栗原弘一[森ビル㈱常務執行役員 商業施設事業部 統括部長]
<前略>
ここまで述べた通り、当社の商業施設は、
(1)商業施設(各店舗)の魅力だけでなく、複合用途(街全体)の魅力を引き上げること
(2)クオリティが高く、かつ、お客様とのエンゲージメントやコミュニティ創造を大切に考える、多様な業種テナントを集積させること
まずこの2点をにぎわいづくりの基礎として考えています。
「虎ノ門ヒルズ」は「ステーションタワー」の完成により、地下鉄新駅(「虎ノ門ヒルズ」駅)、30万㎡超のオフィス、ホテル(370室)、住宅(730戸)、ホール(2000人収容)、イベント・ギャラリースペース(1万㎡)、バスターミナル、2万㎡超の緑地が整備され、そこに170店舗(2・6万㎡)の商業施設を組み込み、就業者、居住者、近隣住民、来訪者など多様な集客を見込んでいます。
商業店舗は、コアとして500〜900坪の大型店舗や新業態を複数導入しました。なかでも「虎ノ門横丁」(26店舗)、「T-MARKET」(飲食、食物販、物販複合、計27店舗)は集客エンジンとして自社でプロデュースしています。いずれも小規模で多ジャンルの集積、オープンファサード、カウンター席中心、共通席設置などにより、店舗とお客様、店舗同士、お客様同士の距離感を近くすることを志向しています。また街全体では、広場などを使ったさまざまなイベントを定期的に開催していきます。
一方、今年11月に街びらきを迎える「麻布台ヒルズ」は、21・5万㎡のオフィス、住宅(1400戸)、ホテル(120室)、インターナショナルスクール(生徒数740人)、デジタルアートミュージアム・ギャラリー(9300㎡)、予防医療センター(3900㎡)、2・4万㎡の緑地が整備され、そこに150店舗(2・3万㎡)の商業施設を組み込み、就業者、居住者、近隣住民、国内外からの来訪者など多様な集客を見込んでいます。
街区の真ん中に6000㎡の広場を配置し、これを囲むようにユニークなデザインの建物を配置、屋上や街路含め街区全体を「緑」で覆い、菜園や果樹園も設置します。こうした都心部では得難い、希少な環境づくりが集客にも寄与すると考えています。
商業施設は「六本木ヒルズ」や「虎ノ門ヒルズ」同様、店舗を街区全体に散在させて構成しています。特徴的なところでは、特別な体験を提供できるオープンエアのテラスをもった物販・飲食店舗を15区画設置するほか、集客エンジンの1つとして、豊富な高品質の食材をワンストップで購入できる「大型フードマーケット」を自社でプロデュースしています。
飲食はチェーン系の店舗ではなく、地域密着の人気個店を中心に誘致し、顧客エンゲージメントの醸成を志向するほか、中央広場などでさまざまなイベントを開催したり、自社アプリを使った顧客属性別の販促などでも集客を図っていきます。
これからの商業施設・SCにおけるにぎわいづくりについて、当社として重視するキーワードをあげるなら、以下の3つとなります。
<続きは本誌にて>