「コロナ禍」に対して、葬祭事業者はいかに立ち向かったか。本誌では、約5年ぶりに葬祭業のアンケート調査を行なった(前回は2017年7〜8月実施)。
図表1はその調査概要である。回答を得た122社の営業地域は図表2のとおり、北海道と中国・四国エリアがやや少ないものの、全国からほぼ萬遍なく寄せられたといえる。
図表3は、19年、20年、21年の年間施行件数である。件数自体は各社の事業規模やエリアなど諸条件に依るが、いずれの年も200件未満、200件以上600件未満、600件以上がそれぞれ約3割で、件数の比率に大きな変動はない。個別にみていけば増減はあると予測されるが、年間施行件数からみる限りでは、コロナ禍といえども業界の構造が変化していないことは明らかだ。
次に、各社の売上げ状況についてみてみよう。図表4は、葬儀部門について、コロナ前(19年)を100とした場合の20年、21年の売上げ指数を示している。
「19年より減少している」と答えた葬儀社は、20年が約7割、21年が約6割と、いずれも「増加している」を大きく上回っている。売上げの減少は業界全体の傾向という見方もできるかもしれないが、20年のほうが減少したと回答している割合が多いことから、20年の数字にはコロナ禍の影響があると考えて間違いないだろう。先に述べたように、年間施行件数にほとんど変化がないとすれば、特に20年は葬儀自体の小規模化・簡素化が進んだことがわかる。
一方、21年には微増(100〜109)を中心に葬儀部門の売上げが増加しているところがふえている。会葬を自粛する傾向が強かった20年に比べ、21年はいわゆる「withコロナ」の生活様式がある程度、生活者・事業者双方に浸透し、多少なりとも持ち直してきたと思われる。
今回の調査では、コロナ禍(1年目)の影響の大きさをあらためて認識する結果となった。
新型コロナウイルス感染症に伴うさまざまな制限や自粛は、葬儀の小規模化、簡素化(省略化も)を加速させたが、思い描かなければならないのはコロナ後を含めてこれからのことだ。
さまざまな業界や分野でもいわれているように、コロナ禍はデジタル技術の活用を促進させた側面もあり、葬祭業界も例外ではない。そうした意味では、コロナ前とまったく同じ状態に戻ることより、新たな日常(ニューノーマル)を踏まえて今後のあり方を考える必要があるだろう。同時に、葬儀の意義やお別れの場の大切さを伝えることも、これまで以上に重要になるのかもしれない。
いまだ収束のみえないコロナ禍は、昭和時代から築き上げてきた葬祭業のビジネスモデルの転換を迫った。小規模化・簡素化・省略化に突き進む葬送ニーズ(需要側の利益)と自社の売上げ確保(供給側の利益)をいかに比較考量していくか。わが国の葬祭市場が140万人時代を迎えたいま、今後も葬祭業界の動向・行く末を注視していきたい。