竹内
エンバーミングには、「感染防御」「防腐効果」「修復効果」という効果があります。エンバーミング処置を行なうには、当然、消毒・滅菌処置を施すことが求められます。つまり、感染症(結核や院内感染等)に罹ったご遺体であっても、処置後は公衆衛生上、安全になるのです。そのため、ご遺族や会葬者は安心してお別れをすることができます。次に、防腐効果についでですが、エンバーミングでは、血管を通じて薬剤を注入することで全身防腐を施すことができます。これにより、慌ただしいスケジュールで葬儀を行なう必要もなくなります。
修復効果については、たとえば闘病生活中にやつれてしまったお顔、あるいは事故や災害などで損傷された場合であっても、エンバーミング処置を行なう際に、生前の面影のままお別れをすることができるのです。
さらに、昨今はグローバル化の進行とともに海外在留邦人、国内在留外国人、さらには旅行者等が亡くなった際に行なわれる遺体の国際搬送(インバウンド、アウトバウンドを含む)という問題にも対応しなければなりません。海外ではエンバーミングが慣例として実施されていますから、日本におけるエンバーミング技術の確立も、いずれは必要不可欠なものになったといえるでしょう。厚労省でも、諸外国の葬送事情について調査をしているそうですし、厚労省では日本でエンバーミングを行なうにあたり、外国人のご遺体の取扱いのほか、災害や感染症対策に関する知識が必要となることから、厚労省より選定された当協会が研修事業実施団体となり、IFSA協会認定エンバーマーを対象とした研修を実施する方針を出した「厚生労働省認定エンバーマー養成研修事業」として、当協会が国の補助金を受けながら研修を行なっています。ましてや、ご遺体の海外搬送(インバウンド、アウトバウンドを含む)は、これからはふえることはあっても少なくなることはありません。諸外国の葬送事情を理解し、搬送先となる国、地域の要求に応える体制をとることが、日本国にも求められているのです。