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東京・池袋と神戸・三宮にみる
街なかを彩るコンテンツ展開の実態

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 ウォーカブルな街づくりにおいてはインフラ整備だけではなく、街を歩いてみたくなるような場所づくりが回遊性を高め、面としての価値向上につながる。そうした街なかを彩るようなコンテンツの展開こそ、民間事業者のアイデアが大いに活かせる局面だろう。 こうした視点から、国内での2つの実践についてレポートする

CASE@【東京・池袋】nest marche / IKEBUKURO LIVING LOOP

公園と大通りを舞台に、日常風景をつくるイベントを定期開催
 東京都豊島区は2015年に「国際アート・カルチャー都市構想」を発表した。その実現戦略においては駅から街への動線など「人間優先の回遊空間の整備」とともに、公共空間(道路、公園、広場)の活用による「劇場空間の創出」を盛り込み、池袋駅周辺4公園(南池袋公園、中池袋公園、池袋西口公園、としまみどりの防災公園)の整備・連携を打ち出し、取組みが推進されてきた。
 16年4月には南池袋公園がリニューアルオープン。同月には池袋駅東口から同公園をつなぐグリーン大通りが国家戦略特区に指定されたことで道路空間の活用が可能となった。区は、公園・道路を活用して街の魅力向上を図るべく「グリーン大通りにおける賑わい創出プロジェクト」の実施者を公募型プロポーザルで募集。穫estが実施者として選定され、17年5月からグリーン大通りと南池袋公園を舞台に月1回(第3週の土曜日)開催されてきたのが「nest marche」である。
 nest marcheは、豊島区を中心に活動している人や店舗がクラフト雑貨販売や飲食店舗などを出店する催しで、出店数は15〜35店舗ほど。出店料は売上の10%(最低保証額3,000円。什器レンタル・電気レンタルは別料金)となっている。
 nestの代表を務める青木純氏は、「nest marcheは単にその場の瞬間的なにぎわい創出ではなく、池袋の魅力的な日常風景をつくり上げていくことを目指しました」と取組みの方向性を語る。
 とはいえ、リニューアルしたばかりで設備も新しく単体としても集客力の高い南池袋公園と異なり、銀行やオフィスビルが多いグリーン大通りはにぎわいのイメージが薄いうえ、保健所申請のハードルの高さや給排水設備がないことから飲食物の販売がむずかしいという側面もあり、当初は出店者が集まりづらい、あるいは出店しても売上げが芳しくない状況だったという。

民間の実践を契機として、街のハード整備も進行
 こうした状況に対し、池袋に本社を構える蒲ヌ品計画などとともに「IKEBUKURO LIVING LOOP」を企画、17年11月18〜19日の週末2日間にわたって開催した。
 IKEBUKURO LIVING LOOPの出店料はnest marcheと同様であるが、単に規模を大きくしたマルシェという位置づけではなく、グリーン大通りにベンチやハンモックなどストリートファニチャーを設置し、名称のとおり”市民のリビング“のような空間とすることが企図された。ストリートファニチャーにはレンタル料がかかるうえ、道路上には常設ができないため開催時間以外は撤去する必要があるなど運営コストは小さくないが、「グリーン大通りがリビングとして変化した様子をみせることで、場所に対する期待値を高めたかった」と青木氏は回顧する。結果として、好天に恵まれた2日目は全94店舗のうち、76店舗がグリーン大通りに出店。2日間で3,730人がIKEBUKURO LIVING LOOPで買い物を楽しんだ。
 従来ではむずかしかったグリーン大通りへのキッチンカー乗り入れについても、nest marcheの開催実績に加え、場所の選定や警備面で安全性を確保するなどして許可を得た。また、歩道中央に設置され高い位置から白い光で照らしていた街路灯については無機質な感じがありマルシェとなじまないため、IKEBUKURO LIVING LOOPの開催中はその街路灯を使用せず、代わりに出店者の各ブースに暖色系の照明を配するという取組みも実施した。実際、これらをきっかけとして通常時におけるキッチンカー乗り入れ許可や歩道を用したパフォーマンス許可の緩和、さらにグリーン大通りの照明リニューアルも進められており、社会実験とそこで得られたアイデアを街に実装するという流れが具体的に稼動しているのは、公民連携の好例といえるだろう。
 IKEBUKURO LIVING LOOPはその後も継続的に開催。出店者当たりの一日平均売上げが17年の1万7,000円から19年には3万7,000円にまで増加するなど、着実に成果をあげてきた。施者の再公募が行なわれた20年度からは、nestに加え、良品計画、潟Tンシャインシティ、潟Oリップセカンド(南池袋公園のレストラン「RACINES FARM TO PARK」の運営事業者)といった商業プレイヤーも参画して、4者でプロジェクトに取り組んでいる。コロナ禍のためnestmarcheは20年3月から中止となっているが、IKEBUKUROLIVINGLOOPは感染防止対策を講じたうえで20年10月30日〜11月1日、11月20日〜23日の計7日間にわたって開催。一日当たりの平均購入客数は2,726人と過去開催(19年3741人)に比べて減少したものの、出店者当たりの一日平均売上げは約5万1,000円、特に飲食では平均6万円台にのぼり、10万円以上を売り上げた店舗も複数あったという。
 これまでの運営については、いずれも黒字化を達成(運営費用には区からの予算も含む)。加えて、「来場者にもベビーカーを押している家族連れの姿がみられるなど、地域の日常として浸透してきているという実感があります」とも青木氏は手応えを語る。
 今後はコロナ禍を考慮しながら、毎月のマルシェをIKEBUKURO LIVING LOOPとして再開して日常化させ、11月は大型イベントとして開催したい考え。ストリートファニチャーについても、21年9月頃から暫定的に一部常設化、さらにその先には常設拡大やファニチャーを活用した収益化なども区と協議しながら計画しており、池袋エリアの日常風景を変える実践は続いていく

CASEA【神戸・三宮】Street Table Sannomiya

駅直結ビルの跡地を暫定利用し、街づくりへの関わりしろを創出
 神戸市中央区に所在する三宮エリアでは、JR「三ノ宮」駅など6つの鉄道駅と周辺の街を一体的につなぐ再整備基本構想を掲げており、その核として三宮交差点を中心に道路の一部を人と公共交通優先の空間とする「三宮クロススクエア」の具現化が目下進行中だ(25年頃に第一段階の完成予定)。
 そうした三宮エリアに2020年12月19日、フードスタンド(8ブース)とイベントステージから構成される約400uの屋外空間「Street Table Sannomiya」がオープンした。JR三ノ宮駅直結で「三宮ターミナルホテル」や「三宮OPA」などが出店していた「三宮ターミナルビル」が18年3月に閉館し、建替えが予定されていたがコロナ禍で工事計画が変更となったため、21年9月26日までの跡地暫定利用事業との位置づけだ。
 同市内の都市公園「東遊園地」の活用に関する社会実験「アーバンピクニック」を運営してきた(一社)リバブルシティ イニシアティブが、土地を所有する西日本旅客鉄道梶iJR西日本)から要請を受けプロジェクトを推進。J R西日本より土地を無償で賃借のうえ、イニシャルコスト・運営コストおよび売上げはリバブルシティ イニシアティブに帰属する。
 駅至近の好立地ではあるが、JR三ノ宮駅前にぎわい創出実行委員会(神戸市、J R西日本、叶_戸新聞会館の3者で構成)とも協議のうえ、経済合理性のみを追求するのではなく、継続的に市民に開かれた公共性も有する場として設置。三宮クロススクエアにおける場づくり・運営の先行実験という意味合いももたせている。リバブルシティ イニシアティブ代表理事の村上豪英氏は、「三宮クロススクエアは規模の大きなプロジェクトであるため、市民の“関わりしろ”はなかなか見つけづらい。だからこそStreet Table Sannomiyaでは市民や小規模事業者が参画できる機会を提供できればと考えました」と話す。
セグメンテーションに配慮し、多種多様な層を受け入れる場に
 フードスタンドの出店者は市内および近隣自治体の事業者とし、単に飲食物をテイクアウトで提供する店舗ではなく、飲食を通じStreet Table Sannomiyaの活性化に資する店舗を募った。出店機会が限定されないよう、21年3月からは開業時の店舗から順次入替えも実施している。イベントステージについてはコロナ禍で活用しづらい状況にあるが、地元や大阪を拠点に活動するアーティストからの問合せ自体は多いという。来場者は老若男女にわたり、外国人まで含めて多種多様。「たとえば通常の飲食店であれば、客層のターゲットを絞り込む戦略もありえますが、公共性も担うStreet Table Sannomiyaとはなじまないでしょう。アーバンピクニックでの経験もふまえ、セグメンテーションのバランスには気を配っています」(村上氏)という考え方の成果といえるだろう。昼間の営業に強いフードスタンドの出店によって利用が夜に偏らないようにしている点も、多様な層の受け入れにつながっている。
 飲食・ステージイベント以外のコンテンツによる滞在価値の提供も模索しており、物販関連の充実を検討中だ。また、街なかにおけるアート・カルチャーの発信地としても認知度を高めるべく、アーティストによる公開制作イベントなどの企画も見据える。
 「今後、三宮クロススクエアの整備が進みエリアマネジメントが具体化していくなかで、フードスタンドやイベントステージでどういったものが好評だったかなどStreet Table Sannomiyaでの取組みを参照してもらえれば」と村上氏が話すように、三宮のエリア価値向上に今回の実践が活かされていくことが期待される
(“ウォーカブル”への展望や実践手法、関連制度解説は本誌にて)
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