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アウトドア市場の変化に対応した
事業戦略の再構築を

【OVERVIEW】

2010年代後半から兆しをみせ コロナ禍で一気にブームが加速

 コロナ禍では多くの国々でキャンプブームが起こった。車を使えばドアツードアで移動でき、3密を避けられて開放感が味わえるキャンプは、閉塞感に包まれたコロナ禍のなか、ストレスを解消できる数少ないレジャーということで日本でも人気を集めた。

 しかし、いきなりブームを迎えたわけではない。1990年代に団塊ファミリーが巻き起こした第1次キャンプブームが去り、厳しい状況に置かれたキャンプ場だったが、それでもフレキシブルな宿泊施設を整備するなどして集客する施設も少なからず存在した。2010年代に入ると、そうしたキャンプ場などに団塊ジュニアが戻りはじめ、2013年にはキャンプ人口は増加に転じる。キャンプ経験者の団塊ジュニアが家庭をもち、ファミリーレジャーとしてキャンプを再評価したのだろう。ブームが再燃する気配は十分にあった。

 さらにグランピングの登場が市場の活性化に拍車をかけた。グランピングが注目されるようになると、再投資を行なってテント泊以外の宿泊施設を整備し、「グランピング」を謳うキャンプ場が相次いだ。スタンドアローン、既存の宿泊施設や温浴施設などへの併設、そしてキャンプ場への導入が相まって、10年代後半は全国各地でグランピング施設が誕生することになる。
荷物の上げ下ろしからテントの設営・撤収が不要で、食事の下準備や後片付けを従業員が賄うという、「手軽(手ぶら)」で行ける「ラグジュアリー」なグランピングは、キャンプ初心者ばかりでなく、そもそもアウトドアに関心の薄かった層も引き寄せた。SNSによってお洒落なキャンプライフが拡散し、無関心層を関心層に変えたことも市場拡大に寄与する。こうしてアウトドアブームが起こったわけだが、第一次ブームと違い、ファミリー層だけでなく、やがてさまざまなグループ、デュオ(2人組)やソロなど幅広い層を取り込んでいったことに特徴がある。

好調なアウトドア市場に異業種からの参入が相次ぐ

 『レジャー白書』によると、13年からオートキャンプの参加人口は増減を繰り返しているが、登山・キャンプ用品市場は増加傾向が続く。20年にコロナの影響で縮小するものの、翌年には増加に転じてコロナ禍前の19年を上回り、22年は2540億円にまで伸びた。[図表1]
図表2〜5に大手アウトドア用品メーカーである㈱スノーピークと㈱ゴールドウインの売上高と純利益の推移を示した。2019年度を100とすると、22年度のスノーピークの売上高は215%に達し、ゴールドウインも23年度の売上高が約130%となっている。
このブームに乗じ、異業種からアウトドア用品の製造・販売に乗り出す企業も多かった。

 たとえば、家電量販店の㈱ビックカメラがアウトドアショップ「ビックアウトドア」、ホームセンターのコーナン商事㈱がキャンプ専門店「キャンプデポ」、中古売買チェーンのゲオグループが中古アウトドア用品専門店「セカンドストリート」を開いた。また、㈱帝国データバンクの「『100円ショップ』業界調査」によると、100円ショップの市場規模は23年に1兆円を突破したが、それを牽引した商品の1つがアウトドア用品であり、ブームを背景に販売が好調に推移し、初心者などの「エントリーモデル」としての立ち位置を確立したという。

 本特集のテーマであるアウトドアリゾートにおける異業種参入も用品市場以上に活発だった。第1次ブーム時も、日産自動車㈱、㈱ヤナセ、㈱ミズノ、東京ドーム㈱、三井不動産販売㈱(現三井不動産リアルティ㈱)などの企業の参入がみられたが、その数は少数だった。それが今回は多種多様な業種から多くの企業が、アウトドアを舞台としたリゾート施設事業(アウトドアリゾート)に挑んできている。近年の主な参入企業と注目施設を図表6に示した。大手アウトドア用品メーカーも、自社ブランドの「泊まれるショーケース」的な位置付けで施設運営に乗り出している。
そのなかで今年のGWにキャンプ場を開設した東武鉄道㈱のケースをみてみよう。
<続きは本誌にて>

プロジェクトレポート、ケーススタディで取り上げた4施設の概要
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