――estie
日本国内最大級の商業用不動産データ分析基盤「estie マーケット調査」を提供するestieがサービス領域を拡大している。この10月に「estie 物件売買」の提供をスタートし、賃貸から売買へ情報提供のカバー領域を大きく広げた。加えて、不動産取引の案件管理をDXで効率化する「estie 案件管理」をリリース、サポート範囲を情報提供から業務管理へと拡張。なお、現在「estie 案件管理」は無償での提供を行っている。
「estie 案件管理」は、広範かつ詳細なマーケットデータの取得を支援する「estie マーケット調査」や「estie 物件売買」とは異なり、案件検討における一連の業務そのものを効率化するサービスだ[図表]。それぞれのサービスを組み合わせることで、ソーシングにかかる情報収集や分析と案件管理までのワークフローを滑らかに連携、業務効率化へのより高い効果が期待できる。
このサービスの開発は、estieとして顧客(デベロッパー、AM会社、投資家、レンダー、売買仲介など)ニーズの高さを感じたことが背景にある。
「日頃サービスを利用されているお客様から『入手した案件情報を、その都度手入力で表計算ソフトなどに登録するのは非効率。何とかして欲しい』とのご要望が増え、当社の既存サービス領域から一歩踏み込んだソリューションを提供するに至りました」(ソリューション営業 宮内亮輔氏)。
「estie 案件管理」でできることと、特色は、大きく3つある。
1つめは、案件情報を自動登録できることだ。売主/仲介会社などから入手した案件情報データ(建物名称、所在地、竣工年、価格、利回り、土地/延床面積、所有者情報など)を、物件概要書のPDFをアップロードするだけで登録、リスト化する機能を備えている。これまで手作業で入力してきた案件情報の登録にかかる工数と時間を大幅に削減することが可能になる。
2つめは、物件データと地図データの連携により一元的に情報管理できることである(画像参照)。システム画面に表示されるマップには過去に登録した物件がすべて表示され、さらに任意の物件をクリックすれば即座に詳細情報ページに飛ぶことが可能。これにより、案件情報の確認に要する業務スピードが格段に向上することになる。あわせて、マップ上にはJ-REITの保有・取引物件の各種データも搭載。こちらもクリック一つで取引価格やキャップレートなど詳細情報を確認できる仕組みとなっている。
3つめは、物件情報をリスト管理できることである。登録案件を一覧で表示、各案件の概要情報を参照・比較することが可能になる。案件の検討ステータスを未検討/検討中/棄却などに分けて表示することで、タイムリーな社内での情報共有・案件検討を容易に実現。あるいはリスト管理機能を用いた分析で、「〇× 仲介からの情報は成約率が高い、〇△信託からは大型ビルが中心で中小ビルはほとんど紹介がない」といった具合に、自社独自の入手ソース/ノウハウをブラッシュアップした案件データベースを作成するという使い方もできる。
このほか、使いやすいユーザーインターフェース(UI )による操作感が魅力だ。簡潔に整理されたリスト表示、物件詳細の画面に加え、スクロールの滑らかさ、クリックしたあとの表示の迅速性にこだわり、ストレス感のないスピーディーな操作が可能となっている。
「estie 案件管理のポテンシャルを最大限に活かすポイントは、寄せられる案件情報をもれなく登録していくことにあります。物件の詳細情報ページへ、調査時の賃料情報や棄却事由などをメモしておけば、さらにデータの利用価値は高まります。お客様がこのサービスを使い込んで頂くほどに、他社の一歩先を行く投資/売買関連業務の強化につながるものと考えています」(宮内氏)。
現在、estie 案件管理は無償で利用可能(契約期間は12か月)となっており、ユーザーにとっては大きな魅力だろう。また、同時アカウント接続数の制限はなく、社内の各ユーザーは業務に必要なタイミングでサービスの利活用ができる。もちろん、「estie マーケット調査」や「estie 物件売買」の契約ユーザーでなくとも単体で利用可能である。
「これまでestie のサービスに触れたことのないお客様にも、これを機にその有用性を実感していただきたい」(宮内氏)。
estie マーケット調査、estie 物件売買、estie 案件管理の3つが揃うことによってestieは、不動産取引の入口(取得)から出口(売却)までの案件発掘、投資検討、案件管理という一連の業務をワンストップで支援できる体制が整ったことになる。ユーザーである投資家・オーナーなどにとっては、投資検討から具体的な案件管理までのすべてをestie のプラットフォームで完結できることになった。その上でestie は今後、さらなるサービスの拡大も目指している。そのひとつがカバーするアセットタイプの順次拡大である。estie マーケット調査はオフィス領域に注力したサービスであったが、estie 案件管理についてはあらゆるアセットタイプに対応。加えて、estie 物件売買でもオフィスだけでなく住宅データへ対象範囲を拡げている。今後、さらに他のアセットタイプを対象とした新規サービスの提供も計画しているとのこと。
「これからも不動産に関するあらゆるデータを蓄積・整備し、さらなるサービス開発を進めていきます。estie として各種ソリューションを普及させ、将来的には業界全体を支えるインフラとなることで、不動産市場の拡大・活性化に貢献できるよう努めます」と宮内氏は意気込みを語る。