連載⑯
初心者とマニアでは
SMルームに求めるものが違う!?
SMファンが感動する!
レジャーホテルならではの体験
作家・コラムニスト 神田つばき
嗜好のプチお試しができる場所
昭和に青春時代を過ごした私、現代のレジャーホテル事情を見て「今の人がうらやましいな」と思うことがあります。それは、普通のレジャーホテルの中にSMルームがあることです。
ちょっとだけSMにあこがれがある、プチ体験してみたい、でも本格的なのは怖くて引いちゃう。お試しして、無理っぽかったら「いや~、緊張しちゃったね!」と冗談にしてやめられる。
初心者以前の人はそれぐらいカジュアルな、ソフトSM体験コーナーのような場を求めています。
レジャーホテルの検索サイトで「SMルーム」を検索してみると、100件近くヒットしました。「SMルーム」で検索登録しているのが100件足らずということで、Googleで「具体的な地名とSMルーム」を入れて検索するともっと出てきます。特に、大阪と福岡はSMルーム有りをうたっているレジャーホテルがたくさんあるようです。
私の青春時代もSM専門のホテルはありました。六本木で遊んでいる子たちから「ロシア大使館の裏にSMホテルがあるんだよ」と聞きましたが、実際に行ったことのある友達はいなかったと思います。
SMに興味のある子は私だけじゃなかったはず。でも、全館まるごとのSMホテルに誘われたら、臆してしまうんですよね。赤と黒基調の物々しい内装には、エントランスや部屋パネルから圧倒されてしまいそうです。
たまたま入ったホテルで、「SMルームしか空いてないけど、どうする?」とか「へ~、SMルームなんてあるんだ。入ってみる?」とか、偶然に入ることができれば、相手の関心度を計ることもできるし、気まずくなることもないでしょう。
自分の性癖を知ることは大切で、それを肯定してくれる相手に出会えればQOLが向上します。レジャーホテルはそのきっかけを提供することができるのです。
立地を活かしたホテルにマニアが感激
一方で、すでにかなり経験があるSMマニアの人がレジャーホテルに期待するものは、また少し異なっているようです。
長く緊縛をやっているマニアの人が、千葉県柏市のレジャーホテルでとても美しい写真が撮れた、とスマホを見せてくれました。
夏木立の中で高く吊ったパートナーさんの姿です。都内にはない、レジャーホテルの広い庭で撮影したものでした。優しい自然の陽光に包まれ、木々に囲まれた緊縛姿は絵のように美しく、新鮮です。
昔はSMグラフ雑誌のグラビアに森や庭園、時には雪山の緊縛写真も掲載されていましたが、現在は見ることがありません。パートナーの女性も、
「緑のそよ風や鳥のさえずりの中での野外緊縛、解放感があり最高でした」
と、当日の感動に思いを馳せます。
「ウグイスの鳴き声も聞こえましたし、野焼きの匂いも漂ってくるんです」
東京23区内ではもう求めるべくもない、五感と郷愁への刺激を楽しみながらの緊縛は最高の贅沢だったようです。
ホテルに入ってきた車がゆっくり見ながら通り過ぎるため、羞恥プレイも楽しめたそう。大人しか入ってこれないゾーニングされた場所で露出ができるのは大きな魅力です。
レジャーホテルが提供してくれるものは行為の興奮だけではないのだ、と認識を新たにしたお話でした。
そう言えば最近、マニア雑誌に写真投稿しているご夫妻から、奥様に首輪をつけて散歩していて通報されかけたと聞きました。ゾーニングに対して、性加害に対して、社会の目が厳しくなっているのです。
性の嗜好を了解した大人だけが安心して楽しめる場はこれからますます求められ、地方や郊外の立地を活かしたレジャーホテルの存在意義が大きくなっていくことでしょう。
神田つばき プロフィール
離婚と子宮ガンをきっかけに、女性に生まれたことの愉しみを求めて緊縛写真のモデルとライターに。『東京女子エロ画祭』『大人の性教育勉強会』などのイベント主宰も。女性の健康とWLB推進員(NPO法人女性の健康とメノポーズ協会)、中級シニアライフカウンセラー(一般社団法人シニアライフサポート協会)として性の健康のために活動している。Twitter IDは@tsubakist