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須賀勲氏[クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド]に聞く

ラグジュアリー市場の拡大が
不動産投資に“変革”を及ぼす

OVERVIEW

日本のラグジュアリー市場が活況を呈し、それに伴いプライムリテールやラグジュアリーホテル、高級レジデンスなど「高級不動産」への注目が増している。富裕層の消費ニーズの拡大、経営者や資産家層に消費意欲旺盛な若い世代の参入、インバウンド消費が急回復、などを背景に、行政府や地方自治体もそうした富裕層取り込みを後押ししている。

米国・中国を抜き
日本市場の成長性際立つ

日本のラグジュアリー市場が活況を呈している。それはデータにも如実に現れている。
図表は、ラグジュアリーブランドの2028年までの5年間の売上とその年平均成長率(CAGR)を国別に比較したものである。これをみると日本は、米国や中国に比べ規模の面で劣るものの、CAGRベースでは3.7%と群を抜く水準にある。
日本のラグジュアリー市場拡大に、欧米のハイブランドは熱い視線を送っている。これまで日本市場は長らく中間層向けのミドル価格帯のマーケットとされ、ルイ・ヴィトンやロレックスなど大手ブランドを除いて進出意欲はそれほど高くはなかった。だが、国内外の富裕層の消費ニーズが堅調に伸びていることを高く評価。モノ・サービス分野のあらゆるラグジュアリーブランドが日本へ関心を示すようになっている。

図表 Global Luxury Brands:地域別売上高予測
図表 Global Luxury Brands:地域別売上高予測

ホテルはSDGs重視の流れ強まる
異業種をタイアップした高級レジも

以下プライムリテール、ラグジュアリーホテル、高級レジデンスの3つのアセットについて注目すべきトピックや投資チャンスを紹介する。

プライムリテール
銀座や御堂筋、表参道など日本を代表するプライム商業立地は、ハイブランドの出店意欲が旺盛で、さながら陣取り合戦の様相を呈しており、すでに賃料はコロナ前の水準を上回り、銀座ではトップエンドで50万円/坪、御堂筋は同35万円/坪、表参道は同40万円/坪の水準となっている。注目すべき動きとして、ハイブランドが消費財の物販業態にとどまらず、コスメや飲食などの業態を多角的に展開しはじめている。顧客のライフスタイル全般をブランドのもつ“ 世界観” で多角的にカバーしようとする動きである。
また、ハイブランド自らが好立地の店舗物件を取得するケースも増えてきている。すでにLVMH系列の投資会社、LCatterton Real Estate はGINZA SIX持分を取得済みであるほか、東急百貨店本店の再開発に参画することも明らかとなった。プライム商業立地における新たな“ 買い手” として注目を集めそうである。

ラグジュアリーホテル
これまで日本では、ほとんど進出事例がなかったトップラグジュアリーの進出が目立っている。「ブルガリホテル東京」や「シックスセンシズ京都」などがその代表例である。2028年竣工のTorch Tower(トーチタワー)には「ドーチェスター・コレクション」が出店することが決定している。これらトップラグジュアリーはリゾート地への進出を模索しており、ニセコや沖縄(島しょ部を含む)にも進出する可能性は十分にある。
ホテル業界はエンドニーズの趣味・趣向の多様化でブランドの細分化が進んでいる。とくにラグジュアリーホテルの分野では世界的なSDGsシフトのなか、サスティナビリティの考え方を基に、ライフスタイルそのものを提案するブランドが勢力を伸ばしている。IHG傘下のSix Senses(シックスセンシズ)はその代表例といえる。投資・開発サイドはこれらブランドが掲げるポリシーと、立地のもつ特性、地域文化を融合させ、独自の世界観を表現することが強く求められるだろう。

高級レジデンス
東京「麻布台ヒルズレジデンス」はグロス価格/坪単価ともに、これまで日本では考えられなかったような価格水準を実現している。
大阪では三越大阪店の再開発の一角である「The Kitahama」の最上階約330㎡の1室が5億8,000万円で分譲。これは西日本の分譲事例で過去最高値となる。ニセコでは海外勢や独立系を中心に高額レジデンス・コンドミニアムが次々と開発されている。いまプライムリテールで起きている現象と同様に、これからはアパレルや物販、ホテルなど、富裕層を中心に支持される消費財ブランドが、高級レジデンス(ブランデットレジデンス)分野に参入する事例が増えてくるものと予測される。スポーツカーメーカーのアストンマーティンがブランドの名称・世界観を冠したレジデンスを開発するなど多様な事例もある。

ラグジュアリー市場
不動産投資・開発におけるインパクト

最後に、ラグジュアリーブランドが不動産投資・開発に及ぼす影響について触れておきたい。ブランド価値とは、そのブランドが数十年~数百年にわたり積み上げてきた付加価値の集積であり、その歴史・重みがあるからこそ多くの人々が憧れる存在となっている。
シャネルやグッチのカフェ・レストラン、ブルガリのホテルとなれば単価が数倍から数十倍になることは見ての通りである。その意味で、ミドル価格帯までの平均的なテナントの営業利益率を基に、坪いくらの世界で収益性を計算してきた不動産投資業界にはパラダイムシフト的な衝撃を与え得る。行き詰まり感ある市場の突破口ともなるはずだ。

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