連載 ⑦
セクシュアリティを再発見する場としての
レジャーホテル活性化策
男性草食化時代に
利用者数UPの鍵を握るゲイ男子!?
作家・コラムニスト 神田つばき
■ラブホから歓迎されない人々?
LGBTという呼称とともに、さまざまな性のありよう、認識をもつ人がいることが理解されるようになりつつあります。
これからは男性同士のカップルも「いかがわしい」という偏見の目で見られることなく、異性愛者と同じようにデートできるようになっていくのではないでしょうか。そこで男性同士のレジャーホテル利用について考えてみました。
車で部屋の前まで行けるモーテルタイプならゲイカップルもすんなり入れますが、都市部にはそういったタイプのホテルは少数。ゲイの人たちに話を聞くと、「女同士はともかく男同士で入れるところは限られている。ネット情報と口コミでホテルを探すか有料ハッテンバの個室を利用するしかない」と言います。なぜ彼らはホテルから歓迎されないのでしょうか。
レジャーホテルに勤務する女性に話をきいてみました。彼女が働くホテルは男性同士の利用を認めていません。「過去に男性同士は部屋を著しく汚すから禁止にした、と聞いています」とのこと。
また、男性二人が入室して、後から女性を呼んで犯罪が発生することを警戒している、という指摘もあります。セクシャルワーカーが暴行や殺害に遭う事件は実際に起きていますから、これは見過ごせない話でしょう。
しかし好きな人と二人になりたいと思うゲイカップルが、男性同士だからというだけの理由で犯罪者と同じ目で見られ、警戒されるのは不平等です。多様性とは、あらゆる人が幸せになる機会を平等に持つことでもあります。
■心豊かになれるホテルの必要性
5年ほど前に保健所がレジャーホテルに対し、男性同士の利用を断ることは違法だと行政指導を行なった例がありました。ホテル側が安心して男性カップル客に利用してもらい、ゲイの人たちが自由にホテルを選べるようになるには、どんな取り組みが有効でしょうか。
たとえば、レジャーホテルのエントランスにレインボーフラッグを設置する取り組みはどうでしょうか。デート場所を探すゲイカップルにとっては心が明るくなるアイキャッチですし、堂々とゲイカップルとしてフロントを通過してもらったほうが、後から女性が呼ばれて入るというトラブルの心配も少なくなりそうです。
『青少年の性行動はどう変わってきたか 全国調査にみる40年間』という書籍によれば、若い人の性の意欲は下がってきており、とくに男性の初体験年齢は高くなりつつあります。そんななか、「ゲイの若者には性の探求心が強い人も依然いるのです」と、男性同性愛の戦後史研究者で社会学博士の石田仁先生は指摘します。
また、ゲイ男性は「流行りものが好きで、ガジェットに飛びつき、キャッチアップが早い」という特性があるそうです。レインボーフラッグのレジャーホテルはゲイカップルに歓迎され、利用客の増加につながることでしょう。
石田先生によれば「ハッテンバの個室は狭く、マットレスも薄くてうらぶれていて淋しくなってしまう。大切な出会いには普通のラブホを使いたい。コスパの高いお店がレインボーマークを貼って入店を歓迎してくれたらだいぶ違う」。ゲイカップルは精神的に充足できるデート場所を切実に必要としているのです。
過去には「あのホテルはゲイを入れている」と言われれば後ろ暗いイメージがあったかも知れません。しかし、LGBTをはじめとしたさまざまなセクシュアリティの尊厳、そして多様性を表わすシンボルであるレインボーフラッグを掲げれば、一般の人が向ける目も変わります。
「多様なジェンダーに対応する時代を先取したホテル」として高く評価され、レジャーホテルのイメージアップにつながっていくのではないでしょうか。
神田つばき プロフィール
離婚と子宮ガンをきっかけに、女性に生まれたことの愉しみを求めて緊縛写真のモデルとライターに。『東京女子エロ画祭』『大人の性教育勉強会』などのイベント主宰も。女性の健康とWLB推進員(NPO法人女性の健康とメノポーズ協会)、中級シニアライフカウンセラー(一般社団法人シニアライフサポート協会)として性の健康のために活動している。Twitter IDは@tsubakist