事業領域の拡大目指し3施設めを佐賀市内に新設
福岡県久留米市に本社を置く最所産業㈱は1952(昭和27)年にガソリンスタンドの1号店を出店以来、ガソリン販売、配送、通信、ガスなどの事業から、クルマの買取・販売などカーライフ関連など事業分野を拡大してきた。その背景には、この先の電気自動車の拡大など環境重視型社会へのシフトに伴い、主力のガソリン販売市場は縮小を余儀なくされるとの予測があった。
そうしたなかで、いまから25年前当時、スーパー銭湯業態が高い成長性をみせていたこと、さらに健康増進により地域貢献を図れるものとして、新規参入に至った。
その第1号が98年4月、久留米市内に開設した「上津天然温泉游心の湯」。そこでの手ごたえを踏まえ、2号施設として2002年、北九州市八幡西区に「本城天然温泉おとぎの杜」(以下おとぎの杜)を開設。
そうしたなかで、第3号施設として今年4月、佐賀県佐賀市にオープンしたのが「源泉掛け流し温泉佐賀の湯処KOMOREBI」(以下こもれび)だ。
2号施設のおとぎの杜との間に、20年ほどの間隔があるが、その理由として、創業者の出身地である佐賀市内での開設を念頭に計画するも、同社のこだわりである天然温泉が湧出すること、さらに一定規模のゆとりある建物が建設可能な敷地面積が確保できることなどの条件を満たす土地を得るのがむずかしく、このタイミングになったという。
「この間、老朽化してきた既存のおとぎの杜のリニューアルを計画していましたが、その実行直前に佐賀市内で当社の条件を満たす適地が見つかったことから、急遽リニューアル計画をいったん中止し、第3号施設の新設に取り掛かりました」と同施設を運営するグループ企業㈱湯どころ取締役の山口竜市氏は振り返る。
コロナ禍により当初計画の見直しへ
「佐賀」駅から車で約10分、JR長崎本線の北側に隣接する鉄工所の跡地約2,800坪を賃借し19年4月に温泉掘削を開始。翌20年3月に地下1,126mから源泉温度45.2℃、毎分625リットルの豊富な湯量の湧出をみて本格的な建設工事へと進む矢先に予想外の事態が。新型コロナウイルスの感染拡大だ。
その影響を受けての設計面の修正、とりわけ飲食需要の激減を踏まえての飲食機能の見直しなど、この間、設計図面の書き換えは4回にも及んだという。社会環境の激変とそれに見合った最適な施設づくりを模索した結果、開業は当初計画より1年ほど伸びた。
「たとえば飲食機能については、先行2施設では宴会需要にも対応する大空間を確保していましたが、今回は規模を当初計画より縮小、さらに温浴施設と同一建物内への併設はとりやめました」。その結果、「温泉棟」と「レストラン棟」を分棟し、両者を渡り廊下でつなぐ設計とするとともに、レストラン棟は外部客の単独利用も可能な配置とした。
また両棟の間にはテラスを設け、BBQにも対応するほか、テイクアウトしたメニューを自由に楽しめるアウトドアスペースとして活用するなど開放感を演出。今後はここでマルシェなどイベントの開催も計画し、地域コミュニティの場としても定着を目指すとしている。
総事業費は約16億円(温泉掘削費用除く)。当初想定した額から、建築費の高騰などが主要因で1.5倍に膨らんだという。
100人収容可能な国内最大級のサウナを訴求
中核となる温浴部分についてみてみよう。開発に際し掲げられたコンセプトは「大人の温浴施設」。そのうえで設計面で重視されたのは「温泉旅館」のイメージだったと山口氏。
特徴的なのは男女ともに浴場に大きな開口部を設け、内湯と露天との境界がないかのような開放感のある空間を実現。さらに「半露天」化した内湯と露天の間には豊かな竹林の庭を設けることで、文字通り温泉旅館での入浴体験を思わせる趣を醸し出している点だ。
浴槽は高濃度炭酸泉、岩風呂、壺湯、腰掛け湯、電気風呂など8種類のバリエーションを揃える。
また3歳以下の子どもは大浴場での入浴を制限することで、大人の温浴施設とのコンセプトを具現化している。その代わり幼児連れの客に対しては時間制の貸切による「家族風呂」を5室用意し、対応する。
こうして天然温泉かけ流しという同市内では希少な資源を最大限にアピールする環境を整える同施設だが、そのうえでさらなる付加価値として差別化に貢献するのが、「サウナ」の存在だ。
男湯に設けるのが「ISOサウナ」。ISOとはフィンランド語で「大きい」の意。その名の通り約40畳(約65㎡)とわが国最大規模の面積を誇る。
<サウナの詳細と成長戦略、実際の集客状況は本誌にて>