか」という不安を抱いています。今年2月のこと、東京・上野にあった男性同士が入れるレジャーホテルが18年目で閉館になったとき、多くのリピーターが「残念だ」とツイートしていました。
入館を断られることが自身の性のありようを否定されることになるのは、非常につらく傷つくことなのだと想像できます。前にも書きましたが、男性同士の利用をお断りしているレジャーホテルは、部屋や浴室を汚されて清掃に困難をきたすことを懸念しています。
過去にそういった事例があったためだと思いますが、男塾グループさんはおよそ一年前からLGBT向けに利用OKをアピールしています。実施に当たっては懸念もあったと思いますが、今のところトラブルはないそうです。
レジャーホテルとBLは日本特有
ゲイ男性から「男同士で性を楽しむ場所以前に、親密な会話を楽しむことが難しい」と聞いたことがあります。カフェなどで同性の恋人同士が語り合っていると、露骨な好奇の視線を浴びることがあるのです。
チラチラと何度も見られたリ、個人情報を含む会話に聞き耳を立てられたりすることは、想像以上に苦痛です。同性カップルは人目を気にすることなく会話したりくつろいだりする場所をも求めています。寝室としてだけではなく、リビングとしてもレジャーホテルを求めているということです。
レジャーホテルとボーイズラブは日本で誕生した性の文化です。BL作家の多くが女性だということが、海外の人には信じがたい驚きだという話を聞いたことがあります。ユーザーも女性が中心で、日本では男性同士の恋愛に対する女性の認識は肯定的です。
過去には日本特有の性の文化や風習を野蛮なものとして廃したり、隠したりしてきた事実がありました。遊郭や夜這いなどがそうです。異性の一夫一婦以外の性関係を認めないキリスト教の概念が西洋からもたらされたことと関係があるのかもしれません。
しかし、ジェンダー平等を掲げるSDGsの理念が浸透してきた今、「性のありかたは画一的でなくて良い」という方向に世界の認識が変わってきました。ホームページやエントランスにレインボーフラッグを掲げていただき、社会の新しい風を採り入れたホテル経営を積極的にアピールしてください。
神田つばき プロフィール
離婚と子宮ガンをきっかけに、女性に生まれたことの愉しみを求めて緊縛写真のモデルとライターに。『東京女子エロ画祭』『大人の性教育勉強会』などのイベント主宰も。女性の健康とWLB推進員(NPO法人女性の健康とメノポーズ協会)、中級シニアライフカウンセラー(一般社団法人シニアライフサポート協会)として性の健康のために活動している。Twitter IDは@tsubakist