大林組
IDEA|有効な戦略(テクノロジー)
大林組は、東京都心でのデータセンター(DC)開発事業に参入する。11月29日にDC事業子会社「MiTASUN」(ミタサン) を設立。ビル型DC「HUBWAY®(ハブウェイ)」の開発を進める。
開発するDCは、極めて遅延の小さい通信サービスを提供する形態。都心部はクラウドサービスやDXの高度化により需要が高まる一方、開発には用地取得難や建築費・設備導入費の高騰など課題が山積する。大林組は10年以上の周到な準備を重ね、「とくに都心オフィス集積地において需要が底堅いことを確認。十分コスト回収が可能な収益を確保できる」(MiTASUN 代表取締役社長の綱脇彰則氏)と判断した。
DCは品川区や中央区、江東区などを重点エリアに、半径約5km圏ごとにドミナント展開(受電容量約2~10MW/300~800ラック収容)を目指す。建物規模は1棟あたり延床面積5,000~1万5,000㎡。新築と既存築古ビル改修の両方で進める。1棟あたりの事業費(用地取得費を除く)は50~150億円を想定している。
開発時は、常に最新仕様のサーバーやIT 機器の導入を想定する。「IT 技術は日進月歩で、開発から1、2年で設備が陳腐化することも珍しくない。当社は短期間に近傍で開発を重ねるビジネスモデルであり、常に先端技術を搭載することでユーザーに対し高い安全性を担保できる」(取締役 副社長の中山聡氏)。
なお、「MiTASUNの設立は主体的な開発・運営行為を目的とする。そのため建設工事は大林組以外のゼネコンに発注する場合もある」(綱脇氏)とのこと。
開発物件のうち、旗艦物件や高スペックの物件は基本的にMiTASUNが保有する方針だが、適宜流動化も検討する。出口候補は現時点で未定。
初弾DCは港区三田に計画中で、2028年度中の竣工を予定している。受電容量は約5.5MW。品川~田町エリアをカバーする旗艦物件と位置付けている。なお、ユーザー候補としてクラウド事業者や国内大手企業、データセンター卸業者を想定する。
第二弾は中央区日本橋で約7MW規模の開発を控えており、2029年6月に竣工予定。以降は、「35年までに10棟前後を段階的な目標としている」(取締役 副社長の射場直也氏)。他社(DC事業者や不動産事業者)とも積極的に協業し、開発ペースを高める方針だ。
「DCは開発適地が変電所との位置関係や周辺地域の災害リスクなどに左右され、業界全体で供給の頭打ち感がある。当社のDC群を新たな情報インフラの基盤にできたら」と綱脇氏は抱負を語った。
(その他、2025年注目の強いプレーヤー・有望アセットタイプなど特集企画の詳細は本誌で)