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自社ビルのZEB化実績をもとに
環境性能と快適性向上策を提案

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ESG対応が不動産投資の新たな常識となりつつあるなか、エネルギー消費量を0%以下にまで減らすZEB(net Zero Energy Building )への注目が高まっている。だがその取り組みは遅々として進んでいないのが現状。そんななか、他社に先駆けてZEB推進に向け舵を切っているのが、ビル設備施工・管理大手のダイダンだ。

ダイダン北陸支店

出所:ダイダン

投資に見合うリターンはあるか
ZEBの普及はいまだ歩み遅く

 ダイダンは、ビル設備の施工・管理などを手がける東証プライム上場企業。同社は不動産・建設業界向けに、ビルの環境性能向上によるZEB化と、ワーカーの快適性向上の提案に力を入れる考えを示している。
 投資家や不動産・建設業界の間でESGやSDGsの重要性が高まるにつれ、必然的にZEBに対する関心も増えてきているようだ。しかしながら、コストに見合ったリターンを得られるか不透明という理由から、実際のZEB化には二の足を踏む投資家・オーナーが多い。

[図表]年間の新築着工件数に占めるZEBの現況

出所:経済産業省 ZEB・ZEH-M委員会
 このことは[図表]1で如実にあらわれている。年間の新築着工件数のうち、ZEBまたはZEBに準ずる建物の割合は2020年度でわずか0.42%にすぎない。経済産業省 資源エネルギー庁では、18年時点において30年までに新築建築物の平均でZEBを実現する目標を掲げていたが、その達成は絶望的といえよう。
 また環境性能向上もさることながら、ESGの「S」に該当するワーカーの快適性向上にも目が向けられるようになってきている。コロナ禍を契機に普及したテレワークによって、オフィス自体の存在意義が見直されるなか、ワーカーに出社してもらうための工夫が求められているのだ。
「これまで不動産は、主として周辺環境を含む立地、設備機器、管理状況を基に評価されてきたが、そこに環境性能や快適性などが加味されるようになっている。テナント企業のなかにも、快適性やウェルネスに優れたビルを選別して入居する動きがみられるようになっている。この流れは今後さらに加速するだろう」(イノベーション本部 開発技術企画部次長 兼 技術研究所副所長の熊尾隆丈氏)。

4拠点目のZEB「北陸支店」
リモビスで運用面でも万全の体制

ダイダン北陸支店

出所:ダイダン
こうしたなかダイダンは、自社の拠点ビルを率先してZEB化、リアルな運用のなかで実効性の高いソリューション提案に向けた検証データの収集に努めている。 過去の取り組みをみていくと、2016年に九州支社(エネフィス九州)を改修し、設計・運用の両面でZEB Ready(エネルギー削減量50%以上)を実現。19年には四国支店(エネフィス四国)を新築、設計・運用の両面で『ZEB』(同100%)を達成している。さらに21年に新築した北海道支店(エネフィス北海道)は、エネルギー消費量の大きい寒冷地ながら、壁面の太陽光パネル設置などが功を奏し設計基準で『ZEB』を達成した。
 そして2022年5月、石川県金沢市で北陸支店を竣工。環境面ではCLT や集成材による木材の活用、太陽光発電設備や蓄電池システムの導入を進め、設計基準でエネルギーを64%削減しZEB Readyを達成した。
 ワーカーの快適性向上に関しては、ABW(Activity Based Working )の考え方に基づきフリーアドレス(管理職と事務職以外)を採用したほか、バイオフィリックデザイン(自然とのつながりを感じられる空間デザイン)の考え方に基づき各席で緑視率(人の視界に入る植物の割合)5%を実現。光や音、香りなどの制御システムを取り入れたリフレッシュエリアも導入した。
 また、床からの冷暖房で不快な気流を発生させない空調システム「床染み出し空調」を採用したほか、自社製品として個人の温冷感を調整できる椅子「クリマチェア」、建物内の設備をクラウド上で監視制御するシステム「リモビス」を導入している。リモビスは照明・空調の最適化をもたらし省エネ実現につながるほか、クリマチェアにおける加熱・送風の利用状況を監視し全体空調の温度を制御することで快適性向上にもつながる。
北陸支店は一連の取り組みが評価され、CASBEEウェルネスオフィス評価認証でSランクを獲得している。
「ZEB化によるエネルギー消費量の削減と居住性の維持・向上というトレードオフの関係を、運用で調整するノウハウ獲得を進めている。ハード/ソフト両面の知見を、不動産会社やオーナーへのビル建設・改修に関する技術提案のなかで惜しみなく提供していく」と、イノベーション本部 技術研究所応用技術課 課長代理の北野雅士氏は話す。
 不動産業界の環境性能への取り組みは目下、認証取得が先行している。しかしダイダン北陸支店のように環境性能と働きやすさを両立したオフィスが一般化すれば、不動産市場のさらなる成長を促しそうだ。
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