このことは[図表]1で如実にあらわれている。年間の新築着工件数のうち、ZEBまたはZEBに準ずる建物の割合は2020年度でわずか0.42%にすぎない。経済産業省 資源エネルギー庁では、18年時点において30年までに新築建築物の平均でZEBを実現する目標を掲げていたが、その達成は絶望的といえよう。
また環境性能向上もさることながら、ESGの「S」に該当するワーカーの快適性向上にも目が向けられるようになってきている。コロナ禍を契機に普及したテレワークによって、オフィス自体の存在意義が見直されるなか、ワーカーに出社してもらうための工夫が求められているのだ。
「これまで不動産は、主として周辺環境を含む立地、設備機器、管理状況を基に評価されてきたが、そこに環境性能や快適性などが加味されるようになっている。テナント企業のなかにも、快適性やウェルネスに優れたビルを選別して入居する動きがみられるようになっている。この流れは今後さらに加速するだろう」(イノベーション本部 開発技術企画部次長 兼 技術研究所副所長の熊尾隆丈氏)。