1月に成立した令和2年度第3次補正予算案では、Go To トラベルに1兆0,311億円が計上された。
地方や観光・宿泊業界からは感染状況が比較的落ち着いている地域に限定した早期再開を望む声があがっているが、再開時期の見通しは不透明だ。
当初、Go To トラベルの延長は今年6月末までを基本想定としていたが、これは東京オリンピックの開催を前提としている。オリンピックの開催が延期あるいは中止になった場合、政府は経済効果の落ち込みをカバーする対策に迫られてくるだろう。
もっとも、延長をめぐっては「適切な運用」が謳われていて、「たとえば、中小事業者、被災地など観光需要の回復が遅れている地域への配慮を行なうとともに、平日への旅行需要の分散化策を講ずる」としている。また、事業者からも料率の段階的な縮小によるソフトランディングも要望が出ていた。
政官への業界広報機能として活動する㈶宿泊施設活性化機構 事務局長の伊藤泰斗氏は、Go To トラベル再開の方向性を次のように話す。
「開始当初は地域や事業者に予算が配分され、まるで計画経済のようであったが、再開時には国民の認識や合理性に基づいた市場経済ベースの考え方に落ち着くだろう。飲食事業者への協力金が前例となって、企業規模によって支援額に差を設けるのはロジックが担保されない。また、総需要の喚起はあっても、需要のない特定地域に限って予算を投入するのは市場原理に逆らっている」。
コロナ禍の経済対策でも、一定の倒産と失業は許容しつつ、その先の不動産を通じた金融システムの崩壊だけは避けたい、というのが政府の共通認識となっているようだ。