谷川伸一氏[㈱ホワイトハウス(㈱TCL)広報・マーケティング部部長]
[INTERVIEW]
谷川伸一氏[㈱ホワイトハウス(㈱TCL)広報・マーケティング部部長]
地形を活かした起伏に富んだコースや悪路を走行する日常では味わえない
スリル満点のアクティビティとして、アウトドア施設のニューコンテンツ、
あるいはスキー場などのマウンテンリゾートのグリーンシーズン対策の一環として、
バギーパークの導入が相次いでいる。
ここでは米国製バギーの輸入・販売代理を主業としながら、バギーパークの運営やプロデュースなどにも豊富な実績をもつ㈱ホワイトハウス(㈱TCL)の谷川伸一氏にバギーパーク開発・導入のポイントを聞いた。
<前略>
――車両を導入するうえでの注意点などはありますか。
谷川 バギー(ATV・all-terrainvehicle)には大きく分けると「スポーツ型(またがり)」とユーティリティ型(横並び・サイドバイサイド)」の2タイプがあります。またがり型は安価ですが、オートバイと一緒で安全性に不安がある一方、サイドバイサイド型は安全で同乗者の表情が見えやすい点でカップルやファミリーに人気があります。
当社で扱っているポラリス製のバギーはいずれもサイドバイサイド型で、排気量180CCの2人乗り「RZR200」、排気量999CCの3人乗り「RANGERXP1000」です。「RZR200」は車両本体価格約140万円で、コンパクトで燃費がよく、ネスタリゾート神戸で60台ほど導入されているほか、多くのスキー場にも導入されています。
ハイパワー・ハイスペックの「RANGERXP1000」は山や森林のコースも走れるタイプで、車両本体だけで438万円と導入には勇気がいりますが、いまではVISONでの利用者の8割以上がこちらのタイプを選んでいます。
スピードは「RZR200」で最高約50㎞、「RANGERXP1000」で同約60㎞出ますが、施設で運用する場合は安全上リミッターを搭載し、それぞれ20㎞、30㎞くらいに抑えています。また、当社が運営する施設では自動車の運転免許証が必要ですが、スタッフの運転とアテンド付きで迫力ある乗車体験ができるライセンスフリープランも用意しています。バギー施設の開発に当たっては、特に法的な許認可などは必要ありません。ただし、燃料としてガソリンを扱いますので危険物専用の保管庫を用意する施設が必要となり、VISONでは地元の消防署に届け出たうえで近隣のガソリンスタンドから給油にきてもらっています。
――初期投資としては、どのくらいを見込めばよいのでしょうか。
谷川 約4000坪のVISONのバギーパークでは、4000万円ほどでした。加えて、車両として「RZR200」15台、「RANGERXP1000」2台を導入しています。山の造成やコースの谷側に雰囲気のある木柵を設置するなどの費用もかかっています。もっとも、導入施設におけるバギーパークの位置づけや力の入れ方しだいで投資規模は大きく異なります。極端にいえば、スキー場などはもともと自然の起伏がありますので、資材が揃っている施設であれば0円での開設(車両費除く)も可能でしょうし、なかには数億円かける施設もあります。バギーの台数も3〜5台からスタートし、利用者の増加に合わせて徐々に台数や車種をふやしていくような段階的な拡張も可能です。ほかに車という特性上、消耗品の交換や修理・メンテナンス費用もかかります。なお、修理やメンテナンスに関しては当社が全国に拠点をつくってサポートしていく方向で検討しています。
――次に運営面でのポイントについてお聞かせください。
谷川 営業時間は10〜17時の7時間営業が通常ですが、スキー場などナイター設備があれば、日没を過ぎても営業は可能です。アウトドア施設にとって避けて通れないのが天候リスクですが、バギーに関してはほぼ心配不要です。たとえばVISONでは台風や注意報、警報が出ていない限り、大雨や強風、大雪時でも営業しています。そもそも三重県は雨が多い地域で、開業当初は「泥だらけになったらお客様がお怒りになるのではないか」と心配しました。しかし実際には泥だらけになればなるほど喜んでいだけたのです。そればかりか、レインコートや靴カバー、わざと泥だらけにするための白いロゴ入りTシャツといった商材の売上げも伸びて、思わぬ副収入につながりました。
――スキー場などのマウンテンリゾートでは、いわゆるグリーンシーズンにバギー施設として営業できることで通年営業化することも可能です。
谷川 スキー場にバギーパークをお勧めしたい理由はまさにそこにあります。さらに、大型タイプのバギーはタイヤをクローラー(履帯・キャタピラー)に履き替えられることもできますので、たとえばトマムでは冬場、新雪の上を外国人旅行客を乗せて走り、非常に喜ばれていますし、グリーンシーズンにはリフトの代わりにポラリスでVIPをスカイテラスまで送迎したりもしています。ポラリスは全地形対応車なので、どんな傾斜面でもストップやUターンが可能です。冬場のコースメンテナンスや緊急救助用にも使えたりと、レジャー用途以外にも非常に使い勝手に優れているのです。
――料金設定については、どのように考えればよいでしょうか。
谷川 ポラリスというグレードの高い車種を導入し、魅力あるコースを設定しているのであれば、料金設定はあえて強気に、高く設定すべきでしょう。それだけで付加価値の高いものには惜しみなくお金を使うターゲット層を呼び込むことができるからです。1台当たりの売上げ見込み(ハイシーズン)としては、別表に示したとおり、「RZR200」が月116万円、「RANGERXP1000」が同278万円超と試算しています。開設後、数か月で車両代が回収できますし、イニャルコストも短期で回収が可能です。集客施設にとってバギーパークは必須アイテムになっていくはずです。
――バギーパークの導入により、当該施設にはどのようなメリットが生まれるでしょうか。
谷川 バギーパークを併設することで、当初想定していたよりも若い客層、なおかつある程度お金をもった若い層がふえているという声はどの施設からも聞いています。VISONのバギーパークでは「RANGERXP1000」を使用する森林コースの料金が1万2000円、これに車両に取り付けられた4台のカメラが撮影する「動画編集サービス」が別途4500円かかりますが、わずか数十分のアクティビティに2万円をポンと払える若者層が8割を占めているというデータもあります。
一方、ネスタリゾート神戸では、40種類以上あるアクティビティのなかで、行列のでき方が圧倒的に長いのがバギーです。その人気ぶりから、同施設を運営・プロデュースするマーケティング集団・刀さんもコンテンツとしての強さを実感されているようです。バギーのもつ本質的な魅力が昨今の「アドベンチャーツーリズムへの回帰」ブームと合致し、子どもから大人までメンタルを活性化させる効果があることを証明しました。スカッと元気になれることから、お金を払ってでも何度も来たくなる、母体施設の集客力アップにも貢献する魅力的なコンテンツだと確信しています。