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――メルディア・アセットマネジメント

ファンダブルなアパートを発明
ESG投資にほどよくフィット

  • 賃貸住宅
  • 木造建築

国産木材の使用に意欲

 メルディアグループの不動産AM会社、メルディア・アセットマネジメント(MAM)は、国内初の新築木造アパートファンドを組成する。木造建築物を投資対象とした金融商品として、機関投資家のESG投資ニーズに応える狙いだ。

 MAMは、戸建分譲事業の三栄建築設計とアパート開発事業のMAIが50%ずつ出資のもと、2020年9月に設立。21年6月までにファンド事業に必要なライセンス取得を完了し、翌7月に業務を開始した。

 木造建築物に着目する背景について、代表取締役社長の鈴木基広氏は「ESGの考え方を取り入れた不動産投資には、木造建築物こそが最適解だからだ」と強調する。

ファンドへの組み入れ予定物件

出所:メルディア・アセットマネジメント
 まず木造はRC造などと比べて約4倍の炭素貯蔵効果があり、材料製造時もRC造と比べて約4倍のCO2 抑制効果がある(136uの住宅の場合)。また木材を使用することで森林のCO2 吸収力を維持・向上できる側面もあるという。

 「樹木のCO2吸収量は樹齢40〜50年をピークに減少するため、計画的な伐採と植林が必要。グループが木造アパートの開発機能と出口機能を確保することにより、木材の安定需要家としての役割を果たしていく」(鈴木氏)。

 加えて国産材の使用も強く意識する。輸入材を国内へ運ぶときに多量の化石燃料が使用されることから、国産材の使用を増やして輸送時のCO2 排出量削減につなげる。三栄建築設計の試算では、アパート1棟の開発で国産材を使用した場合のウッドマイレージCO2(木材の輸送過程におけるCO2 排出量)は、輸入材を使用した場合の6割に抑えられる[図表]。

[図表]環境面における国産材の優位性

物件名称 足立区舎人4丁目AP
算出対象範囲 構造材、羽柄材
算出地点所在地 最終消費地
【外国産材仕様】 【国産材仕様】
木材使用料 29,9686m³ 29,9686m³
ウッドマイルズ 17,712km 695km
ウッドマイレージ 530,791m³・km 20,820m³・km
ウッドマイレージCO2 2,815kg-CO2 1,741kg-CO2
※ウッドマイルズ:使用された木材が森林から算出拠点まで運ばれた距離(1㎥あたりの平均距離)
※ウッドマイレージ:木材使用量にウッドマイルズを掛け合わせたもの
出所:一般社団法人ウッドマイルズフォーラム

耐用年数やER・鑑定コスト問題も解決

 上記の要素から、木造アパートがESG投資にマッチするアセットであることは分かった。しかしながら、機関投資家向けの不動産ファンドに木造アパートを組み入れるにはハードルが存在する。

 ひとつは耐用年数の問題だ。住宅用途の木造建築物は法定耐用年数が22年で、おのずと償却率も高い。このため木造アパートは、会計上の利益を抑えることによる節税効果を狙う個人投資家向けのアセットとして位置づけられてきた。ところが償却後利回りを重視する機関投資家にとって、この高い償却率はネックとなる。

 そこでMAMのファンドが投資対象とする木造アパートに関しては、外部ER業者の協力のもと経済的・物理的耐用年数50年以上の評価を受けるようにし、それをもとに収支計画を立てていく

 もうひとつのハードルは、ERや不動産鑑定評価書の作成にかかるコストである。1棟あたりの価格が平均1億円程度の木造アパートの場合、デューデリの面で割に合わないことが考えられる。

 そこでMAMは、3社ずつに発注しているERと不動産鑑定評価書の作成コストを、各社と交渉のうえ、1件あたりのコストを下げる分、継続的に多くの件数を依頼するとのことだ。

年内にも1号ファンド組成

 MAMは1号ファンドを2021年12月をめどに組成する。ファンド規模は29棟・約30億円で、事業法人などから10億円程度の匿名組合出資を受ける。想定運用期間は6年、期中分配金利回りは5.5%と想定。

 「2号ファンドからは機関投資家の出資を受ける見込み。商品説明のミーティングには地域金融機関や大手生命保険会社が参加し、関心の高さを感じた。将来的には年金基金の取り込みも図りたい」と鈴木氏。

 投資対象となる木造アパートの要件は、MAIが開発して賃貸開始後2年以内の、一都三県にある単身者向け物件。1棟あたりの最低価格は8,000 万円、満室想定の表面利回りは7.0%以上におく。「バストイレ別で屋外バルコニーなどを用意した、戸建住宅と遜色ない居住性」(鈴木氏)を強みに、若い女性からの人気を集めているという。

ファンドへの組み入れ予定物件

出所:メルディア・アセットマネジメント
 なお賃料はマンションと比べてグロスで2〜3万円程度低い水準におく。「安定稼働を重視し、無理のない賃料設定を心がける。ESGの観点でも、都市部へのアフォーダブルな住宅供給という意義がある」(ファンド管理部長 市川裕一氏)。

 ファンドの出口としては、資産規模200億円程度の私募REIT立ち上げを念頭におく。私募REITの標準的な利回り水準である4%を1〜2%上回る商品設計を構想しているそうだ。そのほか、アパート以外に木造ビルなどへの投資にも挑戦し、“木造特化型AM会社” としての地位を築く考えも持つ。

 「木造建築物や木造アパートに対するネガティブなイメージを、グループの高品質な物件とファンドの良質なリターンで覆していきたい」と鈴木・市川両氏は意気込みを語っている。
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