有力事業者がみる不動産マーケット
熊本の不動産市況と投資の注目エリアについて、地場プレーヤーに話を聞いた。
地場事業者ならではの「リアル」な声をお届けする。
賃貸住宅市況は前年同様に好調です。引き続きTSMCの工場建設に伴う工事業者の入居ニーズが旺盛で、工場周辺エリアでの稼働率は約98%。市中心部での稼働率は約93%。賃料は28~30m2の単身者向け1Rで5万円/月、40~45m2のコンパクトタイプで6万5,000円~7万円/月の水準です。この状況は工場稼働後(2024年)も継続するとみています。同社取引先や流通事業者からの引き合いが見込めるからです。
売買マーケットは活発です。市内の築浅で数億円規模の物件は表面5%台後半、菊陽町や大津町の物件は表面6%で取引されています。
[注目エリア]水前駅公園周辺
水道町やJR熊本駅など市中心部へのアクセスが良好で住環境に優れたエリアに強いニーズがあります。ここ5年では賃貸マンションが約32棟新規に開発・供給されました。九品寺や大江エリアと並び市場は強含みで推移するとみてまず間違いはないでしょう。
取材対応者:明和不動産 取締役 管理部長 横井一臣氏
賃貸住宅市況は回復基調ですが、一部に足踏みがみられる状態です。例えば市中心部、単身者向けの稼働率は当社管理・運営物件で94%(2023年3月末時点)と前年並み。賃料は6万円弱/月で弱含みです。これは主要入居者の法人、留学生、飲食店就業者などの戻りの遅れが要因です。とはいえ今年春からの足元回復は鮮明に表れてきており、この先上振れには十分期待できそうです。なお、TSMC(台湾の半導体受託生産大手)が工場を構える菊陽町エリアの稼働率は98%とほぼ満室稼働。賃料は単身者向け(1LDK)で6万8,000円/ 月、この1年半で8~10%の上昇をみせています。
売買市場はおおむね活況。中古戸建て及びマンション購入者からの底堅いニーズにTSMC周辺の購入ニーズを受け、2023年3月期の仲介取り扱い実績は件数ベースで前年比20%増となりました。
[注目エリア]新町駅周辺
震災後に賃貸マンションが数多く供給され、コロナ禍などで稼働率・賃料ともに低迷が続いています。しかし熊本駅や辛島町に近く利便性に優れるほか、社宅やTSMC関連のニーズも見込めることから、賃貸・売買の両面で今後見直しが進みそうです。
取材対応者:コスギ不動産 取締役 小杉竜三氏