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新規2物件取得で成長継続、デジタル技術で“進化”模索

J-REIT|投資法人みらい

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物件売却で収益下支え、分配金予想は微減維持

投資法人みらいは、2020年5月時点で34物件・1,534億円を保有する総合型REITである。ポートフォリオはオフィス55.4%、ホテル19.0%、商業施設17.8%、その他(インダストリアル、教育施設)7.8%の比率(取得価格ベース)となる。
資産運用会社の三井物産・イデラパートナーズ(MIP)は4月21日、新型コロナウイルス拡大の影響を受け、投資法人の2020年4月期の営業利益と分配金の予想値を、ともに前回発表比0.6%減に、20年10月期の営業利益を同6.7%減、分配金を同7.5%減に下方修正した。主な理由は、運用するホテルの稼働率低下や休業状態を受けて、一部賃料を未発生としたため。
修正予想と同時に、インダストリアル施設「六甲アイランドDC」(神戸市東灘区)の準共有持分の一部売却を発表した。また、2019年11月に実施した、都市型商業施設「MIMIU神戸」の段階的売却による利益と合わせ、20年4月期の分配金原資を下支えする予定だ。
「現段階でコロナ禍の影響、広がりを正しく予想することは困難。当面は、分配金原資の確保など投資家利益を確保する守りの戦略を優先する。しかし今後は、REIT市場もコロナ後における世の中の“ 変化”や“ 進化”に合わせていかなくてはならない」と危機感を話すのは、MIP代表取締役社長CEOの菅沼通夫氏だ。
     

六甲アイランドDC(写真:三井物産・イデラパートナーズ提供)

“ 集約”から“分散”の流れは追い風、都市型商業ビルも厳選投資継続

投資法人の現在の運用状況と、今後の投資運用戦略をアセットタイプ別にみていきたい。まずオフィスビルは、4月末時点の稼働率が99.3%と影響は少ない。ただしコロナ禍によりテナント側のテレワークが増え、具体的な契約交渉が進んでいないケースも多いという。また、「中長期的にはテレワークの普及や、BCP(事業継続計画)を重視する傾向により、これまでの“集約”の流れが逆回転、都心の拠点オフィスからその周辺部や地方への“分散”ニーズが高まるとみている」(菅沼氏)。投資法人は、今年3月に取得した「広島鯉城通りビル」(広島市中区)をはじめ、「品川シーサイドパークタワー」(東京都品川区)、「川崎テックセンター」(川崎市幸区)、「MIテラス名古屋伏見」(名古屋市中区)など、地方所在の物件や、都心周辺部のビルへ集中投資している。拠点分散の流れは追い風になると予想され、今後も同様の投資方針を継続するという。
商業施設は業態により明暗が分かれる。食品スーパーや日用品・雑貨の専門店で構成される「イオン葛西店」(東京都江戸川区)など、近隣型の施設は業績好調だが、広域型の複合商業施設「ミ・ナーラ」(奈良市)は食品スーパーなどを除き5月14日まで休業を続けていた(一部店舗を除き5月15日より営業を再開)。「テナント各社には、敷金の一部賃料への充当や、賃料支払いの猶予を設けるなど柔軟に対応していく」(代表取締役副社長CIO 岩崎浩之氏)という。一方、今年3月には都市型商業ビル「MIキューブ仙台クリスロード」(仙台市青葉区)を新規に取得した。場所は市営地下鉄「仙台」駅徒歩2分の商店街に面した立地。1階には業績好調なドラッグストア、上階には飲食店やコワーキングスペースが入居する。オフィスや商業施設の仙台駅周辺部への集積が進む環境下で、地域の生活者ニーズに密着し、柔軟なテナントミックスで長期・安定収益の確保を目指すという。
ホテルは、保有する15物件のうち、緊急事態宣言が解除された地方都市の物件が13件を占める(2020年5月21日時点)。インバウンド旅行客よりも、国内ビジネス客を主要ターゲットとするため、今後は集客を一定程度回復できるとみている。
4月には、保有物件の「ホテルWBF淀屋橋南」(大阪市中央区)のオペレーターであるWBFホテル&リゾーツが民事再生法の適用を申請した。しかしポートフォリオに占める同ホテルの投資比率は1.1%で影響は小さい見込み。なお、同テナントとは従前より中途解約の交渉中であり、解約後の運用プランも用意されていた。

デジタル技術の応用で、REIT運用の新スタイル模索

MIPが今後の“進化”の取組みとして大きな可能性を見出すのが、三井物産グループが推進する「デジタル証券化プロジェクト」への参画である。前述した六甲アイランドDCの買い主は、スポンサーの三井物産が出資するSPCであり、取引を通じて三井物産グループが進めるデジタル証券化プロジェクトにも積極的に関与していくという。同プロジェクトは、改正金融商品取引法(2020年5月施行)のもと、ブロックチェーン技術を活用したセキュリティトークン(デジタル証券)の実証実験を行うもの。MIPとしても、AM業務の効率化などでブロックチェーン技術の活用を検討予定。各種運用業務の効率化とともに、新たな資金調達手段の確保にも期待を寄せている。
また、MIPでは既存の投資対象のみならず、新しい資産の取得にもチャレンジする方針。具体的には、テレワーク浸透と5Gの本格稼働が進むなかデータセンターをはじめとした通信インフラ関連に注目している。また投資法人が保有する「東京衛生学園専門学校」(東京都大田区)など、社会貢献度の高い教育施設は底堅い需要があると見て、今後も積極的に取得する方針。「現在のように、世の中が急速に進化する環境下こそ、総合型REITの強みである柔軟性を発揮できるタイミング。デジタル技術などを先取りすることで、他銘柄との差別化を図り、中長期的な成長につなげていきたい」と菅沼氏は意気込みを話した。
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