物流施設の開発ラッシュは留まるところを知らない。今年に入っても新規参入が後をたたない。ECの配送拠点をはじめ、コロナによる輸出入制限に伴う在庫の保管場所などを確保する企業の需要が旺盛なためだ。個人的には少なくとも4〜5年の間、こうした需要を背景に市場は安泰だ。アマゾンは日本で20か所の配送センター(フルフィルメントセンター)を開設したが、日本の経済規模を考えると50か所程度まで増やせるポテンシャルはある(米国では110か所程度)。
とはいえ、施設間競争は今後激化することは避けられない。テナント企業から「使いにくい」、「雇用を確保しにくい」とレッテルを貼られないよう、デベロッパー各社はあらゆる知恵を絞っている。人口が密集していない都市部周縁の施設では、シャワー付き更衣室やラウンジ、売店、食堂、託児所など共用部を充実させ、テナント企業の雇用確保を支援する試みが以前から活発化していた。では人口が密集している都市部の施設はどうだろうか。最近になって、共用部の充実からさらに一歩踏み込み、物流施設の周辺に商業施設やレジャー施設などを整備するまちづくり的な複合開発を行うデベロッパーが現れてきた。もともと施設間競争の激しい都市部にあって、テナント企業やワーカーからの人気獲得の点で、ライバルとの差を一気に広げたい意向がある。