連載⑫
私たちはこんなお部屋でヒロインになりたい!
レジャーホテルの内装ウオッチ女子が
急増している理由
作家・コラムニスト 神田つばき
「ラブ目的」以外でも
レジャーホテルを選びたい
夜中にテレビを見ていて、思わず「それな!」と声を上げてしまいました。
深夜の人気番組『タモリ倶楽部』のラブホテル特集で、シンガーソングライターのあいみょんさんが「ラブホテルのサイトを見るのが楽しい」と語っていたのです。「こんなお部屋が!?」「ここ行ってみたい!」とWEB探検するのは本当におもしろいのです。
この番組では「目立つ外装」「ネーミングの面白さ」「内装」の三つの観点からいろいろなホテルを紹介していましたが、女性がいちばん楽しみにしているのが「内装」ではないでしょうか。
年に何回か取材のために出張するので、ホテル選びは楽しみの一つ。でも、最近のシティホテルはどこも内装が似通ってきており、「ラグジュアリーではあるけれどそれだけ感」が否めません。
同業の女性ライターにも、「せっかくだから地方のレジャーホテルに泊まる」という人が増えてきました。「仕事で〇〇市に来ています……」とインスタに写真を上げるのも、レジャーホテルの映え(ばえ)で「いいね」数のケタがちがってきます。
一方、同番組でケンドーコバヤシさんは「ラブホのサイトを見たいと思ったことがない」と言っていました。男性にとっては満室かどうかの情報がわかることが大切で、行く予定のないホテルの設備やアメニティを見て過ごすということはないみたいですね。
女性にとっては、誰とどんなセックスをするかと同じように、「どんな背景・シチュエーションでセックスをするか」も重要です。
もちろんセックスの目的は「愛情を確かめ合うこと」であり、また、「性欲を充たし合うこと」ですが、どんな舞台装置で女と男を演じるか、というディレクションによって満足度が大きく変わってくるのです。
男性と女性で
部屋選びの基準がちがう?
30代の女性3名、男性1名で「レジャーホテルならではのエッチ」についてフリートークしてもらいました。
「季刊レジャーホテル137号」の表紙にもなったテントのあるグランピングルームは、「ラブホの閉塞感が苦手。かと言って窓からビルの谷間を見ても仕方ない。部屋の中で疑似アウトドア感覚を楽しむのが面白そう」と、全員が好印象でした。
実際にこの部屋を利用したことがある女性によれば、「テントの中でいちゃいちゃした。狭いのが新鮮で興奮した。ベッドは使わなかった」とのこと。
同じような疑似アウトドア感覚の部屋として、天井から星空の見える「疑似ナイトプール部屋」や、「バスルームの天井から土砂降りの雨が降り注ぐ中で、着衣のままで激しくセックスしてみたい」というアイデアも出ました。
今の若い人は車を持ちたがらないと言います。「一度でいいからカーセックスがしてみたい」と答えた女性もいました。わざわざ狭い車の中でセックスしたいと思った理由は、「漫画でそんなシーンを見て、興奮しそうだと思ったから」。
女性は居住空間に関するこだわりが強く、ホテルに求めるものは利便性や機能性に限りません。自分がどのような背景に立つかという「映え」をまず考え、次にそこで何が起きるかという「ドラマ」を想像しているのです。
あまり発言の機会がなかった唯一の参加男性に、レジャーホテルはあまり好きではないのかと聞いてみると、「いや、僕もラブホでするのが一番好きです」という答えが返ってきました。
その理由はベッド。
「普通のベッドとちがって、ラブホのベッドってベッドスプリングより、下の枠っていうか台っていうか、あれのほうが大きいんですよね。あそこに片足の先を乗っけられるので、腰が振りやすいんです」
と、実用的な答えが返ってきました。しかし、女性三人は、
「セックスするのを忘れてしまうぐらい、趣向の面白い部屋がいい」
「そんなホテルだったら、次は彼氏と行こう、次はあの部屋にしようってリピしちゃうよね」 と、大いに盛り上がりました。
神田つばき プロフィール
離婚と子宮ガンをきっかけに、女性に生まれたことの愉しみを求めて緊縛写真のモデルとライターに。『東京女子エロ画祭』『大人の性教育勉強会』などのイベント主宰も。女性の健康とWLB推進員(NPO法人女性の健康とメノポーズ協会)、中級シニアライフカウンセラー(一般社団法人シニアライフサポート協会)として性の健康のために活動している。Twitter IDは@tsubakist