ベッドで私はどう見えている？

　素人の写真投稿や素人AVが盛んだったゼロ年代のこと。大学時代のクラスメートが、「私も熟女雑誌に出られるかな？」と聞いてきて、驚いたことがありました。私が成人雑誌とアダルトビデオの仕事をしていることを知り、相談してきたのです。

　また、よく行くカフェバーでバイトしていたシングルマザーから、「AVに出て男優さんとしている私を、彼氏が見たがっている。素人でも出演できますか？」と聞かれたこともありました。

　二人の熱意は本物で、元クラスメートは熟女雑誌の素人参加コーナー（顔バレしないよう目線が入る企画）、シングルマザーは温泉一泊旅行をするアダルトビデオに出演しました。どちらも風俗やAVの経験のない奥さんです。どうなることかと心配でしたが、二人とも、とても楽しそうでした。

　お金に困っているわけではないのは知っていたので、いったい何を求めて出演したのか、聞いてみました。すると二人とも、「感じている自分の姿を一度でいいから見てみたかった」と言ったのです。

　行為のあいだ、自分が美しく見えているかどうかは重要な関心事なのに、女性がそれを目で見て確認する機会はなかなかありません。女性だって、見られる一方ではなく、見たいのではないかと思うのですが……。

　行為のさなかの女性は自意識を完全に脱ぎ捨てて、心のままに動き、日常よりも美しいものです。そんな自分発見の場を求めている女性は、先の二人だけではないはずです。


鏡やTVモニターを利用して興奮！

　一方、男性が性的な意欲をかき立てるには、視覚的に新鮮な驚きが必要です。NHKスペシャル取材班の本、『女と男～最新科学が解き明かす「性」の謎～』によれば、男性は女性を視覚情報で選んでいるそうです。

　愛しているのに妻には勃起できない「妻だけED」の原因は、実は妻に飽きているのではなく、いつもの部屋・いつもの寝具・よく知っている衣類と化粧（または素顔）の相手には、視覚的に興奮しづらいだけなのです。

　二人のあいだに興奮を取り戻そうとして、セクシーな下着やアダルトグッズを買ってきても、日常生活の場である家庭に持ってくると、場違いで白けてしまったり……。近所やほかの家族に聞こえてしまうため、思いきりのけぞって声を上げることもむずかしかったり……。

　そこで　結婚や同棲をしているカップルにとって、あえてレジャーホテルに行くことがセックスレス解消の処方箋になります。

　レジャーホテルが好きで月に3回以上利用する、という30代の女性に聞いてみました。彼女が好きなのは鏡張りの部屋。「鏡に映しながら抱き合っていると、自分じゃないみたいな、映画を見ているような気分になる」のが好き、「自分がエロく、かっこよく見える」のだそうです。

　ぐるりと鏡張りではなくても良いので、ベッドの上の二人が映る位置に鏡が一枚ほしいです。昭和のラブホテルには天井が鏡張りというのもありました。鏡越しのアイコンタクトで興奮が高まるからと、わざわざ洗面所に移動して立ちバックを行なう人もいます。鏡はラブタイムの重要な立役者なのです。

　レジャーホテルに8ミリカメラを持参し、大画面のテレビに接続して、自分たちの行為を見ながらセックスを楽しんでいる40代の夫婦もいます。奥様は、「最初は画面が見れないほど恥ずかしかったのに、今は見ながらするのが好きになってしまった」と言います。夫婦でピンク映画に出演しているような感覚が楽しいそうです。

　ここで大切なのが鏡と照明の関係です。ベッドの上の人に照明で美しい陰影を与えたり、間接照明を配して下から顔を柔らかく照らせば、よりドラマチックなベッドタイムが演出できます。

　最近は洗面コーナーに女優ライト・女優ミラーを設置しているレジャーホテルがあるようですが、これは女性に人気ですね。光量が充分でないとメイクは完璧にできませんし、メイクがうまくできていないとセックスを楽しむ気持ちも半減してしまうのです。

　ラブタイムは日常の中の非日常、二人きりの劇場をドラマチックにライトアップしてくれるお部屋を、女性は心待ちに願っていると思います。