──そのなかで、昨今の調剤薬局の事業環境をどのようにみていますか。
佐藤 経営的にはかなり苦しい状況といわざるをえません。国が医療費抑制政策の一環として原則2年に1度実施している調剤報酬改定は、ほぼ毎回マイナス改定となっていますし、医薬品の公定価格・薬価も下がる一方で、経営を圧迫する要因となっています。
調剤薬局は全国に5万9,000店舗余りといわれており、現在も微増しています。1社で全国に1,000店舗以上、売上高2,000億円超という大手調剤チェーンがある一方で、地域には医療機関と一体となったいわゆる「門前薬局」があり、なかには1店舗のみという小規模薬局が多いのが現状です。地域に根付いた小規模薬局のなかには、患者さんの確保を門前の医療機関に頼っている場合もあります。
こうした状況に調剤薬局の経営者の方々は強い危機感を抱いています。そのなかで維持・成長を図っていくためには、多店舗展開による規模の拡大、もう1つは医療介護の流れに沿った事業の多角化という2つが考えられます。
多店化に関しては、調剤薬局は「医療機関の出店ありき」という事業上の特性がありますので、自分たちの都合だけで出店できない面があります。したがって、事業者としてより成長を図っていくには、本業とのシナジーが見込める「多角化」、なかでも国が目指す「かかりつけ薬局」「健康サポート薬局」の考えにも適う高齢者向け事業・サービスが有望といえるでしょう。
ご承知のとおり、各都道府県では2025年の医療需要を推計して地域医療構想が策定され、それに合わせて地域包括ケアシステムが組み立てられています。そうしたなか、そもそも地域に密着した調剤薬局には新たな役割が求められているのです。前述したように、周辺の医療機関や介護事業者と連携し、新たなサービスを面で展開するというものです(図表)。