連載 ③
アフターコロナに訪れる夫婦や
同性カップルのクライシス?
セックスレスの解決は
二人が男と女になれる場の提供
作家・コラムニスト 神田つばき
■人間がセックスをする3つの理由
私の仕事のテーマの一つに、「人間がなぜセックスするのかを考える」というものがあります。人が繁殖期以外にも性交するのは、いったい何を求めてするのでしょうか。
人は裸で抱き合うことで精神的にいやされ、パートナーとの結びつきを強く感じます。これは科学的に立証されていて、スウェーデンの生理学者・モベリ博士によれば、肌と肌を接することでオキシトシンというホルモンが分泌されるためだそうです。ストレスからの解放、パートナーを認識する、意欲的になる、など数多くのメリットが確認されています。
そしてもう一つのメリットは、いつもとちがう自分になり非日常が楽しめることです。日常生活では見せない姿を発見したり、より男らしい男、女らしい女の役割を演じたり、言葉を忘れるほど快感に没頭するのはドラマチックな大人の楽しみです。
セックスは肉体ばかりでなく、精神的な幸福をもたらしてくれるのです。
■住環境に束縛される日本人の性事情
ところが、性の勉強会やトークイベントでお話をしますと、セックスレスの悩みがたくさん寄せられます。意欲もあるのに、妻に反応できなくなってしまった――と、パートナーを愛している人ほど深刻に悩んでいるのです。
結婚したらセックスは自宅でするもの、という固定観念が日本人の性交回数を低下させていることをご存じでしょうか? コンドームメーカーの調査によれば、日本人のセックス頻度は年間48回で週1回未満、先進国のなかでも最下位だそうです。家が小さく寝室が狭い日本の家は、「くつろぐ場所」「子どもを育てる場所」でしかなく、ときめきの瞬間は訪れにくいでしょう。
人間は繁殖期が決まっていないため、季節や年齢を問わず、五感による刺激で性的な興奮が起こります。それは適度な緊張感をともない、全身の感覚を鋭敏にします。姿、声、匂い、感触――異性の気配を全身で受け取って人は興奮を高めていくのです。
この適度な緊張感が、日本の家庭事情では起こりにくくなります。交際中は寄り添って寝そべるだけでもときめいたのに、毎日同じダブルベッドで眠るようになると、特別感が失われてしまいます。これは女性も同じです。
そこで私は、パートナーとレジャーホテルでデートすることをお薦めしています。「家があるのに、わざわざホテルに?」と聞き返されますが、日常生活とは別の夢の時間をもつことが大切なんですよ、とお話ししています。
■コロナ後の男女に愛情回復の場を
アフターコロナの社会では、9割以上の企業がリモートワークを継続する見通しです。こうなると、半ば仕事の場となった家庭ではますますセクシーなムードが排除され、セックスレスは深刻化するいっぽうでしょう。
カップルが一つ屋根の下で一緒にいる時間が、毎日5~10時間増えるとする予測もあります。家以外にリフレッシュ&ラブの場所をつくらないと愛も育ちにくく、少子化や離婚率のさらなる悪化が案じられます。
いつも同じ家のなかでしか顔を合わせないのは、舞台装置を変えないまま演劇をするようなものです。照明やインテリアが変わるだけで人間の見え方は変わります。お互いを異性として意識するために、優しい気持ちで過ごすために、レジャーホテルをどんどん活用するべきですね。
家庭内でただの同居人になってしまうか、いつまでも「男と女」であり続けられるか――。「セックスは家でするもの」から「特別な場所で愉しむ大人の時間」へ変わっていくときなのだと思います。既婚カップルや同棲カップルへのレジャーホテルの働きかけ、魅力あるイベント展開などに期待しています。
神田つばき プロフィール
離婚と子宮ガンをきっかけに、女性に生まれたことの愉しみを求めて緊縛写真のモデルとライターに。『東京女子エロ画祭』『大人の性教育勉強会』などのイベント主宰も。女性の健康とWLB推進員(NPO法人女性の健康とメノポーズ協会)、中級シニアライフカウンセラー(一般社団法人シニアライフサポート協会)として性の健康のために活動している。Twitter IDは@tsubakist