連載 ⑤
個人専用ミニマルスタジオとしての
レジャーホテル利用価値
プライベートで自然な自分を撮りたいと
願う女性たちのために
作家・コラムニスト 神田つばき
■コンセプチュアルな被写体の出現
いま、『被写体』を名乗る若い女性が急増しているのをご存じでしょうか。
モデル事務所に所属するプロのモデルではない個人モデルのことです。カメラマンとともに内容を企画したり、自らカメラマンを募集するなど、制作面にも関わることが多いです。
ツイッターで「#被写体になります」と検索すると、実にたくさんの被写体さんが活動していることがわかります。
彼女たちの撮影は出版社の発注ではないのでスタジオを借りる予算はなく、レジャーホテルで撮りたい人が多いようです。しかし、撮影プランを設けているホテルは料金設定が高く、1~2名で利用する被写体さんや自撮りさんには使いづらいです。
プロの女性カメラマンから「靴裏にテープを貼らない、お風呂にオイルや塗料、花びらをまく、動かした家具をもとに戻していないなど、掃除に困るようなことをして回転率を下げてしまうマナーの悪い人のせいで、割高プランになってしまったのでは?」と聞いたことがあります。
一部の利用者のマナーがみんなの利用を制限しているとしたら、とても残念なことです。「撮影プランは高いし、少しの撮影で聞くのも面倒だからこっそり撮影しよう」という荒れた気持ちが、利用者のモラルを低下させてしまうような気がします。
むしろ商用ではない(利益があっても投げ銭程度)1~2名の撮影は通常の料金でOKとし、「ミニマム撮影OK」と明示して、撮影後の家具や水回りの現状復帰をお願いするなどしたほうが、お客さんは気をつけて利用してくれるのではないでしょうか。
ツイキャスをレジャーホテルから発信したいAV女優さんもいます。収録スタッフなどいないワンマン収録で、これで収益を上げるのではなくファンサービスのためのものです。「ミニマム撮影OK」や「ツイキャスOK」のマークがあればホテル検索がしやすいですし、利用者の意識は向上すると思います。
また、スマホ用三脚やリングライト、ツイキャス用のマイクなどの貸し出しサービスがあれば、さらに利用が増えるはずです。物品の受け渡し時に注意事項を伝えることができますし、「特別な目的でホテルを利用しているユーザーなのだ」というプライオリティをもってくれるでしょう。
写真のクレジットやキャスのコメントでホテル名を宣伝してもらうこともできるので、ウインウインの結果も得られそうです。
■個人のメモリーメーカーとして
レジャーホテルで撮影プランを、とこだわるのは他にも理由があります。
いま、マタニティフォトを残しておきたい、という若いカップルが増えています。ところが、カメラマンにお腹を見せることには抵抗があってあきらめる人がほとんどです。セルフヌードなどプライベートな写真を撮りたい人は多いのに、その場所がないのです。
無地のバックペーパーの前や生活感あふれる自宅で撮るよりも、最近のレジャーホテルのコンセプチュアルな内装なら、大きくなったお腹や乳房の美しさをさらに演出できます。撮影用の照明器具の貸し出しがあれば、夫婦二人きりで心ゆくまでマタニティショットを撮ることができるでしょう。妊婦さんもリラックスして、自然な表情が残せるはずです。
レジャーホテルで撮影と言うと、コスプレ撮影会のようなにぎやかなイメージがあるかもしれませんが、1人または2人で静かに撮りたい写真の需要も大きいのではないでしょうか。プライバシーの守られた空間で、ヌードを含めたカップルのストーリーブック撮影も可能です。愛し合う人たちのメモリーメーカーという役割はレジャーホテルにしか求められないものでしょう。
神田つばき プロフィール
離婚と子宮ガンをきっかけに、女性に生まれたことの愉しみを求めて緊縛写真のモデルとライターに。『東京女子エロ画祭』『大人の性教育勉強会』などのイベント主宰も。女性の健康とWLB推進員(NPO法人女性の健康とメノポーズ協会)、中級シニアライフカウンセラー(一般社団法人シニアライフサポート協会)として性の健康のために活動している。Twitter IDは@tsubakist