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川名結有氏[ニフティライフスタイル㈱ 事業本部 第1サービスビジネス部 ニフティ温泉 編集長]

人気続くサウナだけでなく、
お風呂、岩盤浴、休憩スペースにも長居したくなるポイントあり

[INTERVIEW]

美容系アイテムで女性に訴求
アトラクション型岩盤浴も登場

――まず、2024年の温浴マーケットをどうみられていますか。

川名 温浴施設の入館者数については、コロナ禍以前の水準にまでに回復したという声が多くの施設から聞かれます。コロナ禍前を上回ったという施設もみられます。
客層としては、サウナ利用が目的の若年層がふえているようです。一方でシニア層が減ったという話はあまり聞かないので、サウナブームで若い層がふえたぶん、入館者数が底上げされている印象です。
光熱費上昇などへの対応で値上げに踏み切った施設も少なくないですが、それにより来館者数が大きく減ったという声は目立っていません。ニフティ温泉でのユーザーアンケートでは、約3000人の回答のうち「値上げが受け入れられる」が約4割、サービス改善などがあれば「条件付きで受け入れられる」が約5割でした。施設運営コスト上昇を認識しているユーザーが多く、施設内容のバージョンアップなどが伴えばほとんどの層が値上げを許容できるという結果でした。

――ユーザーニーズとして特徴的な変化はありますか。

川名 やはりサウナブームの浸透は大きいですね。アイドル的とすらいえるような人気熱波師も登場し、有名な熱波師のアウフグースを体験するために施設を訪れるユーザーがふえています。
アウフグースに力を入れている施設としては、10年より「熱波甲子園」を主催する「ファンタジーサウナ&スパおふろの国」(横浜市鶴見区)や約70人が同時入室可能な大型サウナ「SaunaTheaterNAGOYA」を有する「サウナ&カプセルホテルウェルビー栄」(名古屋市中区)があげられます。熱波師によるエンタメ性の高いイベントを開催する、というのが人気の鍵になっています。
サウナ飯も引き続き注目度が高いですね。以前はお風呂上りには蕎麦などのさっぱりした飲食が定番でしたが、INTERVIEW現在は人気施設「スパメッツァおおたか竜泉寺の湯」(千葉県流山市)で提供される「石焼ガーリックライス」のように、いわゆる“ガッツリ系”や辛いメニューを提供する施設がふえました。

――サウナが人気を集める一方で、お風呂での新しいアイテムや機能はいかがでしょうか。

川名 お風呂にクレイ(泥)パックをおき、パックをした状態で入浴できるサービスを実施しているケースがふえています。24年3月にオープンした「横浜青葉温泉喜楽里別邸」(横浜市青葉区)の女性エリアでは、クレイパックをしたまま寝湯に入れるのが評判になっています。成分にこだわった天然泥を使用したり、水素水やハチミツ入りの泥などでオリジナリティを出したり、浴槽の種類に加えてこうした美容系アイテム付加による差別化が進んでいるようです。
女性向けにドライヤーやシャワーヘッドに気を配る施設もふえています。ドライヤーでは、最近リニューアルあるいは新規オープンした施設の多くが「ReFa」を導入していますね。シャワーヘッド利用だけを目的に来館するということは少ないかもしれませんが、ニフティ温泉でも「アメニティにReFaがあってうれしかった」というような口コミを見かけます。また、温浴施設で使用したことが製品の購買につながるケースもみられます。
ReFaだけでなく「ダイソン」や「KINUJO」などのドライヤーを取り揃えて自由に試せるような施設もあります。美容系アイテムの活用は女性人気を獲得する施策として広まってきているようです。

――女性向けというと、現在も岩盤浴は根強い人気だと聞きます。

川名 サウナブームで岩盤浴からサウナに移行したユーザーも一部いるようですが、岩盤浴自体は引き続き人気です。ニフティ温泉でのアンケートでも女性ユーザーの7割以上が「岩盤浴が好き」と回答していました。
最近は「アトラクション型岩盤浴」も登場しています。ただ入るだけではなく、プロジェクションマッピングが流れたり、ナノミストスチームが出たりといった岩盤浴です。23年10月開業の「愛子天空の湯そよぎの杜」(仙台市青葉区)は特に力を入れている施設で、ナノミストとアート作品を組み合わせた、光と水のアート岩盤浴を提供しています。サウナで人気のロウリュが体験できる岩盤浴も登場しています。
ほかにも「横浜青葉温泉喜楽里別邸」では岩盤浴でナノミストアトラクションを実施していますし、24年3月に開業した「よみうりランド眺望温泉花景の湯」(東京都稲城市)もナノミスト岩盤浴を導入しています。

休憩スペースの充実では
パーソナルスペース確保が鍵

――ニフティ温泉からみる、人気施設や長居したくなる施設のポイントとは。

川名 アクセス数、ユーザー投票数、高評価口コミ数などをもとにした「ニフティ温泉年間ランキング」[別表]で5年連続ランキング1位の「美楽温泉SPA-HERBS」(さいたま市北区)はお風呂や岩盤浴でほかにはないようなコンテンツを配すだけでなく、休憩エリアやレストランなども含めた施設全体として充実している点がユーザーから支持を得ています。ユーザーが選ぶ理由が「こういうお風呂があるから」から「風呂から上がってからも楽しめるから」に変わってきているといえます。こうしたニーズに応えられる「進化系スーパー銭湯」が長居したくなる施設でしょう。

<続きは本誌にて>

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