キーワード検索

サイト内検索を閉じる

ブランド価値向上を目指しウイスキーテーマパークの開発も

サクラオブルワリーアンドディスティラリー

CASESTUDY/ウイスキー&ジン

インバウンドも視野に 情報発信の場に

 広島市廿日市市に本社を置く酒造メーカー、㈱サクラオブルワリーアンドディスティラリーは、1918(大正7)年創業と100年を超える歴史をもつ。もともとは中国醸造の会社名で焼酎の製造からスタート、業務用さらに一般向けに焼酎以外にも幅広い酒類の製造販売を手掛けてきた。

 そうしたなか67年にはドイツの容器メーカーと提携し世界初の紙容器を使用した清酒(「はこざけ一代」)を発売するなど進取の姿勢でも知られる。その後、チューハイなど時代の変化に合わせて柔軟に商品ラインナップを拡大、成長を遂げてきた。その同社が、ウイスキーとジンの製造に取り組みだしたのが2017年。

「実は当社では創業当初からこうした蒸留酒の製造免許をいちはやく取得していた記録もあり、以来長く製造していたのですが、80年代にあったウイスキーブームの終焉とともに、いったん中止に至っていました。そうしたなか、近年になってのジャパニーズウイスキーの世界的な評価の高まりなどもあり、あらためてしっかり取り組もうとプロジェクトチームを社内に立ち上げ、本場イギリスの蒸留所にも出かけ技術や文化を学び、製造再開に踏み切ったのです」と語るのは5代目で現在の代表取締役白井浩一郎氏。

 17年12月、蒸留施設「SAKURAODISTILLERY」を本社敷地内に約3億円を投じ延床面積約223㎡の規模で竣工、19年には二期工事としてグレーンウイスキー蒸留設備の導入やウイスキー貯蔵庫を開設。それに伴い21年には、創業の地「桜尾」への想いを込め現在のサクラオブルワリーアンドディスティラリーに社名変更を行なっている。18年3月に香りづけのレモンやユズから牡蠣の殻まで広島産の原材料にこだわった純国産のジン「SAKURAOGIN」を第1号商品としてリリースしたのを皮切りに、21年からはウイスキーも市場に投入するなど製造を拡大。現在の同社の生産・販売比率はウイスキーが約3割、それに次いでジン、さらにリキュール、料理酒、焼酎、日本酒の順といい、後発のウイスキーやジンが主力を占めてきていることがわかる。

 18年3月からは、こうした製造拠点を開放し見学できるようにした。もともと蒸留所開設以前から工場内を見学可能としていたことに加え、広島へのインバウンドの増加に伴い、国内のみならず海外にも商品の魅力を発信していく狙いがあったという。

 「特に海外の本場の蒸溜所を視察した際に、そのほとんどが見学者を受け入れ、遠方から目的地として訪れるコアなファンも多いのを見て、ウイスキービジネスとは、単によいものをつくるだけではなく、製造過程やその背後にあるストーリーを公開することでブランディングしていくことが重要と知ったことも大きかった」と白井氏。

 一方、その開設当時はわが国でも小模な蒸留所が各地で複数立ち上がった時期にもあたり、工場の公開を通じ、製品の質向上に向けた情報交換などのきっかけにもなるなど、同業者同士でのコミュニティづくりにも有効だったという。また、本社敷地内の既存のショップを「SAKURAODISTILLERYVISITORCENTER」(以下、ビジターセンター)としてリニューアル。各種製品やグッズの販売、試飲などができるほか本格的なバーカウンターも備えた空間とし、直接販売の面でも充実を図っている。実際の来場者は、ウイスキーやジンなどスピリッツに関心の高いコアなファンはもちろん、事前知識がほとんどないような客層も来場、初めて見るその製造過程などに関心を寄せるケースがみられるほか、業界関係者なども含め幅広いという。

 さらに広島の代表的な観光地の1つで、世界遺産の宮島の対岸に位置する立地もあり、ヨーロッパをはじめとしたインバウンドが特にコロナ明けの昨年あたりからは急増しており全体の5割近くにまで及んでいるとのこと。こちらも熱心な目的客とともに、「広島市内への観光客が同地のバーなどでスタッフの方に紹介を受け来られるケースも」(白井氏)。
 見学については予約制で、日曜日以外の週6日開催、1日3回、各約90分で1回当たり10人の定員を設け、丁寧な説明を心掛けている。前述のインバウンドへの対応も重視し、1日3回のうち1回は英語による解説を実施する(日本語での回でもガイダンスルームでの動画やパネル展示には英語の字幕や表記あり)など万全な体制。見学後はビジターセンターでウイスキーやジンのテイスティングもできる。料金は2000円(税込)。
 こうした環境整備により、コロナ禍で見学中止を余儀なくされた期間を除き年を追うごとに集客数は拡大、23年はコロナ前の実績を凌駕しているという。客層としては男性の比率が高いものの、「最近ではママ友のような女性だけのグループ客も多い」(同社管理本部越智亮太朗氏)とのことで、男女問わず20歳代後半など若い層の需要も顕在化している模様。

豊かな自然環境の地にウイスキーパークの開発計画

 そうした手応えを得るなか、同社では現在、次の一手を計画中だ。同じ廿日市市の山間部に位置する吉和(よしわ)の地に製造過程を見学可能なウイスキー蒸留所を中心とした「SAKURAOYOSHIWAWHISKYPARK(サクラオヨシワウイスキーパーク)」(仮称)を25年秋を目指し開設する。総投資額は数十億円。ジャパニーズウイスキーを通して日本のものづくりの精神と地方文化の発信や教育を目的に、国内外のウイスキー愛好家はもとより、新たなウイスキーファンを誘致できるテーマパークとする。
<続きは本誌にて>

月刊レジャー産業資料
2024年3月号

月刊レジャー産業資料 2024年3月号

定価:8,800円(本体8,000円)

年間定期購読料

最新号から

定価:93,500円(本体85,000円)[送料込]

関連リンク

ページトップ