ヒトカラメディア|デベロップデザイン事業
【SPECIAL REPORT】
高騰した建築費をカバーする収益をどう作り出すか、多様化した入居者ニーズに応える魅力・コンテンツをどう発掘・付与するか。不動産オーナー・デベロッパーの知恵と発想力の見せ所のはずだが、企画・開発に携わる実務担当者にとって最も頭を悩ませる部分でもある。
ヒトカラメディアのデベロップデザイン事業は、そんな彼らの救世主となるかもしれない。
「デベロップデザイン事業(DD事業)」は、不動産コンサルティングのヒトカラメディアが展開する、不動産オーナー・デベロッパー向けのプロジェクト支援サービス。オフィス機能を中心とする新規開発/既存建物再生事業を支援している。企画提案・プロデュースの企業は多く存在するが、DD事業はそれらと一線を画す2つの特色をもつ。
1つ目は事業の全工程をトータルに支援できること。コンセプトの設定から事業の計画立案、設計、施工、ブランディング、リーシング、PM、コミュニティ運営までを一気通貫でカバーしている。これにより、事業主が複数の業者に業務発注・コントロールする手間が省けるうえ、プロジェクトが「コンセプト・理念」と「実体的な運営」の双方をズレなく見据えたものとなり、その実効性が高まる。「事業としての “ 確からしさ” をクリアしつつ、顧客の潜在需要に叶うプランを提示できる」(代表取締役の高井淳一郎氏)。
2つ目はリーシング精度の高さ。その裏付けはテナントニーズの把握力にある。ヒトカラメディアは2013年の設立以来、スタートアップ・ベンチャー企業向けのオフィス仲介、そこから派生したオフィス空間の設計・施工を手がけており、テナントから寄せられる生の声を聞き続けてきた。「どんなオフィス企画が刺さるのか的確に見抜くことができる」(同氏)。ちなみに同社がオフィス移転で関わってきたテナント企業数は累計3,000以上におよぶという。
DD事業に対する関心は、とくに大手デベロッパーや鉄道会社の間で高く、多くの相談が寄せられているようだ。「用地不足や建築費高騰で大型の新規開発がむずかしくなり、中小型の新規開発や既存物件の再生に各企業がシフトしはじめてきた。限られた建物規模のもとで差別化を図ろうにも、各企業の縦割り的組織では構造的なむずかしさがある。それが当社にアイデアを求める大きな理由になっているのでは」と同氏は話す。
図表 デベロップデザイン事業のサービスフロー
DD事業の具体的なプロジェクト事例を3つ紹介していこう。
京王電鉄を開発主体とする商業とオフィスの複合施設「ミカン下北」(東京・下北沢)では、ワークプレイス「SYCL by KEIO(サイクルバイケイオウ)」の企画から運営を担当。下北沢駅前という商業向きとされる立地にオフィス機能を備え、商業・オフィスの両テナントおよび地域の間でコラボレーションを引き起こすことを目指す企画とした。テナント区画は満室稼働しており、賃料も周辺相場を上回っている。
コラボレーションに関しては、オープン以降定期的にイベントやインキュベーションプログラムを実施。さらなる試みとして、京王電鉄と共同でオープンイノベーションプログラムをスタートしている。「同社が目指す沿線活性化にコミットすべく、不動産の枠を飛び越えた新規事業創造の支援も行っている」(プロジェクトデザイン事業部 事業部長の柳川雄飛氏)。
日鉄興和不動産が保有する「WAW赤坂第35興和ビル」(東京・赤坂)では、3フロアをマスターリースのうえ、シェアオフィスの企画から運営を担当。テナント/オーナー双方にコストパフォーマンスで訴求するプランを提案した。テナントに対しては共用ラウンジやテラス、専有会議室、フォンブースを確保したほか、周辺相場の徹底調査による適正な水準かつ水光熱費オールインクルーシブの賃料、敷金礼金ゼロの条件で募集をかけた。オーナーに対しては2年弱での投資回収を念頭に、専有会議室の設置で元の間仕切りを流用するなど投資額の抑制に努めた。
駅から若干離れた立地にもかかわらず、申し込みベースではほぼ満床を実現。当初は2フロアの企画だったが、リーシングの好調ぶりから1フロア拡張することとなった。
東京建物と鹿島建設が保有する「和幸ビル」(東京・六本木)をリノベーションした、オフィスとワークラウンジ、カフェ&ミュージックバーラウンジからなる複合施設「Kant.(カント)」では、オフィスとワークラウンジ部分の企画から運営を担当。空間カスタマイズの支援を盛り込んだハーフセットアップオフィスの設置や、広大なラウンジを複数企業で共用するコミュニティ型シェアオフィスの企画を実施。おおむね狙い通りの賃料設定を実現している。
「赤坂と六本木のプロジェクトについては、再開発の種地にある築古ビルを有効活用すると同時に、賃貸オフィスの新たな事業モデルを探ろうというデベロッパー側の意向があった」(オフィスマネジメント事業部 事業部長の竹林孝文氏)。
ヒトカラメディアでは狙いたい顧客層として、デベロッパーや鉄道会社のように、ある程度の物件数や資金力があってリスクを取りやすいプレーヤーを挙げる。時間を要する入居者同士/地域とのコミュニティ形成に力を入れている点を考えれば、物件を中長期で保有し続けるスタンスのプレーヤーの方が自社の強みを発揮しやすいとする。「今後は自社ビルを保有する事業会社に対する有効活用の提案を仕掛けていきたい」(高井氏)。
対応可能な面積規模は300~2,000坪、エリアは都内を中心に地方主要都市にも対応する。
「“ 何か面白いことをしたい” みたいなざっくりした要望であってもコンセプトメイクをお手伝いできる。また行き詰ったプロジェクトにレスキュー的に参画することも可能。オフィスが絡んだ不動産プロジェクトを検討していれば、必ずお役に立てるはず」と三氏は語っている。