玄海キャピタルが組成した地域特化型ファンドは、熊本県内の地域密着型商業施設「サンロードシティ熊本」を組入資産に、地元企業が出資、地銀がノンリコースローンを提供、地元不動産管理会社がマスターPMを担う、“オール熊本・九州 ”でパッケージされた地産地消ファンドの理想形といえる。
単に中央のプレーヤーがリスク分散の一環で地方へ投資するための商品ではない、地域資本や地場企業が地元の不動産投資に関与し、ヒト・モノ・カネ、ノウハウが地域で循環する地産地消ファンドの仕組みは、全国各地でも構想されてはいる。しかし実際に組成運用にこぎ着けたプレーヤーはまだ少ない。地方都市にも優良な収益資産、有力な地元資本・地域金融機関があり、ファンド組成の要件は整っているにもかかわらず、動きが鈍いのはなぜだろうか。
サンロードシティ熊本の私募ファンド責任者で玄海キャピタル九州事業部長の原昌康氏は、地域特化のファンドを組成には「時間がかかる」と話す。一般的に不動産ファンド組成は 条件が揃えば3〜4か月で組成可能だが、サンロードシティ熊本のプロジェクトにはじつに1年以上を費やしている。「何にかかったのかというと、大きくは地元投資家と地銀への説明です」(原氏)。ファンドそのものの仕組みや投資家レンダーのリスクリターンの考え方、リスクが顕在化した場合の対応など、多岐にわたる質問に相当な時間をかけたという。
ステークホルダーへの説明では、投資収益を極大化する仕組みや会計・税務上の特徴などテクニカルな側面にとどまらず、地域活性化へ取り組むうえでのファンドの “意義 ”を理解してもらえる説明力がポイントとなってくるようだ。