出店を決定する際に重要な項目として、競合施設の有無がある。近年では、スーパー銭湯を含む温浴施設も全国に行き渡っているため、競合施設が見当たらない立地を探すことは相当困難なこととなっている。
当然のことではあるが、出店計画地の商圏内に競合施設が存在している場合、その内容を十分に調査しておく必要がある。調査する項目は、施設内容はもちろんのこと、施設規模、築年数、投資規模、改装履歴、増築の余地、土地情報(所有地か借地かなど)、入館状況、入館料、総売上、テナントの有無、土地建物所有者、運営者、経営方針など多岐にわたる。
仮に競合施設が盛況施設であり、増築の可能性が低いと考えられる場合には、計画施設の規模を競合施設の1.5倍程度にすれば競争の原理から脱することが可能となる。
具体的には、延2,000u程度の既存施設から、直線距離で約10qの位置(車での走行時間30分圏内)で施設開発を行なう場合、延2,000u×1.5≒延3,000uの施設規模があれば競合の影響はほとんど受けないと考えられる。延2,000uの施設の商圏が半径約6q圏内であるのに対し、延3,000uの商圏は半径約9qとなる。このうち5q分が競合することになるが、競合範囲内の人口も1:1.5となるため、現実的に競合施設の存在を消すことが可能となるのである。
もちろん、新たに開発する施設においても、将来の競合施設の出店に備えておかなければならない。また、前述のように、温浴施設の開発のベクトルが10年ごとに変遷しているため、10年後には「第五世代」の温浴施設が登場する可能性も高い。将来開発が予想される競合施設と長期間にわたって伍していくためには、可変性を備えた施設計画が必須であり、投資の早期回収も必要となる。
しかしながら、既存の温浴施設が、近隣に競合施設が出店した影響で閉鎖された、という事例はかなり少ないようである。温浴施設の場合、にぎやかな施設を利用したいと考える利用客が70%であるのに対し、静かな施設を利用したいと考える利用客も30%程度は存在しているため、競合により新たな利用客層が発掘され、自然と棲み分けができているものと考えられる。
(つづきは本書で)
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