キーワード検索

サイト内検索を閉じる

東京ガス「サステナブルスター」導入レポート

ESG業務の自動化、効率化を支援
AM会社をサステナブルに変革

菊地航平氏(東急不動産リート・マネジメント)(右) 新谷圭右氏(東京ガス)(左)

「サステナブルスター」は、東京ガスが開発・提供するESG関連報告業務のクラウドサービスである。30近くのAM会社に採用され、GRESBに対応した報告業務支援サービスとして国内トップシェアを誇る。
導入企業の1社である東急不動産リート・マネジメントに導入の背景や導入後の効果、また東京ガスにはサービスの特色や今後の展望を聞いた。

 

話し手:菊地航平氏(東急不動産リート・マネジメント)(右)
    新谷圭右氏(東京ガス)(左)

ESGのレポーティング業務
サステナブルな働き方を阻害

――サステナブルスター導入の背景を教えてください。
菊地 私は総合型私募REIT「ブローディア・プライベート投資法人(BPR)」の運用を担当しています。私募REITの数が急増するなか、投資家から選ばれ続けるためには物件の収益性だけでなく、ESG戦略も強化する必要があると考えています。投資家は、環境認証の取得はもちろん、そのスコアアップにつながる定量的かつ実測値に基づいた運用データを求めるようになってきました。
 しかし、GRESBなどが求めるデータの開示基準は、年々複雑化の一途をたどっています。これまでは社員がExcel をフル活用してデータを入力・整理、認証ごとのフォーマットに合わせて報告内容を“ 手作業” でカスタマイズしてきました。運用物件が100棟近くに迫り、アセットタイプも多様化すると、膨大な作業時間や入力データの正確性が懸念される事態となりました。つまりサステナビリティを推進する企業の働き方がサステナブルでないというわけです。こうした問題を解決する狙いもあり、サステナブルスターの導入を決めました。

 

新谷 さまざまなAM会社と面談するなか、ESGの重要性が年々高まると同時に、関連業務の負担が増しているとの声を聞いていました。GRESBの場合、物件ごとのエネルギー、GHG、水、廃棄物に関するデータの取得・集計が必要で、排出係数の設定や熱量換算、Scope1~3分類なども求められます。多くのAM会社は少人数体制であり、これら業務を十分にこなせる人的リソースを有していないでしょう。レポーティングが4~6月に集中することもマンパワーに負担をかけています。そうした事情がまさにサステナブルスターの開発を後押ししました。

Excel ライクな操作性にこだわり
PMにとっての使いやすさ意識

――サステナブルスターの導入効果を聞かせてください。
新谷 請求書に記載された電気・ガス・水道などの使用量データを入力するだけで、エネルギーシートやGHGシートを自動生成(排出係数設定、熱量換算、Scope1~3への分類)、Excel と比べて業務量を大幅削減できます[図表]。ユーザーの使いやすさにも徹底的にこだわり、GRESB ALDシートのExcelに極力近づけたUI(ユーザーインターフェース)を採用、直感的に使えます。併せて、PM会社にも入力しやすい簡易画面や、AI による請求書の自動読取機能も実装、入力・集計業務の負担を抜本的に省ける仕組みです。なかには業務量が1/10まで減らせたというユーザーの声もあります。
 更に、これまでデータを取ることが難しかった住宅専有部の電気・ガス使用量データを自動取得・入力できます。ガス使用量は首都圏で60~70%程度をカバー(東京ガスグループとの利用契約で供給されるデータ)、電気使用量は東京ガスグループの利用契約データ以外も全国でほぼ100%対応可能(「電力データ管理協会」保有データより抽出)です。これらのデータは、GRESB認証のデータカバレッジ向上とそれによるスコアアップにつながります。なかには、GRESBレーティングが前年から1ランク向上したというユーザーの声もあります。
 
菊地 入力画面がシンプルで、請求書さえあれば作業が可能というのは、従前の手間と比べれば雲泥の差です。GRESBのほか省エネ法など各条例対応を一元化できるのも便利です。クラウドサービスの特性を活かし、AMだけでなくPMの担当者も同じデータを参照できるため、課題点を容易に共有でき、設備の修繕・交換に関する定量的な効果やコストパフォーマンスをお互いに意識しながら運用に取組めています。結果として物件運用に携わる関係者のESGへの意識向上にも繋がっています。
 導入コストも手ごろです。それでいて導入時や導入後に東京ガスの手厚いサポートを受けられるのも魅力です。当社の場合、導入時にPM会社向けの説明会を開催いただきました。PM会社には専用の簡易入力画面が用意されており、20~30分ほどのレクチャーで使いこなせるようになりました。

図表 ESG報告(GRESB、省エネ法等)の流れと課題
図表 ESG報告(GRESB、省エネ法等)の流れと課題

本質的なESG戦略にシフト
GX・DXソリューションに邁進

――ESG関連の今後の取組み、重点施策を教えてください。
菊地
 サステナブルスターで節約できた時間を、物件のESGパフォーマンス向上に寄与する本質的な戦略立案に活かすことが次なる課題でしょう。テナントとも協業し、彼らにもメリットがある形で脱炭素化を推進していく考えです。また投資家とは、今後開示すべき情報の範囲と精度、タイムリーに情報を発信する手法について対話を深めていく方針です。
 BPRは2023年のGRESBリアルエステイト評価で3スターを取得しましたが、継続的にESGの取組みを推進することにより、ESG分野で私募REIT業界を引っ張る存在になることを目指します。
 
新谷 2050年目標のカーボンニュートラルに向け、ESGに関するさまざまな基準・制度が登場。ユーザーからはとくに、SBTi(Science Based Targets initiative )やCRREM(Carbon Risk Real Estate Monitor)、CDP、各社IR に対応したデータ管理・分析機能を求める声が強いことから、目下開発に力を入れています。テナントエンゲージメントの観点から、こうしたソリューションをオーナーやAM会社だけでなくテナントに向けて提供するのも面白そうです。
 東京ガスグループでは2023年から、GXやDXを取り入れたソリューションを「IGNITURE(イグニチャー)」という事業ブランドで展開しており、サステナブルスターもそのなかに位置付けられます。不動産業界に向けては、中央監視ソリューション「Joyシリーズ」や屋根に載せやすい軽量型太陽光PPA「ヒナタオソーラー」など、さまざまなソリューションを送り出していますのでぜひご期待ください。
 
――ありがとうございました。

登壇者

菊地航平氏
東急不動産リート・マネジメント
ブローディア運用本部 資産運用部 マネージャー
リース会社、AM会社、監査法人系FASを経て2023年に東急不動産リート・マネジメントに入社。当社入社前は再エネ事業ファンドのマネジメント業務やインフラ投資に関するアドバイザリー業務に従事。現在はBPRの運用業務に携わり、ESG戦略についても推進。
 
新谷圭右氏
東京ガス ソリューション共創本部 ソリューション事業推進部
脱炭素化支援事業グループ サステナブルスター事業責任者
三菱総合研究所に入社し、環境不動産に関する政策支援、ディベロッパー・インフラ会社等の不動産開発・エリアマネジメント支援に多数従事。2020年に東京ガスに入社し、新規事業開発部署にて0→1立上をリード、現在はサステナブルスターの事業責任者を務める。


東京ガス株式会社
ソリューション事業推進部 サステナブルスター担当窓口
sustainablestar@tokyo-gas.co.jp

月刊プロパティマネジメント
2024年7月号

月刊プロパティマネジメント 2024年7月号

定価:4,400円(本体4,000円)

年間定期購読料

最新号から

定価:49,500円(本体45,000円)[送料込]

年間定期購読料+PriMe(PDF配信)

最新号から

定価:75,900円(本体69,000円)[送料込]

関連リンク

ページトップ