有力事業者がみる不動産マーケット
福岡の不動産市況と投資の注目エリアについて、デベ・PM会社など地場プレーヤー4社に話を聞いた。
地場事業者ならではの「リアル」な市況感をお届けする。
[市況感]曇り
2024年4月時点で福岡市ビジネス地区の空室率は5.43% ( 三鬼商事調べ)、昨年より0.32%減少。賃料は前年水準を維持しています。当社の所有・管理物件については企業の旺盛な移転需要に支えられ高稼働を維持しており、24年に竣工した博多駅東のコネクトスクエア博多も竣工時点で9割を超える高い内定率となっています。今後は天神ビックバン、博多コネクティッドの大量供給により、一時的に需給のバランスが崩れマーケットが下落局面にシフトする可能性があります。
テナント企業側は、人材確保や執務環境の改善を目的とした前向きなオフィス移転が増えています。当社はそれらのニーズに応える差別化されたワークプレイスの供給とともに、国内外の他都市から福岡への企業誘致に積極的に取り組んでいます。
[注目エリア]天神
天神ビッグバンの開発物件が2026年にかけて複数竣工します。当社も同エリア内で2棟の新築物件の供給を予定しており、他社供給も含めた各物件のテナント誘致の進捗度合いが、今後の福岡オフィスマーケットの試金石となるものと考えます。
[市況感]晴れ
リテール市場は人流が戻り、出店意欲が回復、コロナ前水準に戻りました。天神のハイストリートでは空区画が解消。当社で管理する店舗ビルも稼働率97%超で好調です。賃料は1階では2.8万~10万円。空中階では1.5万~2.5万円。出店ニーズは高く、業種も飲食から美容、医療まで幅が広がっています。ただし高額賃料物件は、宝飾・時計ブランドの出店程度でその他の高級物販は回復していません。
賃貸住宅市場は、市中心部の新築物件が坪1万円レベル。ファミリー需要が高まってきており2~3LDKは品薄状態です。これをみてデベロッパーはファミリータイプの賃貸住宅開発に関心をもちはじめています。売買市場は土地代・建築費が高騰し収益物件も高値となり過ぎており若干停滞気味です。
[注目エリア]新天町商店街
大名の路面商業と天神のオフィスとをつなぐ好立地にあり、再開発計画の進展に引き続き注目しています。渋谷の宮下パークのように隣接する区画をつなぎ、回遊性を高め
ることができれば、大名~天神全体としての集積度が高まり、面的な活性化が期待できると考えています。
[市況感]晴れ
賃貸、売買ともに好調です。九州全域から継続的に人口が流入していること、さらに市が東アジアのビジネスハブ計画を進めていることなどから、若者層や大学生、あるいは外国人ワーカーや留学生のニーズが堅調です。足下をみると、市中心部では社宅ニーズが増え前年比10~20%増。管理・運営物件の稼働率は97.5%(2024年3月時点)。新築の管理物件の賃料は平均坪単価8,400円(前年同月比18%増)。
売買マーケットは新築・築浅のRCマンションに注目が集まり高値での取引がされています。新築は開発コストの高騰からデベロッパーが供給に及び腰となっており、極端に品薄です。市中心部を避けて美野島(博多区)や、地下鉄七隈線の延伸に伴い別府駅周辺や橋本駅周辺などより広域に開発機会を求める動きがみられます。
[注目エリア]大手門 ※マップ外
大濠公園と舞鶴公園、福岡家庭裁判所の跡地などを一体的に運用・再開発するセントラルパーク構想が進行中。家裁跡地では複数企業がホテルを含む複合ビルを開発する計画。近隣では複数の分譲マンションの建築が計画されており、今後数年でエリア全体の底上げが期待できそうです。
[市況感]晴れ
天神・博多エリアのオフィスビル需要は底堅いです。当社管理物件も平均稼働率96.6%と高稼働を維持。クラス別にみると、一部のS・Aクラスの新築ビルは、限られた大型床の需要と強気の賃料設定が足枷になり苦戦していますが、拡張や立地改善を目的とした前向きな移転需要が多い中、好立地の物件を中心に稼働率が改善してきています。B・Cクラスの中小ビルも稼働率・賃料ともに好調です。業績にかかわらず初期コストを抑えたい企業は存在し、そうした企業の間ではセットアップオフィスが人気です。賃料が坪1万円だった築古ビルがセットアップオフィス化で坪1.5 万~2万円まで上振れるケースもあります。また、新しい潮流としてハーフスケルトンやバルコニーの設置など、開放感により社員が出社したくなるようなオフィスも増えています。
[注目エリア]赤坂駅周辺
赤坂駅周辺は、天神に至近ながら既存のオフィス賃料は坪1.5 万円程度と割安感があり、中小企業が積極的に床を物色しています。福岡は元来支店経済であり30坪までの床ニーズが主力。同エリアにはリニューアル含みの築古ビルが多く、収益機会は大きいとみています。