顧客情報の収集・管理によるマーケティングの充実に向けフロント管理システムと独自開発アプリを連動
[ゴルフ練習場/ Renewal Report]
<前略>
24年9月1日、同施設は約2か月間のリニューアル期間を経てグランドオープンを迎えた。リニューアルの内容はフロントから打席周り、フェアウェイをすべて刷新、クラブハウスのリノベーション、工房の新設、既存のトイレの撤去・広めのトイレの新設など施設全体に及んだ。施工はアイリスソーコー㈱。
1階20打席には弾道計測シミュレーター「トップトレーサー・レンジ」を、2階20打席には「トップトレーサー・レンジモバイル」をそれぞれ導入するとともに、スマホ画面とは別に独自に屋外用のモニターを設置、大画面で画像を確認できる環境を整備した。これは「トップトレーサー・レンジモバイル」の価値はスクール事業でこそ最大限発揮できるとの考えに基づきその活用を図ったものだ。
ウィルトラスト代表取締役の礒﨑博文氏は、「当施設のM&A時点での課題は施設力が脆弱にもかかわらず高めの価格設定がなされている点でした。そこでまずは価格を下げ集客に取り組んできたわけですが、今回のリニューアルで施設力が大きくレベルアップしました」と語る。
実はリニューアルに先立つ24年2月、同施設ではフロント管理システムとして「ZENTESType-Q」を導入している。リニューアル関連投資総額約9000万円のうち、約1500万円は同システムの導入関連費用だ。
その理由としては、マーケティング戦略の構築と実行にはデータによる顧客管理が必須であるのに対し、M&A以前は紙ベースのアナログ運営により実現できていなかったこと、今回の大規模リニューアルを利用者に確実に告知するためにも事前の会員管理が必須であったこと、そして「ZENTESType-Q」とウィルトラストが開発したゴルフ練習場専用販売促進ツール「ゴルフレンジアプリ」との大きなシナジーが期待されたことが挙げられる。
ゴルフレンジアプリとは、ICカードやQRコード等のシステムを導入済のゴルフ練習場向けに開発されたもので、会員のスマホにインストールしてもらうことで、既存システムで取得した顧客行動データの一元管理、分析、課題抽出、行動属性に応じたメッセージ配信などの施策がワンストップで可能となる。同施設は「ZENTESType-Q」「ゴルフレンジアプリ」の連動1号店で、この2月からはPETカードを廃止、QRコードはアプリ上での表示に一本化している。そのためユーザーは受付・チャージなどの際に必ずアプリを開くことになり、顧客行動データの収集がより確実になるとともに、マーケティング施策の可能性もより幅広いものとなるメリットがある。
現在の会員数は約4300人、月250〜300人の新規会員獲得が続いている。コア層は40歳代・50歳代の男性で、女性比率は10%程度。M&A以前は約2万4000人だった年間来場者数は、昨年のリニューアル直前までに約3万4000人に伸び、今期は5万人を想定している。
それに伴い売上げもリニューアル前の年間約2800万円を今期は大幅に拡大する計画だ。それを支えるのが、リニューアル効果が大きい打席事業・スクール事業に加え、工房事業とショップ事業だ。工房はこの春から稼動予定であり、ショップは県内で唯一となる最新の「おしゃれで普段使いしたくなるような」(礒﨑氏)ストリートゴルフアパレルを取り扱う。これらの4本柱で、リニューアル初年度は8000万円、ゆくゆくは1億円を目指す。1打席当たりで見るとこの数字は国内トップクラスだ。
<続きは本誌にて>