次にADRとRevPARの状況についてみてみる[図表4]。ADRが最も低下したのは宿泊特化とフルサービスが6月、リゾートが5月であった。宿泊特化は4,000 円台、フルサービスは7,000 円台まで落ち込み、リゾートに至っては1万円を切っており、宿泊需要の大減退に伴う高額客室の販売減や室料引き下げが響いている。対前年比が最も下がったのは宿泊特化が5月(▲51.7%)、フルサービスが6月(▲39.4%)、リゾートが6月(▲ 70.0%)で、リゾートはコロナ禍の影響を大きく被ったといえよう。
RevPARが最も低下したのはいずれのホテルタイプも客室稼働率がボトムとなり販売客室数がごく僅かに過ぎなかった5月であり、宿泊特化とフルサービスは1,000 円強、リゾートは300円弱まで落ち込んでいる。対前年比はいずれも5月に最も下がり、宿泊特化が▲ 86.2%、フルサービスが▲ 90.8%、リゾートが▲98.7%と辛酸を極めた。
6月以降の回復度合いはADRとRevPARともに宿泊特化が最も鈍く、フルサービスも芳しくない。それに対してリゾートはADRが徐々に伸び、客室稼働率が他に比べて向上した7月にはRevPARも大きく戻している。ここでもリゾートで「GoToトラベル事業」の効果が表れているとみられる。
宿泊特化とフルサービスといった都市立地ホテルの客室単価の戻りが遅れているのは、地方に比べ感染状況が大きくは改善していない大都市への訪問忌避やリモートワーク定着による出張需要減が大きいだろう。宿泊特化のADRとRevPARを東京と東京以外で比較すると、東京以外は6月、7月と回復の兆しがあるのに対し、東京はボトムの5月から横ばい状態が続いている[図表5]。
7月下旬から8月中旬にかけて春の第1波を大きく超える山となった第2波の感染状況で、お盆休み期間中などの帰省や旅行に賛否があったなか、8月のホテル運営実績はさらに回復していただろうか。9月に入っても東京をはじめとした大都市での感染状況改善は緩慢であり、地方に比して都市部での厳しい運営状況が暫くは続きそうだ。