とはいえ、リニューアルしたばかりで設備も新しく単体としても集客力の高い南池袋公園と異なり、銀行やオフィスビルが多いグリーン大通りはにぎわいのイメージが薄いうえ、保健所申請のハードルの高さや給排水設備がないことから飲食物の販売がむずかしいという側面もあり、当初は出店者が集まりづらい、あるいは出店しても売上げが芳しくない状況だったという。
民間の実践を契機として、街のハード整備も進行
こうした状況に対し、池袋に本社を構える蒲ヌ品計画などとともに「IKEBUKURO LIVING LOOP」を企画、17年11月18〜19日の週末2日間にわたって開催した。
IKEBUKURO LIVING LOOPの出店料はnest marcheと同様であるが、単に規模を大きくしたマルシェという位置づけではなく、グリーン大通りにベンチやハンモックなどストリートファニチャーを設置し、名称のとおり”市民のリビング“のような空間とすることが企図された。ストリートファニチャーにはレンタル料がかかるうえ、道路上には常設ができないため開催時間以外は撤去する必要があるなど運営コストは小さくないが、「グリーン大通りがリビングとして変化した様子をみせることで、場所に対する期待値を高めたかった」と青木氏は回顧する。結果として、好天に恵まれた2日目は全94店舗のうち、76店舗がグリーン大通りに出店。2日間で3,730人がIKEBUKURO LIVING LOOPで買い物を楽しんだ。
従来ではむずかしかったグリーン大通りへのキッチンカー乗り入れについても、nest marcheの開催実績に加え、場所の選定や警備面で安全性を確保するなどして許可を得た。また、歩道中央に設置され高い位置から白い光で照らしていた街路灯については無機質な感じがありマルシェとなじまないため、IKEBUKURO LIVING LOOPの開催中はその街路灯を使用せず、代わりに出店者の各ブースに暖色系の照明を配するという取組みも実施した。実際、これらをきっかけとして通常時におけるキッチンカー乗り入れ許可や歩道を用したパフォーマンス許可の緩和、さらにグリーン大通りの照明リニューアルも進められており、社会実験とそこで得られたアイデアを街に実装するという流れが具体的に稼動しているのは、公民連携の好例といえるだろう。