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――三菱商事・ユービーエス・リアルティ|産業ファンド

社会貢献型の投資着々
PRE590兆円市場開拓

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公共性に着目、特殊資産を取得

 三菱商事・ユービーエス・リアルティは、上場REIT「産業ファンド(IIF )」を通じて、公共性の強い施設・プロジェクトへの投資を積極化している。代表例は、空港施設(IIF 羽田空港メインテナンスセンター)や地域冷暖房施設(IIF 神戸地域冷暖房センター)、中小規模の製造業者が集積する工場アパート(OTAテクノCORE)など。取得・運用難度の高いものが多く、新規アセットクラスの開拓に意欲的な国内REIT、不動産ファンドの運用会社にはロールモデル的な存在といえる。
「これまで多様な産業用不動産を取得・運用するなかで、地域経済の活性化や雇用の創出に深く関与してきた。その結果、もはや社会貢献は投資法人のDNAといっても過言ではない」と話すのは執行役員 インダストリアル本部長の上田英彦氏。

工場アパート「OTAテクノCORE」

出所:三菱商事・ユービーエス・リアルティ

工場アパート投資でPRE開拓

 なかでも、東京都大田区の「OTAテクノCORE」は、590兆円規模の未開拓市場である公的不動産(PRE)の取得・開発事業の試金石として取り組むもの。IIF は2019年2月に、同施設に投資するSPCの匿名組合出資持分の約6%(1億円)を取得、2024年2月末を決済期限とする全持分の優先交渉権を確保している(優先交渉権行使価格は44億9,000万円)。OTAテクノCOREは、大田区がめざす10か年基本計画「高付加価値を産み出すものづくり産業の集積地」を具現化するもの。同区が一棟を20年間賃借。工場アパートとして精密加工分野や機械金属系研究開発関連など中小規模の製造業者へ貸与、集積させる(2022年1月時点で稼働率は100%)。

 IIF にとっては、働きがい、産業・技術革新の基盤などSDGsが掲げる重点目標に沿うほか、「ポジティブ・インパクト金融原則」にも合致する。「比較的高水準のリターンも見込まれ、社会性、経済性の両面を満たせる」と上田氏は話す。
 匿名組合出資持分取得に際しては、サステナビリティ調査やコンサルティングを手がけるCSRデザイン環境投資顧問からポジティブ・インパクト金融原則との適合性に関する意見書を取得した。インパクトカテゴリとして設定した雇用・包摂的で健全な経済(正のインパクト)、気候(負のインパクト)、土壌(負のインパクト)は、毎月ないしは年に一度、モニタリングを実施している[図表]。「全持分取得の暁には、より主体的にマスターレッシー(大田区)やエンドのテナント企業、ワーカーの声を拾い集め、社会性と経済性を両立させるための最適解を模索したい」(上田氏)。

[図表] OTAテクノCOREのポジティブ・インパクト投資のモニタリング方針

出所:三菱商事・ユービーエス・リアルティ「ESG Report2021/03」
 取り組みを通じてPRE投資のひな型づくりを目指す。中長期的な産業振興(人材育成、技術の継承)の場を確保したい自治体側と、中長期の安定収益を確保したい上場REITとの相性は良い。「同種のフォーマットにて投資を拡大していくうえでは、共同経営者という心構えで、自治体とパートナーシップを構築。より社会的価値の高いPRE投資を目指したい」(上田氏)。

パンデミック対応、最先端実験も

 そのほかIIF を通じたS(社会)対応の最新事例としては「IIF 湘南ヘルスイノベーションパーク」での取り組みも注目される。武田薬品工業の研究・開発施設(サイエンスパーク)であり、同社のCRE戦略の一環としてIIF が2020年9月〜21年8月にかけて全持分(取得価格385億円)を取得したもの。コロナ禍を受け、神奈川県の要請に応え新型コロナウイルス感染症の臨時仮設医療施設の建設用地として、当施設のグラウンドを無償で提供。更に施設のワーカーやその家族向けにはワクチンの職域接種を実施するとともに、本物件内の一部を藤沢市の集団接種会場としても提供。21年12月には、湘南鎌倉総合病院や三菱商事、三菱電機と共同で、医療と移動をテーマに、自動運転車の実証実験も実施した。

「IIF 湘南ヘルスイノベーションパーク」

出所:三菱商事・ユービーエス・リアルティ
 今後のIIF の投資運用方針について、上田氏は「投資家からはSDGsに叶うさまざまなアセットに意欲的に挑戦してほしいという声が強くある。施設の継続性、汎用性、収益性に留意しながら、投資家やテナントとの対話を重視しつつ物件の組み入れを図っていく」と話している。
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