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豊富なデータと全国規模のネットワークを活用し飲食店とデベロッパーとの架け橋を構築

ぐるなび

[VIEWS②|プロデュース・運営企業の発想]

小規模店にもチャレンジの場を提供

 約7万3000店舗が加盟する飲食店情報サイト「楽天ぐるなび」をはじめとした〝食〞の情報発信を中心に飲食店のサポート事業を展開する㈱ぐるなび。2020年にはコンセプト設計から運営まで総合プロデュースする店舗開発事業「GURUNAVIFOODHALLWYE」をスタートさせ、現在では全国に9物件を展開する。

 情報企業がリアルな店舗開発に参入したきっかけは、同社代表取締役社長杉原章郎氏が19年の社長就任時に行なった全国の加盟飲食店への訪問だ。そこで共通の課題として浮かび上がったのが、小規模店舗が多店舗展開するハードルの高さだった。店の味として提供できる技術をもつ人材確保のむずかしさや、初期コストといった資金面での不安から、新店舗開発をあきらめる店が少なくなかったという。

 かたや商業施設からはECの台頭により新たな施設の魅力価値向上が急務となっていた。差別化を図りたいものの、出店の実績がない小規模店は知名度や与信力への不安が拭いきれず、ナショナルチェーンを中心としたテナント誘致に頼らざるをえない状況であった。

 そこで飲食店と不動産、どちらともつながりがあり、上場企業として与信力もあった同社は、両者をつなぐ新規事業として20年4月にイノベーション事業部を設立、店舗開発事業に参画した。

 はじめに開発したのが「フードホール形式」だ。商業施設などにぐるなびがテナントとして出店し、冷蔵庫やガスコンロ、水回りや、椅子、テーブルといった主なハード設備をぐるなびが用意。そこに飲食店がサブリース契約で入る仕組みである。新店立ち上げの初期投資を最大限に抑え、出店のハードルを下げている。その第1号店となったのが複合施設「センテラス天文館」(鹿児島県鹿児島市)内に22年4月にオープンした「ぐるなびDiningPark鹿児島」だ。開業時には商業施設初出店となる県内の飲食テナントを3店舗、うち2店舗は新業態として出店。飲食店のチャレンジの場となるほか、ほかにはないテナントとして施設の魅力向上にも貢献してきている。

メニューの引き出しは800以上!ニーズの変化に柔軟に対応

 3店舗めの「GURUNAVIFOODHALLWYE天空橋」(東京都大田区)では、新たな出店形態として「コンセプト店舗形式」を開発。ぐるなびが構えた1つの店舗で、全国の飲食店から提供されたメニューを再現し提供する形式だ。同社は全国に営業担当を派遣しているため地場の飲食店と密な関係をもつ。そのため全国の飲食店から挑戦したいという声が集まりやすいという。

 飲食店にとっては人材や仕入先の確保の手間が省け、知らない土地でも少ないリスクでチャレンジが可能だ。一方で施設の立場では、普段目にすることのない店のメニューや、遠方の人気店と同じメニューが食べられることが来店動機につながるとして、近隣施設との差別化となり集客やにぎわいが期待できる。

 さらに同社の情報サイト「楽天ぐるなび」から得られるビッグデータを利用し、客層に応じたオリジナルメニュー開発にも取り組む。同社では独自のアルゴリズムの予測技術を使ってトレンド予測やメニューの分析を行なっており、半年後に流行すると予測した商品を店舗で提供するなど、情報企業ならではのメニュー展開も行なっている。

 加盟店メニューとオリジナルメニューの双方によるバリエーションは、地方と都市、曜日、時間帯で異なるターゲットそれぞれのニーズに対応する場合にも有効だ。たとえば子ども向けテナントやカルチャーセンターが同施設内に出店している「GURUNAVIFOODHALLWYEヒタチエ」(茨城県日立市)の場合、週末はファミリー層が多く、ちょっとしたお出かけ先として利用されている。一方で平日は買物客も含め年配の主婦層や、ランチの時間帯に来店する近隣のワーカー層が多く、比較的日常的なメニューが求められる。客層や価格帯が変化する店舗だが、同社はメニューの引き出しの豊富さで対応している。

 また調理方法もマニュアル化し、場所、技術の関係なく即座に提供が可能。トレンドの移り変わりが早く、SNSを通じて個人の好みも細分化されるいま、メニューの変更がスムーズに行なえることも大きな強みだ。「特に店舗の絶対数が少ない地方では、食事の変化がお客様の中で大きな楽しみになります。現在800を超えるメニューストックがありますので、地場の営業担当と打ち合わせしてその土地に合ったメニューを選別し、定期的に変えています」とは㈱ぐるなびイノベーション事業部店舗開発部副部長小田朋実氏。

立地に合わせた店づくりでエリア・施設の魅力を向上

 出店形式は2種類だが、エリア、ターゲットによって、店舗のつくり方は変えている。「GURUNAVIFOODHALLWYE富山」(富山県富山市)は・・・<続きは本誌にて>

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