――ASAレポーティングプロフェッショナル
PM会社は慢性的な人手不足である。
とくにミドル・バックオフィスでは深刻で、顧客AMに提出する月次レポート作成に手こずり、入力データの精度も低下、PMだけでなく顧客AMにとっても大きな悩みの種となっている。
その対応策として、このほど青山綜合会計事務所グループ(ASAグループ)では「PM業務サポート」をはじめた。
「PM業務サポート」は、PMがAMに提出するPMレポートや、賃料収入、費用支払情報の会計ソフトへの記帳をASAグループでレポーティング業務[図表]を担うASAレポーティングプロフェッショナル (ASARP)社が代行して作成するというもの。
ASAは不動産ファンドのSPC管理、会計(アカウンティング)業務を専門に手がける会計事務所として20年以上にわたりAM、PMが作成したレポートの橋渡し役を担ってきた老舗である。したがってASARPのサービスは、単に作業を肩代わりするだけでなく、精度が高いレポート作成が特長。事業規模10~15人の中堅PMや、PM事業に新規参入した企業にとってきわめて恩恵が大きいサービスと言えるだろう。
「AM会社とPM会社の間に立つ会計業務のプロとして、レポート様式の整理・統一化や、会計記帳の自動化で、決算業務を効率化することが関係者全員のメリットになると考えた」とASARP取締役COO 安藤宏一氏は、サービス開始の理由を話す。
サービス活用のメリットは大きく3つある。一つめはレポーティング作業の負担削減である。人的リソースを本業(フロント業務)に集中できれば、業績拡大や競争力向上も期待できるだろう。
二つめは精度の向上だ。収益や費用項目の会計的な判断や記述、記載様式など、SPC管理・会計に専門性をもつASAグループによる正確でスピーディーなレポート作成が可能となる。
三つめは多言語対応だ。海外投資家向けの外国語レポートの作成や、対応する会計事務所が少ない「Yardi」や「MRI」など、海外の主要管理・会計ソフトにも全対応する。
加えてASARPでは、サービス提供に合わせて、事務方の業務マニュアルの再整備、業務効率化に役立つシステム・サービスの導入提案にも対応できる。
サービス開始に必要な手続きは業務範囲の決定と業務内容の引継ぎ。最短1か月で開始することが可能だ。
対象の資産タイプは現在のところ、賃貸マンション、オフィスビル、物流施設の3つだが、今後は商業施設、宿泊施設、ヘルスケア施設などにも順次対応する方針としている。なお対応エリアは全国となる。業務は原則リモート対応だが、組織における情報セキュリティを管理するISMSを取得するなどセキュリティにも細心の注意を払う。
レポートの納期は、建物タイプや規模によるが、例えば賃貸マンション(40戸)10棟からなるポートフォリオの場合、最短で発注から2営業日内での納品が可能である。
費用は、1物件あたり2万円からとなる。レポーティングにかかる業務全般の代行、会計・数字面の見直し、ソフトウェアへの入力代行など業務の一部分でも対応可能としている。
サービス開始から間もないが複数のPM会社と業務委託契約を締結済み。投資熱が高まり受託数を伸ばす住居系PM会社からの依頼が先行している。契約企業からは人員体制はそのままに、当初想定の2倍量のPM受託が可能になったとの声も届いている。
次なる戦略として、ASAグループでは、PMレポートの情報を最終的な投資家へのレポートへ橋渡しするSDG(Smart Data Guideway) 計画を推進中[図表]。2024年12月までの完成を目指している。これはファンドやSPCの投資家に必要な会計情報と、PMレポートのデータを、SDGのもとで一元管理するもの。ひな形の設定で、さまざまなレポートを半自動的に排出できるようになる。
PMレポート作成から投資家に有用な会計情報の納品まで、1営業日内で完遂できる仕組みを整える。
SDGは直接的な顧客でなくとも、さまざまなPM会社が活用できる共通のプラットフォームとして育成する方針。PM業務の効率化とサービスレベルの向上を支援することで、「不動産金融マーケットの拡大、発展に貢献していきたい」と安藤氏は話した。