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東京五輪で注目度アップ!飛躍の可能性を秘めるアーバンスポーツ

執筆|針谷和昌 一般社団法人日本アーバンスポーツ支援協議会 専務理事

  • スポーツクライミング
  • eスポーツ
「スポーツクライミング」「B3スポーツ」「パルクール」に加え、「パデル」「eスポーツ」を将来有望なアーバンスポーツと捉え、それぞれの市場動向、事業化のポイントと事業収支モデルを業界第一人者が徹底解説。

アーバンスポーツとは

 まさに会場はフェスティバルと化し、アスリートも観客も一体となって、スポーツのもつ自由さと楽しさを満喫する。やる者にも観る者にもスポーツの原点を呼び起こす「若者に人気のある都市型スポーツ」、それがアーバンスポーツである。
 またアーバンスポーツは、ライフスタイルスポーツ、あるいはカルチャーそのものとしての魅力をもっている。もともとメダルを争うものでなく、自らが楽しみ、仲間や観る者たちもその楽しさに巻き込んでいくパフォーマンスがアーバンスポーツの原点である。「スポーツ」という名称がつくようになったのは近年のことであり、もともとは楽しむことがすべての、ライフスタイルでありカルチャーなのである。若者の生活や文化から生まれたアーバンスポーツは、これからの時代を体現する、最先端のムーブメントだといえ、その可能性は計り知れない。

スポーツクライミング

 壁を登る速さを競う「スピード」、制限時間内に壁をいくつ登れるかを競う「ボルダリング」、制限時間内に壁のどの地点まで登れるかを競う「リード」の3種目。国内の愛好者は60万人以上と推計される。
施設形態と利用者
「ボルダリングジム」と「リード&ボルダリングジム」に大別される。前者はボルダリングウォールだけのジムであり、天井高が低い場所でも開設できるため駅の近くや市街地に多い。後者は高さ10m以上の空間が必要となるため、郊外に立地場所を求めるケースが一般的。ボルダリングは若者中心のスポーツであるのに対し、リードクライミングは年齢を問わない生涯スポーツ的な側面をもち、リピーターが多く収益が安定するといった特徴をもつ。

施設条件
 クライミングウォールのあるジムスペース80uのほか、受付・更衣室・休憩スペースなどを含め最低限120uのスペースはほしい。天井高については、ボルダリングウォールは最低3m、最高で4.5mのウォールを設置できる必要がある。リードウォールの場合は最低でも8m以上だが、国際競技は高さ15m以上なのでウォールは高いほうが望ましい。

全国スポーツクライミングジム数の推移(推計)

スケートパーク(B3スポーツ)

「B3スポーツ」とは、BMX・スケートボード(Board)・インラインスケート(Blade)の3種目の総称。東京2020オリンピックの正式種目にスケートボード、BMX フリースタイルパークの採用が決定される前後から第二次ブームともいえる状況に転じ、実施人口が急増している。日本の潜在的な愛好者は50万人とも60万人ともいわれている。
自治体が牽引するスケートパーク建設
 全国に400か所以上のスケートパークが展開されているが、その多くは公営施設である。近年のスケートパーク整備手法としては、自治体が施設を建設し、スケートパーク経営のノウハウをもった民間に運営を委託する公設民営型が注目される。地域や施設の規模などにより異なるが、利用者は年間数千〜数万人規模で推移する。世代別では、一般60%、小中高生30%、未就学児童10%。

立地条件
 小中高生から大学生にかけての競技人口が多いことから、公共交通機関を使って気軽に通える立地が望ましい。また、近隣住民に迷惑がかからないよう配慮が必要である。地域との共生は事業の成否を大きく左右し、常に利用者への注意喚起、指導を行なって徹底したい。大人をメインターゲットとするのであれば、物流施設・倉庫が集積するエリアや工場などを対象に物件を探すのもよい。ある程度の敷地面積を確保でき、床がコンクリートでできているので路面の補修はほとんど必要なく、駐車場も完備されていることが多い。

パルクール

 フランス発祥の移動術で、街中や自然のなかにある壁や地形を活用して「走る・跳ぶ・登る」などの動作を複合的に行なう。オブスタクルス(障害物)を乗り越えてスピードを競う「スピードラン」と、オブスタクルスを利用して連続したアクロバティックな動きのなかでのクリエイティビティや巧みさを競う「フリースタイル」の2種目が主要競技。
将来展望
 市場を拡大しつづけると考えられる要因として、エンターテインメント業界から注目され、リレーションが構築されていることがあげられる。エンターテインメント業界からのニーズの拡大に対応し、パルクール実践者を育成する教室が大都市圏で開設されはじめている。課題は「良質な指導者」の育成。資本の用意だけで運用される施設や指導者が、国内におけるパルクールの評価や将来性に悪影響を与えることは業界の共通認識となっている。

立地条件
 ボリュームのある商圏人口を背景にした出店は、施設への集客だけでなく、地方公共団体や商業施設主催の出張教室やイベントなどへの対応、メディアの取材を定期的に受けやすいなど営業活動にも有利。施設は4m以上の天井高が必須であり、一般的な店舗・施設跡地ではそれがネックとなる。工場や倉庫物件は天井高が確保でき、しかも周辺には一般住宅が少なく、騒音などについて割合寛容であることも有利である。ただし、人口集積エリアから距離があり、教室を実施するメインの時間帯の公共交通機関は必ずしも充実していないことに注意を払う必要がある。

パデル

 ガラスと金網の壁に囲まれたコートを使ってダブルスで行なう、テニスとスカッシュを合わせたスペイン発祥ラケットスポーツ。老若男女問わず手軽にプレイでき、初心者でも上達スピードが速い一方、壁を使ったプレイは戦略性に富み、「簡単だけど奥深いスポーツ」として上級者でも飽きずに継続して楽しめる。ヨーロッパや南米を中心に世界のプレイヤー人口は1,200万人、国内は1万5,000人程度と推測される。
コートと道具
 ゲームは周囲を強化ガラスと金網フェンスに囲われた縦20m×横10m(約60坪)のコートで行なう。ポイントの数え方はテニスと同じだが、パデルは2対2のダブルスのみで行ない、強化ガラスと金網の壁を使うことも可能である。ラケットはテニスに比べてグリップが短いので扱いやすく、ボールは硬式テニスボールに比べて若干空気圧が低く反発力が小さい。コートが小さく、ダブルスのみで行なうので体力的に負担があまりかからない。

立地条件とターゲット
 立地条件はマーケットの生活圏内が望ましく、居住地や勤務先の周辺、通勤・通学先からアクセスしやすい場所への出店が重要。プレイスタイルが近似しているテニスの経験者が多い30歳代〜40歳代をターゲットの中心に据えたい。

eスポーツ

 eスポーツは「エレクトロニック・スポーツ」の略で、競技性の高いコンピューターゲームやPCゲームを使って電子上で対戦すること。一般への認知が広がった2018年の国内市場規模は対前年比13倍の48.3億円、国内eスポーツファン(試合観戦・動画視聴者)は同66%増の383万人と推計される。
基本設備
 ゲーミングパソコンは市販されているパソコンよりグラフィックボードや CPU、メモリなどが高性能で、快適にゲームをするために特化。ゲーミングモニターも、競技としてコンマゼロ秒を争うために応答速度やリフレッシュレートの高いものが必要。キーボードやマウスもプレイヤーに合わせてカスタマイズできるものも多い。また、身体への負担やストレスが少なく、コントローラーの操作性や安定性を向上させてくれるゲーミングチェアを採用する。PC1台当たりの専有スペースは横幅110p前後、奥行き65p前後はほしい。

営業形態
 主にネットカフェ型とイベントスペース型がある。前者はネットカフェのように利用時間による従量課金制で通常営業を行なうほかにコミュニティイベントを開催する。後者はユーザーや企業にeスポーツ関連のイベントを行なうレンタルスペースとして提供するもので、ビジネスモデルとしてはライブハウスに類似。単に機材を揃え、スペースを準備して問合せを待つのではなく、コミュニティイベントの開催やSNSでの情報発信を積極的に行ない、施設が盛り上がっている状況を企業やユーザーの目にとまるようにPRしていくことが非常に重要。
(つづきは本書で)

印刷用PDF

アーバンスポーツ施設の事業化計画資料集

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