東京23区の市場環境をみる指標として、各区ごとの「死亡数」「孤独死数」「孤独死率」「1,000人当たり死亡率」「総人口」「65歳以上人口」「65歳以上人口の割合」「世帯数」の8項目を比較したものがある。
それによると、最も市場規模(死亡数)の大きいのは、23区の北部に位置し埼玉県に接する足立区の7,228人である。次いで、南西部の世田谷区が6,884人、北西部の練馬区が6,186人と続いている。人口規模は世田谷区がいちばん大きいが、死亡数では足立区がトップなのは、足立区の死亡率が他区よりも高いためである。東京23区全体でみた死亡率は人口1,000人当たり8.5だが、足立区は10.5と23区の平均より2ポイント高い(ちなみに、死亡率が最も高いのは北区の10.9)。それに反して、世田谷区の死亡率は7.6と平均を下回っていることから両区の逆転現象が起きている。
足立区と世田谷区といえば、23区内の下町(東部・北部)と山の手(南西部・西部)を代表する区である。両区の死亡率に差があるのは、区民所得や医療提供水準、教育水準(世田谷区>足立区)のほか、世田谷区は生活保護受給率や高齢化率が低い、健康意識が高く平均寿命が長い、といった環境因子が複層的に影響しあい、両区の死亡率に高低差を生じさせたのであろう。
さらに、近年、孤独死が大きくクローズアップされているが、東京23区でも顕著な傾向がみられる。(続きは本誌で)
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