連載⑪
サブスクリプションとミニマリズムが変える住空間
家庭の寝室は安眠のための場、
贅沢な愛の時間はLHで
作家・コラムニスト 神田つばき
レジャーホテルを利用するメリットとは
恋愛や結婚に意欲的な年代の女性がレジャーホテルにどんなメリットを求めているか、知りたいと思いました。
改めてアンケートを取ると、性生活に積極的な人ばかりが回答する傾向があるため、別のテーマのズーム会議で集まったメンバーに声をかけてみました。回答してくれたのは過去半年以内にレジャーホテルを複数回利用したことのある20~30代の独身女性4名です。
「おたがいの家よりも、レジャーホテルで行為を行なったほうがいいと思うのはどんな点ですか?」
この質問に4人が全員一致であげたメリットが3つありました。
- 遠慮なく声が出せる
- お風呂が広い
- 掃除をしなくていい
豪華な内装やアメニティよりも実用的なメリットに答えが集中しました。とくに①と②はシティホテルでは望みにくい特長で、「レジャーホテルの存在理由はこれ!」と全員の意見が一致しました。
セックス中に声を出すことの効用
あえいだり声を出したりして、行為中に深い呼吸をすることは、女性にとって重要な意味をもっています。声を出すことは女性側の快感を高めるのに寄与しているのです。
深く長いため息のような声を発することで、女性の呼吸は腹式呼吸になります。下腹部を大きくふくらませてから一気に強くへこませるような呼吸法です。このとき、女性の子宮や膣、膀胱などを支えている骨盤底筋群(膣トレで鍛えているのはこの筋肉の集まりです)が収縮するため、オーガズムを得やすくなります。
また、エクスタシーに達するためには、行為に意識を集中することが必要です。結婚していても、声漏れを気にしなくていい環境でセックスしたいから、とレジャーホテルを利用している人もいます。
外からの騒音などが聞こえないこともレジャーホテルの良い点です。宅配便が来たり、ベランダ越しに隣家の話し声が聞こえたり、といった邪魔が入らないので、安心して行為に没頭できるのです。
ふだん言わないようなセクシーな言葉を口にすると興奮が高まるのは、男性以上に女性に起こりやすい現象です。
「エッチなことを言うと彼が喜ぶ。でも、ふだん生活している部屋の中で言うと、漫画になってしまう。レジャーホテルならセクシーに盛り上がりやすい」 とは、30代前半の女性の意見でした。
人間は繁殖のためだけにセックスを行なうわけではありません。人間の性行為には男らしさや女らしさを演じ合う演劇のような面があります。
その舞台として、役に没頭できる場として、日常生活の場から離れてレジャーホテルはこれからますます必要とされていくと思います。
男女のドラマの舞台としてのホテル
「お風呂が広い」と「掃除しなくていい」も全員一致でした。
若い人たちの住まい方に関する特色に「ミニマリズム」と「サブスクリプション」があります。昔は少しでも広い家にいろんな機能とたくさんの家財道具を採り入れていくのが豊かな暮らしでした。
現代は逆に、住宅はコンパクトに、荷物は少なく、が美しい暮らし方の一つになりました。家にはシャワーブースがあればいい、入浴はスーパー銭湯や温泉で楽しむ。キッチンやダイニングもコンパクトがいい、パーティーはキッチンスタジオやバーベキューキャンプを借りてやればいい。
そんな「場」のサブスク化が進むなかで、セックスの場所も「所有」から「利用」へと変わっていきます。この傾向は今後ますます強くなり、レジャーホテルの存在意義は大きくなる予感がします。
結婚している人の70%近くが共働き世帯といわれる現在、深い睡眠を確保するために、シングルベッドで別々に寝るカップルが増えているそうです。日常から遮断された空間のダブルベッドでふたりきりで過ごすことは、それだけでちょっと贅沢なレジャータイムになっていくのではないでしょうか。
神田つばき プロフィール
離婚と子宮ガンをきっかけに、女性に生まれたことの愉しみを求めて緊縛写真のモデルとライターに。『東京女子エロ画祭』『大人の性教育勉強会』などのイベント主宰も。女性の健康とWLB推進員(NPO法人女性の健康とメノポーズ協会)、中級シニアライフカウンセラー(一般社団法人シニアライフサポート協会)として性の健康のために活動している。Twitter IDは@tsubakist