連載 ⑧
複雑で繊細な彼女の快感を究めたい二人のために
レジャーホテル&プレジャーグッズで
SEXをブラッシュアップ
作家・コラムニスト 神田つばき
■女性の体は目ざめを待つ休火山
21世紀に入ってからの日本で最も進化した性の分野はアダルトグッズです。なかでも女性向けプレジャーグッズの進化はすばらしいです。
きっかけは2000年代初頭、医療用素材の使用でした。女性の粘膜や皮膚への感触が重要視されるようになり、それからは遠隔リモコンバイブ、電マ、Gスポット専用バイブ、膣トレグッズ、クリトリス吸引器――女性器を「さまざまな位置・強さ・感触で刺激する」商品の開発は止まることを知りません。
なぜ女性はこんなにも多種類のプレジャーグッズを必要とするのでしょうか。女性は性的に興奮していても必ずイケるとは限りません。全身の緊張が高まりきった頂点から一気に弛緩するエクスタシーを得るには練習が必要だと思います。
女性の性器回り――子宮も膀胱も卵巣も、骨盤底筋という大きなハンモック状の筋肉の中に包まれています。そのため膣には人それぞれ傾斜角度があり、どこに刺激が当たるかによって思わぬ快感が起こります。
男性側の上手・下手やペニスの大小以前に、ペニスの角度が自分に合う人ということがあり、体位を変えるとジャストミートが見つかることもあります。
また、快感を知った部位は次もまた気持ちよくなりやすく、だんだん早く確実にイケるようになります。
女性が感じやすく確実にイケる体になるためには「さまざまな位置・強さ・感触の刺激」が何より有効なのです。男の人がそれを理解して「グッズを試してみよう」と言ってくれることを多くの女性は期待しています。
彼女の快感を二人で研究する場所
しかし、ここまで女性用ラブグッズが多様化すると、自分の彼女がどれを欲しがっているかなんて男性には見当がつきません。たとえばクリトリス吸引器は女性の好みがはっきり分かれるグッズで、大好きな人と絶対無理と言う人がいます。
ところがカップルで買いに行けるお店は減りつつあり、女性の反応を聞きながらグッズを選べる場所は多くありません。
東京・渋谷にバイブバーというお店があります。店内に350本ものバイブが展示されている、超現代的秘宝館のような女性専用のバーです。女性と同伴なら男性も入店できるので、カップルでお酒を楽しみつつバイブを手に取って、あれこれ相談できる場になっています(店内では販売はしておらず、その場でスマホで注文するか、外に出てからショップで買います)。
こんなアダルトグッズのショールームのようなスペースが、日本全国にほしいです。レジャーホテルのなかにあったら最高ではないでしょうか。
北欧、ドイツや日本製のプレジャーグッズはデザインが美しいので、エントランスや廊下のインテリアにもなります。待合スペースに新製品や変わったグッズの展示があったら、満室の待ち時間も楽しく会話できそうです。
4号営業ホテルであれば、早速使ってみたいというカップルにホテル内で販売することができます。また、部屋の料金にお土産としてグッズがついてくる「プレジャープラン」を設定してはどうでしょう。
北欧製のスタイリッシュな高機能バイブが付いてくる休憩プランや、「グッズ初心者コース」や「クリトリスマスターコース」など、目的別にカゴ盛りのグッズが用意された宿泊プランがあったら喜ばれます。男性を責めたい女性向けに「前立腺開発コース」「初めてのアナルトライアルプラン」などもぜひ設定してほしいです。
現代のレジャーホテルはただ「やりに行く」場所ではなく、非日常のくつろぎやエキサイトを楽しむテーマパークです。パートナーの性感をブラッシュアップできる、レジャーホテルならではの新しい演出に期待しています。
神田つばき プロフィール
離婚と子宮ガンをきっかけに、女性に生まれたことの愉しみを求めて緊縛写真のモデルとライターに。『東京女子エロ画祭』『大人の性教育勉強会』などのイベント主宰も。女性の健康とWLB推進員(NPO法人女性の健康とメノポーズ協会)、中級シニアライフカウンセラー(一般社団法人シニアライフサポート協会)として性の健康のために活動している。Twitter IDは@tsubakist