なかでも、東京都大田区の「OTAテクノCORE」は、590兆円規模の未開拓市場である公的不動産(PRE)の取得・開発事業の試金石として取り組むもの。IIF は2019年2月に、同施設に投資するSPCの匿名組合出資持分の約6%(1億円)を取得、2024年2月末を決済期限とする全持分の優先交渉権を確保している(優先交渉権行使価格は44億9,000万円)。OTAテクノCOREは、大田区がめざす10か年基本計画「高付加価値を産み出すものづくり産業の集積地」を具現化するもの。同区が一棟を20年間賃借。工場アパートとして精密加工分野や機械金属系研究開発関連など中小規模の製造業者へ貸与、集積させる(2022年1月時点で稼働率は100%)。
IIF にとっては、働きがい、産業・技術革新の基盤などSDGsが掲げる重点目標に沿うほか、「ポジティブ・インパクト金融原則」にも合致する。「比較的高水準のリターンも見込まれ、社会性、経済性の両面を満たせる」と上田氏は話す。
匿名組合出資持分取得に際しては、サステナビリティ調査やコンサルティングを手がけるCSRデザイン環境投資顧問からポジティブ・インパクト金融原則との適合性に関する意見書を取得した。インパクトカテゴリとして設定した雇用・包摂的で健全な経済(正のインパクト)、気候(負のインパクト)、土壌(負のインパクト)は、毎月ないしは年に一度、モニタリングを実施している[図表]。「全持分取得の暁には、より主体的にマスターレッシー(大田区)やエンドのテナント企業、ワーカーの声を拾い集め、社会性と経済性を両立させるための最適解を模索したい」(上田氏)。