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21年度0.7%プラス改定を後期高齢者への対応と
コロナ禍で見えてきた課題の解決に

  • シニア・ヘルスケア
  • 介護ビジネス
■■■テーマ1 介護保険制度■■■
  • 中村秀一氏
    医療介護福祉政策研究フォーラム 理事長
    国際医療福祉大学大学院 教授

     わが国の高齢者数のピークは2042年とされている。介護保険制度は2000年4月にスタートしたので、高齢者数のピークがゴールだとすると、2021年はその「折り返し点」に当たる。介護保険制度発足から現在までの「前半」の走りはどうだったであろうか。この間、介護サービス量は大幅に拡大してきたし、いろいろ議論はあるが介護保険の制度の根幹は揺るがず、安定的に推移してきたと評価できよう。
     それでは、今後はどうであろうか。2000年から現在まで65歳以上人口は約1,400万人と大幅に増加した。これに対し、今後20年の増加数は約300万人程度である。この意味では、「後半」はなだらかな上り坂であり、この20年間、高齢化の急な坂を走破してきたわれわれとしては過度に恐れることはないと考える。
  • 中村秀一氏
             中村秀一氏
しかし、2022年以降の3年間は団塊の世代が後期高齢者入りをする後期高齢者数急増期である。直面する、このコブを乗り切ることが課題である。この意味で今年4月からの第8期の介護保険事業計画は重要であり、保険者である市区町村の賢明な舵取りが望まれる。
 その第8期の最大の不確定要素は新型コロナウイルス感染症の蔓延である。昨年は2月以降、このパンデミックに振り回された1年であったが、残念ながら現段階で収束の見込みが立っていない。ある程度の長期戦を覚悟しなければならないだろう。
 欧米では新型コロナによる全死亡に対する介護施設での死亡の占める割合が高い。スウェーデンでは72%、スペインでは68%という高率である。WHO事務局長は、多くの国では死者の40%以上が長期介護施設であると注意喚起している。これに対し、日本では13%にとどまっている。わが国の介護施設は、施設内の感染防止について世界に誇るべき成果を上げているのだ。わが国の高齢者施設は、毎年インフルエンザ感染防止に追われ、努力してきたことが貢献していると思われる。今後ともこの成果を維持していくことが何よりも重要である。
4月からの介護報酬の改定は0.7%のプラス改定となった。介護保険制度の持続可能性を確保していくためには、介護サービスを支える人材を確保し、介護現場の生産性の向上を図っていかなければならない。また、コロナ禍で「見えてきた課題」の克服が重要課題となる。そのためには、介護報酬上の手当ては必要であり、今回のプラス改定は当然と言えよう。
 介護報酬を審議する介護給付費分科会は、今回改定の横断的テーマとして、感染症や災害への対応力強化、自立支援・重度化防止の推進、介護人材の確保・介護現場の革新、制度の安定性・持続可能性の確保を掲げてきた。4月からの新報酬においてはメリハリが効いて、真面目に取り組む事業者が報われる仕組みに向かうことを期待したい。
(続きは本誌で)
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