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【CASESTUDY】霞ヶ関キャピタル

アパートメントホテル「FAV HOTEL」で
グループ&長期滞在ニーズを開拓

独自のターゲット・ポジショニングで コロナ禍でも強さを発揮

コロナ禍の3年の間に10ホテルを企画・開発し、そのすべてを黒字化させ、出口となる約135億円規模のファンド組成(プレREITの位置づけ)まで行なった稀有な会社が霞ヶ関キャピタル㈱である。「その課題を、価値へ。」を経営理念に、より良い社会づくりで会社の持続的な成長を図るコンサルティング型デベロッパーだ。
たとえばエネルギー問題に関しては再生可能エネルギー発電施設開発(太陽光・風力)に取り組み、拡大し続けるEC市場に対しては常温の物流施設開発にとどまらず、2030年までにフロンから自然冷媒への転換が急がれる冷凍冷蔵物流施設開発で地球温暖化問題にも貢献。超高齢社会問題には、病院の安心感と自宅の快適さをあわせもつホスピス住宅の開発で医療×介護の最適化を図っている。
開発物件を金融商品化しファンド・アセットマネジメント業務も展開するなど、低リスクで高効率な不動産開発を実現するユニークな会社である。プロジェクトパイプラインを含めAUM約2,000億円まで拡大した同社事業のうち、約500億円規模にまで成長しているホテル事業も、地方創生・観光立国の実現というポリシーに基づくもの。アパートメントホテルの自社ブランド「FAV」シリーズを約20棟手がけている。

需給ギャップが大きかった3人以上のグループ旅行で連泊しながら観光を楽しみたい層をターゲットに、「広く、快適で、スタイリッシュ」な部屋を、客室単位でリーズナブルに提供することをコンセプトにする[図表1、2]。これまでは2LDKマンションなどを活用した民泊がそれらニーズの受け皿となっていたが、鍵が開かないなどのトラブルも頻発していたところに上場企業の信用力と事業スキームで参入。客室面積35m²にデザイナーズバンクベッドを配し、キッチン・バス・トイレ・洗濯乾燥機を配備するのが標準仕様。そのクオリティに対する1人当たりの客室料金は、ビジネスホテル以下の価格破壊レベルにあることもあいまって、インバウンド需要が取り込めないコロナ禍でも、ファミリーや女子旅などをはじめとした大人の修学旅行、スポーツ団体など幅広い需要を集め、高パフォーマンスを実現した。
「2万円の70%稼動でRevPAR1万4,000円。このぐらいをしっかりとっていきたい」(取締役投資運用本部長緒方秀和氏)。

合理化・最適化を極めた客室設計とホテルオペレーション

損益分岐稼動率20%未満という低リスクな収益モデルを確立していることも競争力になっている。たとえば清掃は、民泊のようにチェックアウトベースの外注スタイルをとる。多少割高でも内製化による固定費化を避け、客室が稼動していなくても赤字にならない構造をつくりあげた。
「GOP比率60%で設定している。経費のほとんどは変動費化させている。35m²・50室ぐらいのものが多いが固定費を圧縮しているため20室でも成立する」(緒方氏)。
徹底した省力化オペレーションは多岐にわたる。予約受付から運営管理、会計報告などに至るまで業務プロセスを標準化したうえでITを積極活用する。
ポップやサイン計画の細かなところまでブランディング・プロモーションのFAVスタンダードを構築し一元管理できる体制を構築している。
また宿泊に特化したホテルでありながら1階は飲食店とフロント機能を融合させた設計で人件費圧縮とホスピタリティを両立させている。
「全国どのエリアでも地域のオペレーターと協働しなければならないためスタンダードを設けている。フランチャイズに近い展開が図れるため、ハードもソフトも統一感をもたせられる」(緒方氏)。
主要都市に限らず47都道府県に出店したい構え。観光地は全国にあるうえ、実家には泊まらないファミリーでの帰省需要なども取り込める強みを活かす。
客室が若干小さくならざるを得ない東京では別途「FAV TOKYO」ブランドを設立した。西日暮里(荒川区)、両国(墨田区)でオープンしたホテル客室は20m²強でもFAVのコンセプト通りの空間をつくりあげた。60m²を目安とする、より広く客室面積をとり、ラグジュアリー要素を加味したリゾート立地での新ブランドホテルの開発計画も進めている[図表3]

マンスリーマンションや サービスアパートメントの需要獲得も視野に

さらなる価値の創造にも取り組む。ひとつは、マンスリーマンションやサービスアパートメントがカバーする市場の新たなプラットフォーマーとなることだ。上述したようにF A VHOTELはキッチンやリネン提供もある“住めるホテル”であり、数週間という1か月未満の滞在はもちろん、1か月以上の中長期ステイにも対応可能。重説や判子など契約の煩わしさもないうえ、KPIはRevPARでみているため既存サービスアパートメントなどに対し価格競争力もあるというわけである。
「既存のOTAでロングステイ向け商品を探そうとすると洗濯機がない商品なども多数表示され分かりにくい。ロングステイに特化したOTAを立ち上げ、ユーザーの利便性を高めていきたい」(緒方氏)。
もうひとつはホテルAMテックの推進だという。オペレーター、PBM、AM、FMの間で伝言ゲームが行なわれる結果、投資家には内容や鮮度が薄まった情報しかいかない状況の改善を目指す。予約システムから会計レポートへのつなぎ込みから各種パフォーマンスのダッシュボード化を図るなど、ホテルAMのDX化を目的としたシステム開発で投資家の利益に貢献していく。
出口戦略に関しても、上述のREITにとどまることなく、STO(SecurityTokenOffering)など幅広く検討していく方針である。

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